観光名所

クロアチア観光名所ガイド

クロアチアは、アドリア海に面した地中海の宝石と称される国であり、長い歴史、豊かな文化、息をのむような自然景観を兼ね備えている。この小さなバルカン半島の国は、ローマ時代の遺跡、中世の城塞都市、クリスタルブルーの海岸線、そして国立公園に点在する滝や湖など、実に多様で魅力的な観光資源を有している。本稿では、クロアチアを訪れる際に絶対に見逃せない主要観光地について、地理的・文化的な背景とともに徹底的に解説する。


ドゥブロヴニク旧市街(Dubrovnik Old Town)

クロアチアを代表する観光名所としてまず挙げられるのが、アドリア海に面した南部の城塞都市ドゥブロヴニクである。かつてラグーザ共和国の中心地であったこの都市は、「アドリア海の真珠」とも呼ばれ、ユネスコの世界遺産にも登録されている。美しく保存された中世の城壁に囲まれた旧市街には、石畳の道、バロック様式の教会、歴史ある修道院、ゴシック建築の宮殿が所狭しと立ち並んでいる。

特に見逃せないのは、全長約2kmの城壁ウォークである。城壁の上からは、赤い屋根と紺碧の海とのコントラストが美しい旧市街を一望できる。また、「ゲーム・オブ・スローンズ」のロケ地としても知られており、ファンにとっては聖地巡礼の場でもある。


プリトヴィツェ湖群国立公園(Plitvice Lakes National Park)

内陸部に位置するプリトヴィツェ湖群国立公園は、自然愛好家にとって必見の場所であり、1979年にユネスコ世界自然遺産に登録されたクロアチアで最も有名な自然保護区である。大小16の湖が階段状に連なり、それぞれが無数の滝や渓流で結ばれている。湖の色は石灰岩と微生物の影響で日々変化し、エメラルドグリーンからターコイズブルーまで様々な色合いを呈する。

公園内には整備された木道が巡らされており、訪問者は自然を傷つけることなく水上を歩いて移動できる。四季折々の美しさを見せるこの地は、春の新緑、夏の涼しさ、秋の紅葉、冬の氷瀑と、どの季節に訪れても異なる魅力がある。


スプリトとディオクレティアヌス宮殿(Split & Diocletian’s Palace)

アドリア海沿岸の中心都市スプリトは、ローマ皇帝ディオクレティアヌスが4世紀に築いた宮殿を中心に発展した町である。この宮殿は現在、街の中心部にそのまま組み込まれており、古代と現代が融合したユニークな都市景観を形作っている。

宮殿内部には、かつての浴場、神殿、地下回廊などが残り、その一部は商店や住居として利用されている。とりわけ地下宮殿は保存状態が良く、「ゲーム・オブ・スローンズ」の撮影地にもなっている。スプリトはまた、ダルマチア地方への玄関口として、近隣の島々へのアクセス拠点でもある。


フヴァル島(Hvar Island)

ダルマチア沿岸に浮かぶフヴァル島は、日照時間の長さと高級リゾート地としての評価から、「クロアチアのサンシャインアイランド」として知られる。フヴァルの町はヴェネツィア様式の建築物が立ち並び、石造りの広場、要塞、修道院などが観光客を魅了する。

また、フヴァルはラベンダーの名産地としても有名で、夏には一面が紫色に染まる光景が広がる。地元のワインやオリーブオイルも特産であり、美食とともにリゾートを楽しむのに最適な島である。


ザグレブ(Zagreb)

クロアチアの首都ザグレブは、内陸部に位置する文化と政治の中心地であり、古典と現代が共存する都市である。ゴシック様式のザグレブ大聖堂や中世の街並みを残す「上町(グラデック)」地区は歴史好きにとって興味深いスポットであり、一方で「下町(ドニ・グラード)」には博物館、ギャラリー、カフェ、マーケットが集まり、活気ある都市文化を体験できる。

特に注目すべきは「失恋博物館(Museum of Broken Relationships)」であり、世界中から寄せられた失恋の記念品とそのエピソードが展示されるユニークな博物館として人気を博している。


コルチュラ島(Korčula Island)

アドリア海に浮かぶコルチュラ島は、「小さなドゥブロヴニク」と称されるほど保存状態の良い中世の旧市街を持つ島である。狭い路地と石造りの家々が密集するこの島は、探検家マルコ・ポーロの出生地とされており、彼の名を冠した博物館もある。

また、地元の伝統舞踊「モレシュカ(Moreska)」は、剣舞を取り入れた劇的な演出で知られ、観光客にも人気の催しである。島は美しいビーチと透明度の高い海にも恵まれており、静かで落ち着いたリゾートを求める旅行者に最適である。


ザダル(Zadar)

ザダルは古代ローマ時代からの歴史を持つ北ダルマチア地方の中心都市である。ここにはローマ時代の遺跡や中世の教会、ヴェネツィア共和国時代の要塞が数多く残されており、町全体が生きた歴史博物館のようである。

最もユニークな観光スポットとしては、「海のオルガン(Sea Organ)」と「太陽への挨拶(Greeting to the Sun)」が挙げられる。海の波の動きによって音が鳴るこのオルガンは、自然と音楽の融合を体感できる現代芸術作品であり、ザダルの新たな象徴となっている。


ロヴィニ(Rovinj)

イストリア半島にあるロヴィニは、クロアチアでもっともロマンチックな町の一つとして知られている。赤い屋根の家々が急斜面に並び立ち、石畳の小道が迷路のように入り組んだ旧市街は、かつてのヴェネツィア統治時代の名残を色濃く残している。

特に聖エウフェミア教会の鐘楼からの景色は素晴らしく、アドリア海と町のパノラマが一望できる。近郊にはオリーブ畑やワイナリーも点在し、グルメな旅を楽しむにも理想的な場所である。


クルカ国立公園(Krka National Park)

クルカ川沿いに広がるクルカ国立公園は、滝と緑の渓谷が織りなす美しい自然が魅力であり、特にスクリャディンスキ・ブク(Skradinski Buk)と呼ばれる大滝が有名である。訪問者は、木製の遊歩道を歩きながら、滝や小川、湿地帯に生息する野生動物を間近に観察できる。

夏季には指定されたエリアでの水遊びも可能で、自然の中でリフレッシュしたい旅行者にとって理想の観光地である。


結論

クロアチアは、その面積の小ささにもかかわらず、世界中の旅行者を魅了するほどの多様で豊かな観光資源を有している。古代ローマの遺産から中世の城壁都市、息を呑むような国立公園、陽光あふれる島々に至るまで、歴史・文化・自然が調和したこの国には、何度訪れても新たな発見がある。ヨーロッパの観光地としてはまだまだ隠れた存在であるがゆえに、真の旅好きにこそおすすめしたい宝石のような国、それがクロアチアである。


参考文献

  • Croatian National Tourist Board. (2024). Discover Croatia

  • UNESCO World Heritage Centre. (2024). World Heritage List: Croatia

  • Lonely Planet. (2023). Croatia Travel Guide

  • Visit Dubrovnik. (2024). Official Tourist Board Website

  • Nature Parks Croatia. (2024). Plitvice Lakes and Krka National Parks

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