イスラム暦は、太陰暦に基づいており、1年は約354日です。これは、太陽暦のグレゴリオ暦よりも約11日短い周期です。イスラム暦では、月の満ち欠けに基づいて日付が決まり、年間の月数は12ヶ月で構成されています。これらの月は、アラビアの伝統的な名前を持っており、それぞれの月には独自の特徴や歴史的背景があります。以下では、イスラム暦の各月とその特徴について詳しく説明します。
1. ムハッラム月（Muharram）
ムハッラムはイスラム暦の最初の月であり、「聖なる月」として広く認識されています。この月は、戦争や暴力が避けられるべき月とされており、特にシャーア・ムハッラムの10日目は「アシュラーの日」として重要視されています。この日は、ムーサー（モーセ）とその民がエジプトのファラオから脱出した出来事を記念しています。
2. サファール月（Safar）
サファールはムハッラムの次に来る月で、一般的には不吉な月と考えられることが多いです。歴史的には、疫病や不幸が広がる時期とされていたため、この月には特別な儀式や祈りが行われることもあります。
3. ラビア・アル＝アウワル月（Rabi’ al-Awwal）
ラビア・アル＝アウワルは、イスラム教の預言者ムハンマドの誕生月として非常に重要です。ムハンマドの誕生日は、特に「マウリッド・アン＝ナビー」という祝日として広く祝われ、彼の生涯と教えを記念するための集会やイベントが行われます。
4. ラビア・アル＝サニア月（Rabi’ al-Thani）
ラビア・アル＝サニアはラビア・アル＝アウワルの次の月であり、特に宗教的な行事は少ないですが、ムハンマドの教えや生涯に対する敬意を示す月とされています。
5. ジュマーダ・アル＝ウラ月（Jumada al-Awwal）
この月は、特に宗教的な行事や儀式が少ない月とされ、一般的には日常の生活が重視されます。ジュマーダとは「凍結」を意味し、この月が冬の時期に当たるため、寒さや乾燥に関連する名前が付けられました。
6. ジュマーダ・アル＝サニア月（Jumada al-Thani）
ジュマーダ・アル＝サニアはジュマーダ・アル＝ウラの次の月であり、この月にも特別な宗教行事は少ないですが、ムスリムたちは神に対する信仰を深めるために祈りを捧げる時期として過ごします。
7. ラジャブ月（Rajab）
ラジャブはイスラム暦の中で「聖なる月」として重要です。この月には、預言者ムハンマドが天に昇った「ミラージュ」の出来事を記念するための祈りや儀式が行われることがあります。ラジャブ月の27日は「イスラ・ワル・ミラージュ」として祝われます。
8. シャアバーン月（Sha’ban）
シャアバーンはラジャブの次に来る月で、ムスリムたちは断食の準備を始める月とされています。また、この月の15日には「シャアバーンの夜」があり、特別な祈りが捧げられることが多いです。この夜は、神の慈悲と許しを求める重要な夜として認識されています。
9. ラマダン月（Ramadan）
ラマダンは、ムスリムにとって最も重要な月の一つです。この月は断食月として知られ、日の出から日没まで食事や飲み物を断つことが求められます。断食を通じて、神に対する信仰を深め、自己制御を養うことが目指されます。また、この月にはクルアーンが啓示されたとされ、そのためにクルアーンを夜間に朗読することも行われます。
10. シャウワール月（Shawwal）
ラマダンの翌月、シャウワールは断食明けの月です。この月には、ラマダンの断食を終えた後、6日間の追加の断食を行うことが推奨されています。この「シャウワールの6日間の断食」は、ラマダンの断食の報酬をより多く得るための方法とされています。
11. ズルカアダ月（Dhul-Qi’dah）
ズルカアダは、ムスリムたちが戦争や戦闘を避けるべき月とされています。この月は平和の月として位置づけられ、通常、移動や戦争の活動は避けられます。この月の最後の数日間には、ハッジ（聖地メッカへの巡礼）に関連する準備が始まります。
12. ズルヒッジャ月（Dhul-Hijjah）
ズルヒッジャは、イスラム暦の最後の月であり、ハッジの月として特に重要です。ズルヒッジャの10日目には、イード・アル＝アドハー（犠牲祭）が祝われ、ムスリムたちは神に感謝の意を示すために動物を犠牲にすることが一般的です。また、ズルヒッジャの最初の10日間は非常に聖なる期間とされ、特別な祈りが捧げられます。
結論
イスラム暦は、ムスリムにとって重要な宗教的意義を持つ12ヶ月のサイクルで構成されています。これらの月は、神に対する信仰を深めるための特別な機会を提供し、ムスリムの生活において重要な役割を果たします。それぞれの月には独自の特徴があり、特別な儀式や慣習が行われることが多いです。