物理学における「単位」とは、物理量の大きさを測定するために用いられる基準のことです。これに対して「単位系」は、複数の単位が整然と組み合わさり、様々な物理量を定量化するための体系を形成するものです。単位には、基準となる基本単位と、それを組み合わせて定義される「派生単位(または導出単位)」があります。この記事では、特に「派生単位」について詳細に説明します。
基本単位と派生単位
まず、基本単位とは、物理量を測るために最も基本的で独立した単位を指します。例えば、長さの単位として「メートル(m)」、質量の単位として「キログラム(kg)」、時間の単位として「秒(s)」などがあります。これに対し、派生単位は、基本単位同士を組み合わせて定義される単位です。

派生単位の特徴は、基本単位を使って新しい物理量を表現するところにあります。たとえば、速度は「メートル毎秒(m/s)」で表され、力は「ニュートン(N)」という単位で表されます。ニュートンは「kg・m/s²」といった基本単位の組み合わせで定義されます。
SI単位系と派生単位
現代の物理学において最も広く使われている単位系は、国際単位系(SI単位系)です。このSI単位系では、7つの基本単位を基に、様々な派生単位が定義されています。以下に、SI単位系における基本単位とそれに対応する派生単位のいくつかを紹介します。
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長さ(メートル:m)
- 速度:メートル毎秒(m/s)
- 加速度:メートル毎秒毎秒(m/s²)
- 面積:平方メートル(m²)
- 体積:立方メートル(m³)
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質量(キログラム:kg)
- 力:ニュートン(N) = kg・m/s²
- エネルギー:ジュール(J) = N・m = kg・m²/s²
- 仕事:ジュール(J)
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時間(秒:s)
- 周波数:ヘルツ(Hz) = 1/s
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電流(アンペア:A)
- 電圧:ボルト(V) = A・Ω
- 電気量:クーロン(C) = A・s
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温度(ケルビン:K)
- 熱容量:ジュール毎ケルビン(J/K)
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物質量(モル:mol)
- モル質量:kg/mol
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光度(カンデラ:cd)
- 照度:ルクス(lx) = cd/m²
よく使われる派生単位の例
以下では、日常的に使われる派生単位のいくつかを具体的に挙げ、どのようにして導出されるのかを説明します。
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速度(m/s)
速度は、物体の移動速度を表す単位で、メートル(長さ)を秒(時間)で割ったものです。したがって、速度は「m/s」で表され、物理的には「長さ/時間」という関係になります。 -
力(N)
ニュートンは力の単位であり、1ニュートンは「1キログラムの物体を1メートル毎秒毎秒の加速度で加速させる力」と定義されています。これを式で表すと、1N = 1kg・m/s²となります。 -
圧力(Pa)
圧力は、面積あたりの力として定義されます。SI単位系では、圧力の単位はパスカル(Pa)であり、これは1N/m²に相当します。つまり、1Pa = 1N/m²です。 -
エネルギー(J)
エネルギーは、物体が持つ仕事をする能力を表す量で、ジュール(J)という単位が使われます。ジュールは、1ニュートンの力で1メートル動かしたときのエネルギー量です。したがって、1J = 1N・mとなります。 -
電力(W)
電力はエネルギーの変換速度を表し、ワット(W)という単位で測定されます。1ワットは1ジュール毎秒に相当します。つまり、1W = 1J/sです。 -
電荷(C)
電気量はクーロン(C)という単位で表され、これは1アンペアの電流が1秒間流れたときの電気量です。したがって、1C = 1A・sです。
他の体系的な派生単位
SI単位系には、他にも多くの派生単位があります。たとえば、仕事やエネルギーを表すジュール(J)や、力を表すニュートン(N)に加えて、温度差を表す「ケルビン(K)」や、物質量を測るための「モル(mol)」などもあります。それぞれが物理的な背景に基づいて定義されており、どれも基本単位から導出されるものです。
また、これらの派生単位は、専門分野や特定の科学技術においても使われることが多く、例えば流体力学、電気工学、熱力学、光学などの分野で重要な役割を果たします。派生単位は、日常生活で目にすることが少ないものもありますが、工学的な応用では極めて重要です。
結論
派生単位は、基本単位から理論的に導き出された単位であり、物理量の測定において欠かせない存在です。現代の科学技術において、これらの単位は標準化されており、国際単位系(SI単位系)は世界中で広く使用されています。派生単位の理解は、物理学を学ぶ上で基本的な部分であり、科学技術の発展に欠かせない基盤を形成しています。