インスリンは、血糖値を調節するために必要不可欠なホルモンです。膵臓から分泌され、細胞に糖を取り込ませ、血糖値を正常に保つ役割を果たします。インスリンの欠乏や抵抗性が原因で、糖尿病の発症が引き起こされます。糖尿病患者の多くはインスリン治療が必要ですが、インスリンにはさまざまな種類があり、患者の状態に応じて選ばれます。ここでは、インスリンの種類について詳細に説明します。
1. インスリンの基本的な分類
インスリンは、その作用の時間によっていくつかの種類に分類されます。主に以下の5つのカテゴリーに分けられます。

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超速効型インスリン(超短時間型インスリン)
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速効型インスリン
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中間型インスリン
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持続型インスリン
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混合型インスリン
それぞれのインスリンの特徴や使用方法について詳しく見ていきましょう。
2. 超速効型インスリン(超短時間型インスリン)
超速効型インスリンは、食事の前に使用されることが一般的です。注射後、速やかに作用を開始し、血糖値を素早く下げる効果があります。このインスリンは、通常、食後の血糖値の上昇を抑えるために使われます。
特徴:
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作用開始時間:15分以内
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ピーク効果:30分から1時間
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作用時間:3〜5時間
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代表的な製品:ノボラピッド(NovoRapid)、ヒューマログ(Humalog)
使用方法:
食事の直前または直後に注射します。素早く作用するため、食事の摂取とタイミングを合わせることが重要です。
3. 速効型インスリン
速効型インスリンは、超速効型インスリンと似ていますが、少し遅れて作用を開始します。食事と関連した血糖値の調整に使用されます。
特徴:
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作用開始時間:30分以内
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ピーク効果:2〜4時間
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作用時間:5〜8時間
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代表的な製品:ヒューマリンR(Humulin R)
使用方法:
食事の30分前に注射します。速効型インスリンも、血糖値の上昇を速やかに抑えるため、食後の血糖管理に役立ちます。
4. 中間型インスリン
中間型インスリンは、比較的長い時間作用を持ち、基礎的な血糖コントロールに使用されます。主に1日2回の注射で使用されることが一般的です。
特徴:
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作用開始時間:1〜2時間
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ピーク効果:4〜12時間
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作用時間:12〜18時間
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代表的な製品:ヒューマリンN(Humulin N)
使用方法:
通常、朝と晩に1回ずつ注射します。食事に関係なく、長時間にわたって血糖値を安定させる効果があります。
5. 持続型インスリン(長時間作用型インスリン)
持続型インスリンは、1日1回の注射で24時間以上にわたって効果が持続します。これにより、基礎的な血糖管理が可能になり、食事のタイミングに関係なく血糖値の安定が図れます。
特徴:
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作用開始時間:1〜2時間
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ピーク効果:ほぼなし
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作用時間:24時間以上
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代表的な製品:ランタス(Lantus)、トレシーバ(Tresiba)
使用方法:
通常、1日1回就寝前に注射します。ピーク効果がほとんどないため、安定した血糖管理が可能です。
6. 混合型インスリン
混合型インスリンは、速効型または超速効型インスリンと中間型インスリンがあらかじめ混合されたものです。これにより、食後の血糖上昇を抑える効果と、基礎的な血糖管理を一度に行うことができます。
特徴:
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作用開始時間:30分以内
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ピーク効果:2〜8時間
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作用時間:12〜24時間
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代表的な製品:ヒューマリン70/30(Humulin 70/30)
使用方法:
通常、1日2回または3回食事の前に注射します。速効型と中間型のバランスを取ることで、食事と基礎インスリンの両方をカバーします。
7. インスリンポンプ
インスリンポンプは、持続的にインスリンを皮下に注入する装置です。ポンプは、持続型インスリンと超速効型インスリンを組み合わせて使用することが一般的です。この方法により、インスリンの注入タイミングを柔軟に調整でき、より細かい血糖コントロールが可能となります。
特徴:
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持続型と速効型インスリンの併用
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インスリンの注入が自動化されている
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血糖値に応じた調整が可能
使用方法:
インスリンポンプを常に装着し、血糖値の変動に応じて自動的にインスリンを注入します。ユーザーはポンプの設定を調整し、より精密な管理ができます。
8. インスリン治療の選択基準
インスリン治療の選択には、個々の患者の状態に応じた最適な方法を選ぶことが重要です。患者の食事パターン、生活習慣、運動量、血糖コントロールの目標などを考慮して、インスリンの種類や投与方法を決定します。例えば、1型糖尿病では、速効型インスリンと持続型インスリンの併用が一般的です。一方、2型糖尿病では、食事や運動で血糖コントロールができない場合にインスリン治療が導入されます。
9. 結論
インスリンは糖尿病の治療において欠かせない役割を果たします。インスリンの種類は多岐にわたり、患者のニーズに応じて選択されます。それぞれのインスリンには特有の作用時間やピーク効果があるため、患者の生活スタイルや治療計画に合わせて使い分けることが重要です。インスリン治療は医師の指導のもとで行うべきであり、自己管理をしっかりと行うことで、糖尿病の合併症を予防し、健康的な生活を維持することができます。