視力の低下、または「弱視」は、視覚的な機能が通常のレベルに達していない状態を指します。視力はさまざまな要因によって低下する可能性があり、単純な一時的なものから、慢性的な疾患や病気によるものまでさまざまです。この記事では、視力低下の原因、種類、診断方法、治療法などについて詳しく解説します。
1. 視力低下の原因
視力低下の原因は大きく分けて二つに分類できます。ひとつは、眼の構造や機能に問題がある場合、もうひとつは、脳の視覚処理に関わる障害がある場合です。

1.1 眼の構造や機能に関する問題
視力低下を引き起こす代表的な眼の問題には、以下のようなものがあります。
- 近視(きんし):遠くのものがぼやけて見える状態で、眼球が長くなりすぎて、網膜上で光が正確に焦点を合わせられないことによって起こります。
- 遠視(えんし):近くのものがぼやけて見える状態で、眼球が短すぎて、光が網膜より後ろに焦点を結んでしまうことが原因です。
- 乱視(らんし):角膜や水晶体の形が不規則であるため、光が複数の焦点に分散してしまい、視界がぼやけて見える状態です。
- 老眼(ろうがん):年齢と共に、目の水晶体が硬くなり、近くの物を見ることが難しくなる現象です。
1.2 視覚処理に関する問題
視力が低下する原因の一部は、脳や神経系に関連しています。これには以下のような例があります。
- 視神経萎縮(ししんけい いしゅく):視神経が傷つくことによって、視覚情報が脳に届かなくなる状態です。
- 脳卒中(のうそっちゅう)や頭部外傷:脳が視覚情報を正しく処理できなくなり、視覚に問題が生じることがあります。
- 視覚認知障害:目そのものには異常がないものの、脳が視覚情報を処理する過程に障害がある状態です。
2. 視力低下の種類
視力低下にはいくつかの種類があります。最も一般的なのは「近視」「遠視」「乱視」ですが、それ以外にもさまざまな状態があります。
2.1 近視
近視は、近くの物は見やすいですが、遠くの物がぼやけて見える状態です。これは眼球が長すぎることによって、網膜前方で光が焦点を結ぶために起こります。近視は一般的に成長とともに進行することが多く、20代半ば以降に安定することが多いです。
2.2 遠視
遠視は、遠くの物がはっきり見える一方で、近くの物がぼやけて見える状態です。これは眼球が短すぎることが原因で、光が網膜の後ろで焦点を結ぶためです。遠視は生まれつきのものや加齢に伴うものがあります。
2.3 乱視
乱視は、角膜や水晶体の形が不規則なため、光が複数の焦点に分散してしまうことによって、視界がぼやけて見える状態です。乱視はしばしば近視や遠視と一緒に現れることが多いです。
2.4 老眼
老眼は、加齢によって水晶体が硬化し、近くの物を見にくくなる現象です。これは誰もが加齢と共に経験するもので、通常40歳を過ぎた頃から始まります。近くのものを長時間見ることが難しくなり、眼鏡を使用することで視力を補うことができます。
2.5 白内障
白内障は、目のレンズである水晶体が曇り、視力が低下する病気です。主に加齢によって引き起こされますが、糖尿病や眼の外傷、薬の副作用なども原因となることがあります。進行すると視界がぼやけてきますが、手術によって視力が回復することがあります。
2.6 加齢黄斑変性
加齢黄斑変性は、網膜の中心部にある黄斑と呼ばれる部分が加齢によって障害を受ける疾患です。この病気は、視力の中心部分がぼやけて見えるという症状が現れます。特に高齢者に多い疾患で、視力が徐々に低下していきます。
3. 視力低下の診断
視力低下を診断するためには、いくつかの検査が行われます。主に眼科医によって行われ、視力検査や眼底検査、視野検査、眼圧測定などが含まれます。
3.1 視力検査
視力検査は、最も基本的な検査で、目の前に掲示された文字や図形を見て、どれだけ視力が良いかを測定します。通常、Snellenチャート(スネルチャート)と呼ばれる視力表を使用して、視力を測定します。
3.2 眼底検査
眼底検査は、眼底(網膜や視神経など)を直接観察するための検査です。眼科医は眼底を見て、病気や異常がないかを確認します。これによって、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性などの病気が発見されることがあります。
3.3 視野検査
視野検査は、視野の範囲や視野の欠損をチェックするために行われます。視神経や脳の問題が原因で視力低下が起こっている場合に有効です。
3.4 眼圧測定
眼圧測定は、緑内障の診断に欠かせない検査です。眼圧が高いと、視神経にダメージを与え、視力が低下する可能性があるため、定期的に眼圧を測定することが重要です。
4. 視力低下の治療方法
視力低下の治療方法は、その原因によって異なります。以下に代表的な治療法を挙げます。
4.1 メガネやコンタクトレンズ
視力の低下が近視、遠視、乱視、老眼などの屈折異常によるものであれば、メガネやコンタクトレンズが最も一般的な治療法です。これにより、光が正しく網膜に焦点を合わせることができます。
4.2 手術
屈折異常が強い場合や、白内障のような疾患によって視力が低下している場合、手術が考慮されます。例えば、レーシック手術や白内障の手術があります。白内障手術では、曇った水晶体を取り除き、人工のレンズを挿入することで視力が回復します。
4.3 薬物療法
緑内障や加齢黄斑変性、糖尿病網膜症など、眼の病気が原因で視力低下が起こっている場合は、薬物療法が行われることがあります。緑内障の場合、眼圧を下げるための点眼薬が処方されることが一般的です。
4.4 視覚リハビリテーション
視力低下が進行した場合や視覚障害がある場合、視覚リハビリテーションが必要です。視覚リハビリテーションは、視覚を補うための訓練を行い、日常生活における自立を助けます。特に視野が狭くなるといった問題がある場合、リハビリテーションが効果的です。
5. 視力低下の予防
視力を守るためには、いくつかの予防策を講じることが大切です。
- 定期的な眼科検診:視力低下を早期に発見するためには、定期的に眼科で検診を受けることが重要です。
- 紫外線対策:紫外線は目に悪影響を与えるため、外出時にはサングラスを着用することが推奨されます。
- 目を休める:長時間パソコンやスマートフォンを使用する際は、適度に休憩を取り、目を休めることが必要です。
6. 結論
視力低下は、加齢や生活習慣、眼の疾患などさまざまな要因によって引き起こされます。視力の低下を早期に発見し、適切な治療を受けることが大切です。また、日々の生活の中で目を大切にすることが、視力を守るために非常に重要です。