成功スキル

研修評価の6つの方法

研修プログラムの評価は、組織の人材開発において非常に重要な役割を果たします。効果的な研修プログラムは、社員のスキルや知識を向上させ、最終的には企業全体のパフォーマンス向上に繋がります。しかし、どの研修が効果的であったかを測定することは簡単なことではありません。そこで、研修プログラムを評価するためのモデルや手法が数多く存在しています。以下に、代表的な6つの研修プログラム評価のモデルを紹介します。

1. クラークの評価モデル(Kirkpatrick Model)

クラークの評価モデルは、最も広く使われている研修評価モデルの一つです。このモデルは4つのレベルで研修の効果を評価します。

  • レベル1:反応(Reaction)
    研修を受けた参加者の満足度や反応を評価します。例えば、研修が有益であったか、講師のプレゼンテーションが分かりやすかったかなどです。

  • レベル2:学習(Learning)
    研修を通じて参加者がどれだけ新しい知識やスキルを習得したかを測定します。テストや評価シートを使用して、学習の進捗を確認します。

  • レベル3:行動(Behavior)
    研修後に参加者が実際の業務で新たに学んだスキルをどれだけ活用しているかを評価します。これには、業務のパフォーマンスの観察や上司からのフィードバックが含まれます。

  • レベル4:結果(Results)
    研修が最終的に組織に与えた影響、たとえば業績の向上やコスト削減、社員の定着率向上など、具体的な成果を測定します。

このモデルは、研修の効果を段階的に評価できるため、多くの組織で利用されています。

2. ROI(投資対効果)モデル

ROI(Return on Investment)は、研修に対する投資がどれだけ効果的であったかを測定する方法です。このモデルでは、研修にかかったコストと、研修後に得られた成果(利益)を比較して、研修がどれだけの利益を生んだのかを評価します。ROIが高い場合、その研修プログラムは企業にとって価値のある投資であると判断されます。

計算式としては、次のように表現できます:

ROI=利益(研修後のパフォーマンス向上による利益)コスト(研修実施にかかった費用)コスト×100ROI = \frac{利益(研修後のパフォーマンス向上による利益) – コスト(研修実施にかかった費用)}{コスト} \times 100

このモデルは、研修が企業の利益に直結することを示すため、特に経済的な成果が重視される企業で採用されます。

3. ブルームの分類法(Bloom’s Taxonomy)

ブルームの分類法は、学習目標を設定し、学習の効果を評価するために広く使用されています。この分類法は、学習目標を以下の6つのレベルに分けて評価します。

  1. 知識(Knowledge)
    事実や情報を覚え、再現できるか。

  2. 理解(Comprehension)
    学んだ内容を理解し、説明できるか。

  3. 応用(Application)
    学んだ内容を実際の状況に応用できるか。

  4. 分析(Analysis)
    情報を分解し、関係を理解できるか。

  5. 統合(Synthesis)
    新しいアイデアや解決策を生み出せるか。

  6. 評価(Evaluation)
    既存の情報を基に判断し、評価できるか。

ブルームの分類法は、研修の成果を学習者の思考レベルに応じて評価できるため、より詳細なフィードバックが可能になります。

4. チェスモデル(Chevalier Model)

チェスモデルは、研修の効果を評価する際に、研修前後のパフォーマンスの変化に焦点を当てます。このモデルは特に職場での業務にどれだけ役立つかを重視し、研修後に実際に職務に役立つスキルが向上したかを測定します。

  • 前提条件の評価(Pre-Conditions)
    研修が開始される前の参加者の状態を把握します。

  • プロセスの評価(Process Evaluation)
    研修の進行中にどのような活動や学習が行われているかを評価します。

  • 結果の評価(Outcome Evaluation)
    研修後の成果として、業務における実際のパフォーマンスの変化を評価します。

このモデルは実務に密接に関連した評価を行うため、即効性のある結果が求められる場面に有効です。

5. 360度フィードバック

360度フィードバックは、研修プログラム後に受講者自身を中心に、同僚、上司、部下など、さまざまな立場の人々からフィードバックを集める手法です。これにより、研修受講者のスキルや行動の変化を多角的に評価することができます。

  • 利点
    受講者自身では気づきにくい強みや改善点を発見することができ、職場での実際のパフォーマンスを客観的に評価することが可能です。

  • 欠点
    フィードバックが主観的になる可能性があり、特に感情的な対立がある場合には正確な評価が得られないこともあります。

6. ジョブパフォーマンス評価

研修プログラムの評価には、最終的な目標として業務のパフォーマンス向上が必要です。そのため、業務のパフォーマンス評価を基に研修の効果を測定する手法も有効です。これは、特に業務に直接的な影響を与えるスキルや知識を学んだ場合に重要です。

パフォーマンス評価は通常、業績の評価基準に基づいて行われます。例えば、売上の向上、作業効率の改善、顧客満足度の向上などが挙げられます。研修前後でこれらの指標を比較することで、研修の効果を評価します。


結論

研修プログラムの評価は、組織にとって非常に重要なプロセスです。各種評価モデルを組み合わせることで、研修の効果を多角的に把握することが可能となります。それぞれのモデルは異なる視点から研修効果を評価するため、目的に応じて適切な評価方法を選択することが求められます。例えば、ROIモデルは経済的な効果を重視する場合に有効であり、360度フィードバックは組織文化や人間関係の改善に寄与する場合に適しています。最終的に、研修の評価を通じて、次回の研修プログラムの改善点を見つけ、より効果的な人材育成を実現することができます。

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