イーサネット物理層とIEEE規格

イーサネット（Ethernet）技術は、コンピュータネットワークにおける標準的な通信プロトコルであり、データリンク層（OSI参照モデルの第2層）および物理層（第1層）における通信を提供します。イーサネットは、最初に1970年代初頭に開発され、その後、急速に普及し、現在ではほぼすべてのローカルエリアネットワーク（LAN）で使用されています。イーサネット技術の中でも特に重要なのは、「物理層（Physical Layer）」と呼ばれる部分で、これがネットワークの効率や信頼性を大きく左右します。この記事では、イーサネットにおける「物理層」とその技術的基盤に加え、IEEE（Institute of Electrical and Electronics Engineers）が定めた規格について詳述します。

イーサネットの物理層とは？

イーサネットの物理層は、データの物理的な伝送に関する規則を定義します。これには、データを転送するために使用する媒体、信号、コネクタ、ケーブルの種類、およびそれらがどのように相互作用するかが含まれます。イーサネットの物理層は、通常、以下の要素で構成されます：

1. メディア（媒体）：

   • ツイストペアケーブル（Twisted Pair Cable）：このタイプのケーブルは、電気的干渉を避けるために、2本のワイヤを螺旋状にツイスト（ねじり合わせ）しています。一般的にCat5e（Category 5e）やCat6（Category 6）などが使用されます。
   • 光ファイバーケーブル（Fiber Optic Cable）：データが光信号として転送されるため、非常に高い転送速度と長距離伝送を実現できます。高速のバックボーンネットワークに使用されます。
   • 同軸ケーブル（Coaxial Cable）：一部の古いイーサネット規格（10BASE2や10BASE5）では使用されていましたが、現在ではあまり一般的ではありません。

2. 信号と変調方式（Signal and Modulation）：
   イーサネットの物理層では、データは電気信号や光信号として伝送されます。この信号の伝送方法には、信号の変調や符号化が関わっており、例えば、電気信号をどのように「ビット」に変換するか、どのようにノイズの影響を最小限に抑えるかなどが規定されています。

3. データ転送速度（Data Transfer Rates）：
   物理層の規格は、転送速度も規定しています。最も初期のイーサネット（10BASE-T）は10Mbps（メガビット毎秒）の速度を提供しましたが、現在では1Gbps（ギガビット毎秒）やそれ以上の速度が一般的です。最新の規格では、10Gbpsや100Gbps以上の速度をサポートするものもあります。

IEEE規格とイーサネット

イーサネット技術は、IEEE（Institute of Electrical and Electronics Engineers）という団体によって策定された標準に基づいています。IEEE 802シリーズは、ローカルエリアネットワーク（LAN）に関する標準を定めており、イーサネットに関連する規格は主にIEEE 802.3に含まれています。

IEEE 802.3標準

IEEE 802.3は、イーサネット技術における最も重要な規格です。この規格は、物理層とデータリンク層に関する技術的な仕様を提供し、イーサネット通信の普及を支えています。主な特徴としては、以下の点が挙げられます：

1. 伝送方式の規定：
   IEEE 802.3は、イーサネットの物理層におけるさまざまな伝送方式を規定しています。例えば、10BASE-T（10Mbps）、100BASE-TX（100Mbps）、1000BASE-T（1Gbps）、10GBASE-T（10Gbps）など、異なる速度に対応する規格があります。

2. メディアアクセス制御（MAC）：
   IEEE 802.3では、データリンク層におけるアクセス制御方式も規定されています。これには、衝突検出を行う「CSMA/CD（Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection）」方式が含まれており、複数の機器が同時に通信を行う場合にデータの衝突を回避するためのルールを定めています。

3. 物理層の進化：
   イーサネットの物理層は、進化を続けています。初期のイーサネットは同軸ケーブルを使用していましたが、現在ではツイストペアケーブルや光ファイバーケーブルが主流となり、それに伴って転送速度も飛躍的に向上しました。たとえば、100BASE-TXは100Mbps、1000BASE-Tは1Gbps、さらには10GBASE-Tでは10Gbpsの速度を提供しています。

イーサネットの新たな規格

イーサネットの技術は進化を続けており、現在では次のような新しい規格が登場しています：

• 100GbE（100ギガビットイーサネット）：
  100Gbpsの通信速度を提供する規格で、特にデータセンターや大規模なネットワークインフラで使用されます。

• 400GbE（400ギガビットイーサネット）：
  400Gbpsの速度を実現する規格で、さらに高速な通信が求められる企業やサービスプロバイダー向けのネットワークで使用されます。

これらの規格は、イーサネットの性能を劇的に向上させ、インターネットやクラウドサービスの需要に応えることを目的としています。

まとめ

イーサネットは、物理層の進化とIEEEの規格によって、広範なネットワーク環境で採用されています。通信速度の向上、メディアの多様化、新しい規格の登場により、イーサネットは今後もその重要性を保ち続けるでしょう。IEEE 802.3の規格は、イーサネット技術が標準化された理由とその発展を支える基盤として、今後も新しい技術に対応し、ネットワークのニーズに応じて進化していくことが期待されます。