外国の都市

イタリアの美しい田舎町

イタリアはその華やかな都市文化で知られている一方で、数多くの美しい田舎町や村々が国中に点在しており、これらの「イタリアの田園都市」はその地方色豊かな魅力と歴史的価値で訪れる者を魅了してやまない。この記事では、イタリア各地に点在する代表的かつ印象的な田舎町の名前を網羅的に紹介し、それぞれの地理的背景、文化的価値、歴史的意義を詳しく掘り下げていく。


トスカーナ州の田舎町

モンタルチーノ(Montalcino)

モンタルチーノはトスカーナ州南部に位置する丘の上の町で、高品質な赤ワイン「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」で国際的に知られている。周囲はオリーブ畑やブドウ畑に囲まれており、11世紀に建設された要塞が町の中心にそびえ立つ。

ピエンツァ(Pienza)

ルネサンス時代の理想都市として知られるピエンツァは、15世紀に教皇ピウス2世によって再設計された。小さな町ながら、ユネスコ世界遺産にも登録されており、田園風景との調和が芸術的とさえ評価される。

サン・ジミニャーノ(San Gimignano)

「中世のマンハッタン」とも呼ばれるサン・ジミニャーノは、数多くの塔が町中に立ち並ぶ景観が特徴。ゴシック建築と古代ローマ時代の道が残るこの町もまた、ユネスコの世界遺産に登録されている。


ピエモンテ州の田舎町

ネイヴェ(Neive)

ピエモンテ州クーネオ県にあるネイヴェは、「イタリアで最も美しい村」の一つに選ばれており、バルバレスコというワインで有名。石造りの家と狭い路地が特徴で、歴史的な教会や塔も多く残る。

バローロ(Barolo)

世界的に有名な赤ワイン「バローロ」の生産地として知られるこの小さな村は、古城とワイン博物館を有しており、ワイン愛好者には必訪の地である。


ウンブリア州の田舎町

スポレート(Spoleto)

ウンブリア州南部に位置するスポレートは、古代ローマ時代から続く長い歴史を持つ。丘の上に築かれたこの町にはローマ劇場、中世の要塞「ロッカ・アルボルノツィアーナ」などがある。

アッシジ(Assisi)

聖フランチェスコの生誕地であるアッシジは、宗教的な聖地であると同時に、ウンブリアの田園風景を一望できるロケーションが魅力。フランチェスコ大聖堂は世界遺産にも指定されている。


プーリア州の田舎町

アルベロベッロ(Alberobello)

アルベロベッロは、その独特な円錐形屋根の「トゥルッリ」と呼ばれる建物群で世界的に有名。白い壁と灰色の石屋根が織りなす景観は非常に印象的で、ユネスコ世界遺産にも登録されている。

チステルニーノ(Cisternino)

プーリア州にあるこの町は、石畳の道と白い家々が連なる美しい町並みが特徴。伝統的な食文化も豊かで、地元の肉料理「ボンベッテ」が特に人気である。


サルデーニャ州の田舎町

バーニェル(Bagnèuli)

内陸部に位置するバーニェルは、古代のヌラーゲ遺跡に近く、先史時代の遺構が今も残る神秘的な村。素朴な村の風景は、時間が止まったかのような静けさを感じさせる。

オリエナ(Orgosolo)

オリエナはサルデーニャ島中央部の村で、政治的・歴史的テーマを描いた壁画「ムラーレス」が町中に散在していることで知られる。独自の文化と伝統が強く残っている。


シチリア州の田舎町

エリチェ(Erice)

標高750メートルの山頂にあるエリチェは、アラブ・ノルマン様式の建築や石畳の道が特徴。海を望むパノラマビューが美しく、古代ギリシア時代の遺跡も点在する。

カステルブオーノ(Castelbuono)

パレルモ県の内陸部に位置するこの村は、中世の城「ヴェントゥミリア城」がランドマーク。食文化、特に地元のドルチェ「マナのパン」などが観光客に人気。


ヴェネト州の田舎町

アルケ(Arquà Petrarca)

イタリアの詩人ペトラルカが晩年を過ごしたことで有名なこの村は、中世の町並みと自然が融合した美しさを保っている。ペトラルカの墓もこの村にあり、文学ファンには聖地とも言える場所。

アソロ(Asolo)

「千の水平線の町」とも称されるアソロは、山と丘に囲まれた風光明媚な村。女優エレオノーラ・ドゥーゼが晩年を過ごしたことでも知られている。


アブルッツォ州の田舎町

スカンノ(Scanno)

スカンノは、標高の高い山岳地帯に位置する美しい村で、伝統衣装を今なお身にまとう村人の姿が有名。エルネスト・ヘミングウェイが訪れたことでも知られている。

ペスカセローリ(Pescasseroli)

アブルッツォ国立公園内にあるこの町は、自然保護と生態系観察の拠点。多くの野生動物が生息し、エコツーリズムの中心地でもある。


カラブリア州の田舎町

チヴィタ(Civita)

アルバニア系イタリア人(アルベレシュ)によって築かれたチヴィタは、独特の文化と方言を保持することで知られる。渓谷と石橋が印象的な風景を作り出している。

バドラ(Badolato)

この村は一時期過疎化が進んでいたが、移住プロジェクトにより再活性化。古代の町並みとアドリア海を望む風景が多くの人々を引きつける。


表:代表的なイタリアの田舎町一覧(州別)

州名 田舎町名 特徴
トスカーナ州 モンタルチーノ、ピエンツァなど ワイン、ルネサンス建築、世界遺産
ピエモンテ州 ネイヴェ、バローロ 赤ワインの名産地、城と塔
ウンブリア州 アッシジ、スポレート 宗教的聖地、中世の要塞
プーリア州 アルベロベッロ、チステルニーノ トゥルッリ建築、白い家
サルデーニャ州 オリエナ、バーニェル 壁画、ヌラーゲ遺跡
シチリア州 エリチェ、カステルブオーノ 中世の城、ギリシア・ノルマン建築
ヴェネト州 アルケ、アソロ 文学的遺産、自然景観
アブルッツォ州 スカンノ、ペスカセローリ 高地の村、自然保護区
カラブリア州 チヴィタ、バドラ アルベレシュ文化、過疎からの復興

イタリアの田舎町は、都市部にはない歴史的・文化的奥深さを宿している。建築、風景、料理、言語、伝統、宗教、自然、それぞれが微細に異なる地域性を持ち、それゆえにイタリアという国家の多様性を象徴している。観光地としても、ただの景勝地ではなく、イタリアの精神と伝統を体感できる場所である。

現代社会において地方の過疎化や観光地の商業化が進む中、これらの田舎町が文化遺産としていかに保存され、未来へと引き継がれていくのかが重要な課題である。イタリアの田舎町を知ることは、イタリアそのものの本質を理解することに繋がる。こうした町々は、ただの「観光地」ではなく、真の「文化財」として人類全体の遺産であると言える。

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