てんかんの完全ガイド

病気としての「てんかん」の完全かつ包括的な解説

てんかん（epilepsy）は、神経系における慢性的な疾患であり、反復的な発作を特徴としています。発作は、脳内の神経細胞が異常に電気的に活性化されることにより引き起こされます。発作は多様であり、単に意識を失うだけでなく、体の一部の筋肉が急に動き出すことから、全身にわたるけいれんを伴うものまでさまざまです。てんかんは世界中で多くの人々に影響を与えており、その発症率は全体で約1%と言われています。これを踏まえ、てんかんの定義、原因、症状、診断方法、治療法について詳細に解説します。

1. てんかんの定義

てんかんは、脳内の異常な電気活動によって引き起こされる反復的な発作が特徴の神経疾患です。発作は、脳内の神経細胞が予期せぬタイミングで異常に電気的に興奮することによって引き起こされ、その結果として意識の喪失、けいれん、あるいはその他の異常な身体的・精神的症状が現れます。発作が繰り返し発生することで、「てんかん」と診断されます。したがって、一度の発作だけではてんかんとは診断されません。

2. てんかんの原因

てんかんの原因は多岐にわたりますが、いくつかの主な要因に分けることができます。

2.1. 先天的要因

遺伝的な要因は、てんかんの原因として重要な役割を果たします。家族にてんかんを患っている人がいる場合、発症リスクが高くなることが知られています。特に、特定の遺伝子の変異がてんかんの発症に関与していることが研究により示されています。

2.2. 後天的要因

外的な要因によっててんかんが引き起こされることもあります。これには、脳に対する外傷や脳卒中、脳腫瘍、感染症（例えば髄膜炎）などが含まれます。また、アルコールや薬物の乱用が発作を引き起こすこともあります。

2.3. 不明な原因

場合によっては、てんかんの原因が特定できないことがあります。このような場合は、「特発性てんかん」として分類され、遺伝的または環境的な要因が複雑に絡み合っている可能性があります。

3. てんかんの症状

てんかんの症状は発作の種類や発作が起きる脳の部分に依存します。主な発作のタイプは以下の通りです。

3.1. 部分発作

部分発作は、脳の特定の部位で異常な電気活動が発生することから始まります。症状はその部位に応じて異なります。たとえば、手や足の一部がけいれんしたり、視覚や聴覚に異常が生じることがあります。

3.2. 全般発作

全般発作は、脳全体にわたる異常な電気活動が発生することから始まります。最も典型的な全般発作は、全身の筋肉がけいれんする「大発作」です。この発作では、突然意識を失い、全身のけいれんが起こることが一般的です。

3.3. 無意識発作

無意識発作（小発作）は、発作中に意識を失うことなく、短時間の意識のぼんやりとした状態や、軽い筋肉のけいれん、目の動きの異常などが見られる発作です。このタイプの発作は、特に子供に多く見られます。

4. てんかんの診断方法

てんかんを診断するためには、以下の方法が用いられます。

4.1. 症状の観察

てんかんの発作は、その症状や発作の頻度から診断を行う第一歩となります。医師は患者の発作の詳細を聞き取り、発作がどのように起こるか、どの部分が影響を受けるかなどを詳しく確認します。

4.2. 脳波（EEG）検査

脳波（EEG）は、脳内の電気的活動を測定する検査で、てんかんの診断に最も一般的に使用されます。てんかんの患者では、脳波に異常な電気的活動が見られることがあります。

4.3. 画像診断

CTスキャンやMRIスキャンなどの画像診断により、脳の構造的な異常（例えば、脳腫瘍や脳卒中による損傷）を確認することができます。これにより、後天的な原因がある場合にそれを特定することができます。

5. てんかんの治療法

てんかんの治療は、主に発作の予防と発作の発生頻度の低減を目指します。治療方法は、患者の年齢や発作の種類、原因に基づいて異なります。

5.1. 薬物治療

てんかんの治療には、抗てんかん薬（AEDs）が広く使用されます。これらの薬は、脳内の神経伝達物質の働きを調節することで、発作を予防します。最もよく使用される薬には、バルプロ酸、フェニトイン、カルバマゼピンなどがあります。

5.2. 手術治療

薬物療法で発作を制御できない場合、手術が考慮されることがあります。手術では、発作が起こる原因となる脳の一部を切除することがあります。また、脳深部刺激療法（DBS）など、脳の特定の部位に電気的刺激を与える方法も試みられることがあります。

5.3. 生活習慣の改善

てんかん患者には、規則正しい生活を送り、十分な睡眠をとることが推奨されます。また、アルコールやストレスなど、発作を引き起こす可能性のある要因を避けることも大切です。

6. てんかんと社会

てんかん患者は、その症状から社会的な偏見に直面することがあります。発作が起こると、周囲の人々が恐怖を感じたり、誤解を生むことがあります。そのため、てんかんに対する理解を深め、患者が社会で適切にサポートされることが重要です。教育、就労、日常生活において、適切なサポートがあれば、てんかん患者は他の人々と同じように充実した生活を送ることができます。

7. まとめ

てんかんは、神経系における異常な電気的活動が原因で引き起こされる慢性的な疾患であり、発作を繰り返し経験することが特徴です。原因は多岐にわたり、遺伝的な要因や外的な要因、または特発性のものがあります。治療には薬物療法が中心となりますが、手術や生活習慣の改善も重要な要素となります。てんかんに対する理解と支援が進むことで、患者はより良い生活を送ることができるでしょう。