「エクストリームポジティビティ(過度のポジティブ思考)」という言葉は、近年多くの心理学者や社会学者、さらには一般の人々の間で注目されるようになりました。表面的には、常にポジティブな態度を取ることが推奨されている社会的な風潮に見えます。しかし、その「過度のポジティブ思考」が一見良いことに見えても、実際には人々にとって有害である可能性があることが明らかになっています。この記事では、この現象について詳しく掘り下げ、その潜在的な害を解説していきます。
過度のポジティブ思考とは?
過度のポジティブ思考、または「毒のようなポジティビティ」とも呼ばれるこの概念は、感情や現実の認識を無視して、無理にポジティブでいなければならないという強い圧力がかかる状態を指します。これは「ポジティブでいなければならない」「嫌なことを考えてはいけない」「ポジティブなエネルギーだけを受け入れなければならない」という圧迫感から生じます。もちろん、ポジティブな考え方や態度は重要ですが、それが過度になると、かえって精神的、感情的な負担を生むことになるのです。
1. 感情の抑圧とその影響
過度にポジティブであることは、否定的な感情を抑圧する原因となります。人間は、喜びだけでなく、怒り、悲しみ、不安など、さまざまな感情を経験する生き物です。しかし、社会が「いつもポジティブでいること」を美徳として推奨することで、私たちはそのようなネガティブな感情を感じることに罪悪感を抱くことがあります。その結果、これらの感情を無視し、無理にポジティブな感情を作り出そうとします。このような感情の抑圧は、精神的な健康に悪影響を与え、ストレスや不安を引き起こす原因となります。
感情の抑圧が続くと、心の中でその感情が爆発することがあります。例えば、長期間にわたって自分の悲しみや不安を抑えていると、突然の出来事に過剰に反応してしまったり、感情が爆発してしまうことがあります。これが「感情のボトルネック現象」であり、ポジティブ思考が過剰な場合に特に発生しやすくなります。
2. 他者との共感の欠如
過度のポジティブ思考が強調される社会では、他者の苦しみや困難に対して共感することが難しくなる場合があります。例えば、誰かが悲しんでいるときに、「そんなこと気にしないで、もっとポジティブに考えよう!」と励ますことがよくあります。しかし、このような反応は、相手の感情に対する無理解や無視を示している場合があります。実際に、その人が抱えている感情に共感し、理解を示すことが、より効果的なサポートになります。
過度のポジティブ思考が強調される環境では、他者の困難を受け入れることが軽視され、表面的な楽観主義が支配的になります。この結果、共感や深い理解の欠如が生じ、社会的なつながりが薄れることにもつながります。
3. 自己責任のプレッシャー
ポジティブ思考が過剰に強調されると、自己責任を過度に意識させられることがあります。「あなたがポジティブに考えれば、すべてうまくいく」「ポジティブな思考が現実を変える」というメッセージが強調される一方で、もしうまくいかないことがあった場合、それを自分の考え方のせいだと感じるようになることがあります。
このようなプレッシャーは、自己責任の感覚を過度に強調する結果を生む可能性があります。たとえば、病気になったり、失業したり、恋愛がうまくいかなかったりした場合、「もっとポジティブに考えれば、うまくいったはずだ」と感じることがあるでしょう。このような自己責任のプレッシャーは、精神的な健康に悪影響を与え、自己肯定感を低くする原因となります。
4. ポジティブ思考が現実逃避になる
過度のポジティブ思考が長期的に続くと、それが現実逃避の手段となることがあります。問題や課題に直面したときに、問題を解決しようとする代わりに、「すべてがうまくいく」という幻想に逃げ込んでしまうことがあります。これは、現実を直視せず、問題に対して積極的に向き合うことを避ける姿勢に繋がり、最終的には問題が悪化する結果を招くこともあります。
まとめ
過度のポジティブ思考には、感情の抑圧や他者との共感の欠如、自己責任のプレッシャー、現実逃避といった弊害があることが分かります。ポジティブな思考自体は大切ですが、それが過度になると、人々の精神的健康に害を及ぼす可能性があるのです。次回の記事では、過度のポジティブ思考から脱却し、健全なポジティブ思考を育むための方法について解説していきます。

