仕事のトレーニングには、さまざまな方法が存在しますが、その中でも「オン・ザ・ジョブ・トレーニング（OJT）」と「正式なトレーニングプログラム」が一般的です。それぞれにメリットがある一方で、いくつかの欠点も存在します。本記事では、これらのトレーニング方法のデメリットに焦点を当て、特にオン・ザ・ジョブ・トレーニングと、正式なトレーニングプログラムがどのような場合に効果的でないのかについて考察します。また、これらの欠点に対する代替策についても詳述します。
1. オン・ザ・ジョブ・トレーニング（OJT）のデメリット
オン・ザ・ジョブ・トレーニングは、実際の仕事の中で新しいスキルを習得する方法で、経験豊富なスタッフがトレーナーとして指導します。この方法の利点としては、学んだことをすぐに実践できる点や、実務に直結する知識を得られる点が挙げられます。しかし、この方法にも多くのデメリットが存在します。
1.1. トレーナーのスキルや知識の差
OJTの最大の課題の一つは、トレーナーのスキルや知識に大きな差があることです。経験豊富な従業員が指導する場合、トレーナー自身が一貫した教育方針を持っていないことがあり、結果として新しい従業員に不完全な知識やスキルを伝えてしまうことがあります。また、トレーナーの指導方法が一人一人の学習スタイルに合わない場合もあり、学習効率が低下することがあります。
1.2. 時間の制約
OJTは、通常、業務の中で行われるため、既存の従業員がトレーナーとして指導を行うことになります。このため、トレーナーの時間が奪われ、通常の業務に支障をきたすことがあります。特に、業務の繁忙期や緊急対応が求められる状況では、十分な時間をかけてトレーニングを行うことが難しくなります。
1.3. 一貫性の欠如
OJTは個別の指導に依存するため、同じ内容を学んでいるにもかかわらず、学習の進度や理解度にばらつきが生じることがあります。トレーニングの内容や方法が統一されていないと、従業員ごとに得られる知識に差が出てしまい、組織全体でのスキルの均一化が難しくなります。
2. 正式なトレーニングプログラムのデメリット
正式なトレーニングプログラムは、特定のカリキュラムに基づいて行われる教育や研修で、企業外部の専門機関が提供することが多いです。この方法は、体系的かつ計画的な教育が可能であるため、OJTとは異なる利点があります。しかし、正式なトレーニングにもいくつかのデメリットがあります。
2.1. 現場との乖離
正式なトレーニングプログラムでは、実際の仕事の現場を反映したトレーニングが難しい場合があります。特に、業界特有の問題や会社独自のプロセスに対応するためには、現場での学びが重要ですが、教室で行われるトレーニングではそれが不足することがあります。これにより、学んだ内容が現実の業務に適用できない場合があり、従業員が学んだスキルを実際に活かすことが難しくなることがあります。
2.2. コストと時間の負担
正式なトレーニングプログラムは、通常、外部の専門機関や講師を招いて行われます。そのため、トレーニングにかかるコストが高くなることがあります。また、トレーニングプログラムに参加するために、従業員が業務から離れる必要があり、その間に生じる業務の滞りや生産性の低下が懸念されます。さらに、トレーニングが完了するまでに時間がかかり、その間に従業員が即戦力として活躍できないこともあります。
2.3. モチベーションの低下
正式なトレーニングプログラムでは、参加者のモチベーションに差が出ることがあります。特に、トレーニング内容が受講者にとって必ずしも興味深いものではない場合、参加者の関心が薄れ、学習意欲が低下する可能性があります。また、トレーニングが強制的に行われる場合、受講者がその内容に対して消極的になり、結果として学習効果が薄れることがあります。
3. 代替案としてのハイブリッドアプローチ
オン・ザ・ジョブ・トレーニングと正式なトレーニングプログラムにはそれぞれ利点と欠点がありますが、これらを組み合わせたハイブリッドアプローチが有効な場合があります。ハイブリッドアプローチとは、OJTと正式なトレーニングを組み合わせることで、両者のデメリットを補完し合う方法です。
3.1. 個別対応と体系的学習のバランス
OJTでは現場での学びを重視し、正式なトレーニングプログラムでは体系的な知識を提供することができます。これらを適切に組み合わせることで、現場での実践的な経験と、必要な理論的知識の両方を学ぶことができ、従業員のスキルアップを効果的に促進できます。
3.2. フレキシブルなトレーニング時間
ハイブリッドアプローチでは、トレーニングの時間や方法を柔軟に調整することが可能です。例えば、業務が比較的落ち着いている時期に正式なトレーニングを行い、業務が忙しくなるとOJTに切り替えることで、効率的に学習を進めることができます。
3.3. 定期的なフィードバックとサポート
ハイブリッドアプローチでは、OJTで学んだ内容を定期的に確認し、フィードバックを提供することが重要です。これにより、従業員が学んだことを正しく実践できているかをチェックし、必要に応じて補足的な教育を行うことができます。また、正式なトレーニングで得た知識を現場で活かすためのサポートを行うことが、学習効果を高めます。
4. 結論
オン・ザ・ジョブ・トレーニングと正式なトレーニングプログラムには、それぞれに利点とデメリットがあります。OJTは実務に直結した学びが得られる一方で、指導者の質や時間の制約などの問題があります。一方、正式なトレーニングプログラムは体系的な知識を提供しますが、現場との乖離やコスト面の問題が生じます。これらのデメリットを解消するためには、OJTと正式なトレーニングを組み合わせたハイブリッドアプローチが効果的です。企業は、自社の状況に応じて、最適なトレーニング方法を選択し、従業員のスキル向上を図ることが求められます。