研究計画書(研究提案書)は、研究の目的や方法を明確にし、研究がどのように進行するのかを示す重要な文書です。これに基づいて、研究者はプロジェクトの全体的な方向性を決定し、評価を受けるための基盤を築きます。良い研究計画は、研究の信頼性と成功に大きな影響を与えるため、その内容は非常に重要です。以下に、完全かつ包括的な研究計画書の構成要素について詳述します。
1. 研究の背景と問題提起
研究計画の最初に位置するのが、研究の背景と問題提起です。ここでは、なぜその研究が重要なのか、どのような社会的・学術的な意義があるのかを説明します。具体的には以下のポイントを盛り込みます。
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研究の動機:研究を行う背景や、その分野における未解決の問題、または改善の余地がある点を明確にします。
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問題提起:研究の対象となる問題を具体的に説明し、その問題が解決されることによって得られる利点を述べます。
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先行研究のレビュー:過去の研究を調査し、どのような知見が得られているかを示します。また、既存の研究で解決されていない点や、研究のギャップを指摘することも重要です。
2. 研究の目的
次に、研究の目的を明確に定義します。この目的は、研究を通じて達成したいことを簡潔に表現する部分であり、研究が目指す具体的な成果や貢献について説明します。
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主目的:研究が解決しようとする核心的な問題や課題を説明します。
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副目的:主目的の補完として、具体的に解明したいサブテーマや、さらに深掘りしたい研究の領域を示します。
3. 研究の方法
研究方法は計画書の中でも最も詳細に記述すべき部分です。ここでは、研究をどのように進めていくか、使用する手法やアプローチについて説明します。
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研究のデザイン:実験研究、調査研究、ケーススタディなど、どのようなアプローチを取るかを述べます。
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データ収集方法:インタビュー、アンケート調査、観察、文献分析など、データをどのように収集するかを具体的に説明します。
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分析方法:収集したデータをどのように分析するか(定量的、定性的分析など)について詳述します。
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研究対象:対象となる集団、サンプルサイズ、選定基準などを明記します。
4. 研究の仮説または研究質問
研究計画書には、研究を通じて解明しようとする仮説や具体的な研究質問を含めることが必要です。仮説は、研究を進める中で検証すべき前提として設定します。
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仮説:研究を進める上で予想される結果や関係性を述べます。これにより、研究の方向性が定まります。
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研究質問:解決を目指す具体的な質問をリストアップします。
5. 研究の重要性と期待される成果
研究がどのように社会や学問に貢献するかを示します。研究の成果がどのように新たな知見を提供するか、または実務的にどのような影響を与えるかについて論じます。
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学術的意義:研究結果が学問分野に与える影響について述べます。新しい理論の提案や、現存する理論の改善、既存の研究の補完が期待される場合にはその点を強調します。
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社会的意義:研究成果が社会、産業、または政策に与える影響について説明します。実務で役立つ知識が得られる場合、その具体的な適用方法を考察します。
6. 研究のスケジュール
研究計画書には、研究の進行状況を示すスケジュールを含めることが重要です。これにより、研究の進行具合を把握し、目標を達成するための時間配分を明確にします。
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段階的な計画:研究の各ステップ(データ収集、分析、論文執筆など)をどの時点で実施するかを具体的に示します。
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期限:各段階の終了予定日や、最終的な提出日などの重要な期日を設定します。
7. 研究の予算
研究に必要な費用を予算として詳細に記述します。必要な資源(研究材料、機器、ソフトウェア、データ収集費用、学会発表費用など)を明確にし、費用対効果の高い方法で研究を進められるようにします。
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費用項目:各費用項目(材料費、人件費、旅費、出版費など)をリスト化します。
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資金源:資金の提供者(政府機関、企業、研究機関など)や、助成金申請の予定について述べます。
8. 研究倫理と問題の取り扱い
研究を進める際には倫理的な配慮が非常に重要です。特に、人を対象にした調査や実験の場合、倫理委員会の承認が求められます。
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倫理的配慮:個人情報の保護やインフォームド・コンセント(事前同意)の取得方法など、研究倫理に関する具体的な対応策を記述します。
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リスク管理:研究活動に伴うリスクを特定し、それに対する対策を示します。
9. 参考文献
研究計画書には、使用した文献や参考にした資料を挙げます。これにより、研究が信頼できる基盤に基づいていることを示すことができます。
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文献リスト:過去の研究や重要な資料を適切な形式で記載します。APAスタイルやMLAスタイルなど、研究分野に応じた書式を使用します。
まとめ
研究計画書は、研究の全体像を明確にし、具体的な進行方法を示すものであり、研究者がどれだけ体系的に研究を進める準備ができているかを示す重要な文書です。研究の目的、方法、予算、スケジュール、倫理的な配慮をきちんと盛り込むことで、より信頼性の高い研究計画を作成することができます。
