アラブの都市

エルサレムの歴史的名称

「 القدس 」の歴史的名称とその重要性について

「 القدس(アル=クドゥス)」は、現在のイスラエル・パレスチナ地域に位置する都市で、世界中の宗教的・歴史的背景を持つ重要な都市のひとつです。この都市は、古代から現代に至るまで、何千年にもわたる歴史と文化を紡いできました。しかし、その名前にはさまざまな呼び名があり、その変遷を理解することは、この都市がどれだけ多くの民族や宗教にとって重要な場所であったかを知る上で非常に重要です。

1. 古代の名称

「 القدس」の最も古い記録は、古代エジプトの文献にさかのぼります。紀元前19世紀のエジプトの記録には、この都市が「ヤブス(Jebus)」と呼ばれていたことが記されています。ヤブスは、カナン人によって築かれた古代都市であり、エルサレムの最初の形態とも言えます。この時期、エルサレムはまだヘブライ人によって支配されていなかったため、ヤブス人によって管理されていました。

2. ダビデ王とエルサレムの統一

ダビデ王が紀元前1000年頃にエルサレムを征服し、ユダ王国の首都としたことで、都市は「エルサレム」として新たに知られるようになりました。「エルサレム」という名前はヘブライ語で「シャロームの都市」、つまり「平和の都市」という意味を持ち、ダビデ王の時代には宗教的・政治的中心地としての地位を確立しました。この名前はその後も何千年にもわたって使用され、今日に至るまで使われ続けています。

3. 古代のローマ時代

ローマ帝国がユダヤ地方を征服した後、エルサレムは再び支配を受けました。ローマ帝国の支配下で、エルサレムは「アイリア・カピトリナ(Aelia Capitolina)」という名前に改名されました。この名前は、ローマの神々に捧げられた神殿が建設されたことに由来しています。この名前はローマ帝国の影響を色濃く反映しており、その後数世代にわたってこの地域で使用されました。

4. イスラム教の到来と「アル=クドゥス」

7世紀初頭、イスラム教が拡大する中で、エルサレムはイスラム帝国の支配下に入りました。イスラム教徒はこの地に大きな宗教的意味を見出し、エルサレムを「アル=クドゥス(Al-Quds)」と呼ぶようになりました。この名称はアラビア語で「聖なる場所」を意味しており、特にイスラム教徒にとって重要な都市であることを強調しています。

「アル=クドゥス」という名前は、イスラム教の預言者ムハンマドが「夜の旅」においてエルサレムを訪れ、そこから天に昇ったという伝説に基づいています。これにより、エルサレムはイスラム教徒にとってメッカとメディナに次ぐ第三の聖地としての地位を持つようになりました。

5. 中世と近代の変遷

中世においても、「アル=クドゥス」という名前は広く使用されており、十字軍の時代を経ても変わることはありませんでした。オスマン帝国の支配下に入った後も、この名称は続きましたが、20世紀に入り、エルサレムは再び国際的な争いの舞台となりました。

第一次世界大戦後、オスマン帝国が崩壊すると、エルサレムはイギリスの支配下に入り、その後の国際情勢により、エルサレムの名前は再び注目を集めることになります。1948年には、イスラエルの独立に伴い、エルサレムはイスラエルとパレスチナの間で争われる地域となり、特に聖地としての位置付けが強調されました。

6. 現代における「エルサレム」の重要性

現代のエルサレムは、イスラエルとパレスチナの間で争われる政治的な中心地であり、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三大宗教にとって聖地です。これらの宗教的背景を持つ人々にとって、エルサレムの名称とその聖なる地位は非常に重要であり、その歴史的名称の変遷は、世界の宗教的および文化的背景を深く反映しています。

結論

「 القدس」の古代から現代に至るまでの名称の変遷は、この都市がいかに多くの文化、宗教、そして政治的背景を持ち、争われてきた場所であるかを示しています。現在でも、エルサレム(アル=クドゥス)はその名称が示す通り、聖なる都市として多くの人々にとって特別な意味を持ち続けています。この名前の変遷を知ることは、エルサレムの歴史とその文化的重要性を理解するための重要な鍵となります。

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