低ナトリウム血症(低ナトリウム症)は、体内のナトリウム濃度が異常に低い状態を指します。ナトリウムは体内の水分バランスを維持するために非常に重要で、細胞外液の主要な電解質です。ナトリウム濃度が低下すると、細胞内に水分が過剰に取り込まれることで、細胞が膨張し、特に脳において重大な問題を引き起こす可能性があります。
低ナトリウム血症の原因
低ナトリウム血症の原因はさまざまですが、主に以下のような状況が関与しています。

-
水分過剰摂取:大量の水分を急激に摂取すると、体内のナトリウムが希釈されて低ナトリウム血症を引き起こすことがあります。
-
脱水症状:下痢や嘔吐、発汗などによる体液の喪失がナトリウムと水分のバランスを崩し、低ナトリウム血症を引き起こすことがあります。
-
腎臓の機能低下:腎臓が正常に機能しない場合、ナトリウムの排泄が不適切になり、体内に余分な水分が溜まることがあります。
-
薬剤の影響:特定の薬剤(利尿剤、抗うつ剤など)がナトリウム濃度を低下させることがあります。
-
ホルモンの異常:抗利尿ホルモンの異常分泌(SIADH)や副腎不全などが低ナトリウム血症を引き起こすことがあります。
低ナトリウム血症の症状
低ナトリウム血症は、ナトリウム濃度が軽度に低下している場合は無症状のこともありますが、濃度がさらに低下すると深刻な症状が現れます。症状は主に神経系に関連し、特に脳が影響を受けやすいです。
-
軽度の症状:
-
頭痛:ナトリウムが低下することで脳内の圧力が変動し、頭痛を引き起こすことがあります。
-
吐き気と嘔吐:水分とナトリウムのバランスが崩れると、消化器系に影響を与え、吐き気や嘔吐が現れることがあります。
-
倦怠感:体内の電解質バランスが崩れることで、全身的に倦怠感を感じることがあります。
-
-
中等度の症状:
-
混乱:ナトリウム濃度がさらに低下すると、精神的な混乱や錯乱が見られることがあります。思考がまとまらず、判断力が低下することもあります。
-
筋肉のけいれん:筋肉が異常に収縮することがあり、これが痛みを伴うこともあります。
-
食欲不振:体内のナトリウムが不足すると、食欲が減少し、さらに体調が悪化することがあります。
-
-
重度の症状:
-
けいれん(痙攣):ナトリウムが極端に低くなると、脳の機能が抑制され、痙攣が起こることがあります。これは生命を脅かす可能性がある症状です。
-
昏睡:ナトリウム濃度が非常に低い場合、昏睡状態に陥ることがあります。この状態では、適切な治療が施されなければ命に関わることがあります。
-
呼吸困難:低ナトリウム血症が進行すると、呼吸に困難を感じることがあります。これも重篤な症状の一つです。
-
低ナトリウム血症の診断
低ナトリウム血症が疑われる場合、医師は血液検査を行い、ナトリウムの濃度を測定します。通常、ナトリウムの正常値は135〜145 mEq/Lですが、それが135 mEq/L未満であれば低ナトリウム血症と診断されます。さらに、尿検査やその他の検査を行い、低ナトリウム血症の原因を特定します。
低ナトリウム血症の治療
低ナトリウム血症の治療は、ナトリウムの低下の程度と原因によって異なります。軽度の場合、飲水制限や塩分摂取の増加が推奨されることがあります。しかし、重度の場合は入院が必要となり、静脈内にナトリウムを補充する治療が行われることがあります。
-
水分制限:体内の水分が過剰な場合は、水分摂取を制限し、ナトリウムの濃度を適正に戻します。
-
ナトリウム補充:ナトリウム濃度が極端に低い場合、静脈内でナトリウムを補充します。これは慎重に行う必要があり、急速なナトリウム補充は脳に深刻な影響を与える可能性があります。
-
原因の治療:低ナトリウム血症の原因となっている病気や状態(薬剤、ホルモン異常など)に対しても治療が行われます。
予防と管理
低ナトリウム血症を予防するためには、適切な水分補給とバランスの取れた食事が重要です。特に利尿剤や抗うつ薬を服用している場合は、医師の指導のもとで水分摂取量を管理することが推奨されます。また、体調に異常を感じた場合は早期に医師に相談することが重要です。
結論
低ナトリウム血症は、ナトリウム濃度が低下することにより発生する症状であり、軽度の場合は軽い症状で済むこともありますが、重度の場合は命に関わる可能性があります。早期の診断と適切な治療が重要であり、体調に異常を感じた際には早期に医師の診断を受けることが大切です。