数学

同次と非同次微分方程式の違い

はじめに

数学における「微分方程式」は、変数の変化を記述する重要なツールであり、物理学、工学、生物学などさまざまな分野で活用されています。微分方程式は大きく分けて「線形」と「非線形」に分類され、さらに「同次」または「非同次」という分類が存在します。本記事では、微分方程式における「同次」と「非同次」の違いを完全かつ包括的に解説し、それぞれの特性や解法のアプローチについて詳しく説明します。

1. 同次(Homogeneous)微分方程式とは

同次微分方程式は、方程式のすべての項が関数またはその導関数の多項式であり、定数項が存在しない場合に該当します。一般的に、線形微分方程式の同次形は次のように表されます。

L(y)=0L(y) = 0

ここで、L(y)L(y) は微分演算子であり、yy は求めるべき関数です。同次微分方程式の特徴的な点は、定数項がゼロであるため、解がゼロの場合も含めて成り立つことです。この場合、解空間は線形であり、任意の定数倍が解を構成します。言い換えれば、もし y1y_1y2y_2 が解であれば、任意の定数 c1c_1c2c_2 に対して、c1y1+c2y2c_1y_1 + c_2y_2 も解となります。

同次微分方程式の例

例えば、一次の線形微分方程式:

dydx+y=0\frac{dy}{dx} + y = 0

これは明らかに同次であり、解は次のようになります。

y(x)=Cexy(x) = C e^{-x}

ここで、CC は任意の定数です。このように、同次微分方程式の解は常にゼロを含む解空間に属します。

2. 非同次(Non-Homogeneous)微分方程式とは

非同次微分方程式は、定数項または関数が方程式に追加されている場合に該当します。一般的には、非同次線形微分方程式は次のように表されます。

L(y)=f(x)L(y) = f(x)

ここで、f(x)f(x) は非同次項、またはソース項と呼ばれ、これはゼロでない関数です。非同次微分方程式の特徴は、解がゼロでない項を含むため、同次の解と「特解」を合わせた形で表されることです。

非同次微分方程式の解法

非同次微分方程式の解は、通常、二つの部分に分けて求めます。まず、同次方程式 L(y)=0L(y) = 0 の解を求め、次に非同次項に対応する特解を求めます。最終的な解は、この同次解と特解の和として表されます。

例えば、次の非同次方程式を考えてみましょう。

dydx+y=ex\frac{dy}{dx} + y = e^x

まず、同次方程式である dydx+y=0\frac{dy}{dx} + y = 0 の解を求めます。これの解は前述の通り、yh(x)=Cexy_h(x) = C e^{-x} です。

次に、特解を求めます。ここでは、特解の形を yp(x)=Aexy_p(x) = A e^x と仮定して代入し、AA を求めます。計算すると、A=1A = 1 であることがわかります。したがって、特解は yp(x)=exy_p(x) = e^x です。

最終的な解は、同次解と特解を合わせたものとなり、

y(x)=Cex+exy(x) = C e^{-x} + e^x

となります。

3. 同次と非同次の違い

同次微分方程式と非同次微分方程式の主な違いは、右辺に定数項や関数が存在するかどうかです。具体的には次のような違いがあります。

  1. 右辺の有無

    同次微分方程式では右辺がゼロであり、非同次微分方程式では右辺がゼロでない関数または定数となります。

  2. 解の構造

    同次方程式の解は、通常、ゼロを含む線形結合の形で表され、解空間は線形です。非同次方程式では、同次解に加えて、特解が存在します。

  3. 物理的解釈

    同次方程式はしばしば「自然状態」や「平衡状態」を表し、非同次方程式は外的な影響(外力、外部の源)による変化を表します。

4. 同次と非同次の具体的な応用例

同次微分方程式の応用例

  • 機械的振動:バネとダンパーを使った系では、同次微分方程式が使われます。例えば、バネが力を加えない場合の運動は同次方程式で記述できます。

非同次微分方程式の応用例

  • 外力が作用する機械的系や電気回路:例えば、外部からの力が加わる振動系や、電圧源が関与する回路の挙動は非同次方程式で記述されます。

5. 結論

同次微分方程式と非同次微分方程式は、その構造と解法において大きな違いがあります。同次微分方程式では、解はゼロを含む線形結合で表され、非同次微分方程式では、同次解に特解を加えた形となります。微分方程式を解くためには、同次・非同次の違いを理解し、適切な解法を選択することが重要です。

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