甲状腺(こうじょうせん)とは、喉の下に位置する内分泌腺で、体の代謝や成長、発育に重要な役割を果たしています。甲状腺ホルモンは、体のほとんどの細胞に影響を与え、エネルギーの生成や消費を調節するだけでなく、体温や心拍数、消化などにも関わっています。甲状腺の働きに異常があると、成長や発育に影響を与える可能性があるため、特に子どもにおいては早期の発見と対応が重要です。子どもの甲状腺機能を調べるための一般的な方法が「甲状腺機能検査」であり、この検査を通じて甲状腺の働きに異常がないかを確認することができます。
甲状腺機能検査の目的
甲状腺機能検査は、甲状腺ホルモン(T3、T4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度を測定することによって、甲状腺が正常に機能しているかどうかを確認するために行われます。子どもにおいても、甲状腺の異常が疑われる場合にこの検査が実施されます。

特に以下のような症状が見られる場合、甲状腺機能検査が推奨されることがあります:
-
発育の遅れ
-
過度の疲れやだるさ
-
体重増加または減少
-
脱毛
-
異常な体温感覚(冷え性や発汗過多)
-
便秘や下痢
甲状腺機能検査の種類
-
血液検査:
甲状腺ホルモンのレベルを測定する最も一般的な方法です。血液サンプルを採取して、以下のホルモンのレベルを確認します:-
TSH(甲状腺刺激ホルモン):脳の下垂体から分泌され、甲状腺を刺激してホルモンを分泌させます。通常、TSHのレベルが高い場合は甲状腺が十分にホルモンを分泌していない(低機能)ことを示し、逆に低い場合は甲状腺が過剰にホルモンを分泌している(亢進)ことを示します。
-
T4(チロキシン):甲状腺から分泌される主要なホルモンです。通常は、体内でT4がT3に変換されます。低値の場合、甲状腺機能低下症が疑われます。
-
T3(トリヨードサイロニン):T4よりも活性が高いホルモンです。T3の異常値は甲状腺疾患を示唆します。
-
-
超音波検査:
甲状腺に腫れや結節(こぶ)がないかを確認するために行います。特に触診で異常が見つかった場合や、ホルモンレベルが異常な場合に使用されます。 -
スキャンや画像診断:
甲状腺の大きさや形、機能をより詳細に確認するための方法です。放射線を使った検査(放射線同位元素スキャン)が用いられることもありますが、これは通常、ホルモンレベルの異常が確認された後に行われます。
甲状腺疾患の種類と症状
子どもにおける甲状腺の異常にはいくつかの種類があります。それぞれの疾患に関連する症状を理解することは、早期発見に役立ちます。
-
甲状腺機能低下症(Hypothyroidism):
甲状腺ホルモンの分泌が不足する状態です。子どもでは、成長が遅れる、体重が増加しやすい、便秘、乾燥肌、寒がりなどの症状が見られます。血液検査でTSHの値が高く、T4の値が低い場合、甲状腺機能低下症が疑われます。 -
甲状腺機能亢進症(Hyperthyroidism):
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態です。過剰なホルモンは、体の代謝を異常に速め、子どもにおいては、体重が減少しやすい、興奮しやすい、不安感が強い、発汗過多、心拍数の増加などの症状を引き起こします。血液検査でTSHの値が低く、T3またはT4の値が高い場合、甲状腺機能亢進症が疑われます。 -
甲状腺結節や甲状腺癌:
甲状腺に腫瘍ができることがあります。これが良性であれば問題ありませんが、悪性の可能性もあり、超音波やスキャンで確認することが必要です。子どもでは稀ですが、腫れが目立つ場合や痛みが伴う場合は、注意が必要です。
子どもにおける甲状腺機能検査の重要性
甲状腺疾患は早期に発見することで、適切な治療を受けることができ、発育や成長に与える影響を最小限に抑えることができます。特に、甲状腺機能低下症は治療によりホルモンレベルを正常に保つことが可能であり、甲状腺ホルモンの補充を行うことで、成長や知能の発達に良い影響を与えます。一方、甲状腺機能亢進症も薬物治療で調整することが可能です。
結論
甲状腺機能検査は、子どもの健康にとって非常に重要な検査の一つです。早期に異常を発見し、適切な治療を行うことが、子どもの健やかな成長を支えるために欠かせません。甲状腺に関する疑いがある場合は、速やかに専門の医師に相談し、適切な検査と治療を受けることをお勧めします。