シェルスクリプト（Shell Scripts）は、Unix系システム（LinuxやmacOSなど）における強力なツールで、システム管理や自動化、タスクの効率化に広く使用されています。その中で、here scripts（ヒアドキュメント）は、複数行の文字列をシェルスクリプト内で効率よく処理するための非常に便利な機能です。この記事では、here scriptsの基本的な使い方から応用的な使用法までを、実際のコード例を交えて完全に解説します。
1. here scripts とは
here script（またはヒアドキュメント）は、シェルスクリプト内で複数行のテキストを直接記述するための方法です。これを使用することで、エコーや他のコマンドを利用せずに、シェルスクリプト内に直接複数行の文字列を渡すことができます。
例えば、通常のシェルスクリプトでは、複数行のテキストを表示するには、次のように複数回echoを使う必要があります。
しかし、here scriptを使うことで、より簡潔に複数行の文字列を一度に処理できます。
2. 基本的な使い方
here scriptを使う基本的な構文は次のようになります。
上記の構文では、<< EOFがヒアドキュメントの開始を示し、EOF（End of File）が終了を示します。EOFという識別子は任意の文字列に変更できますが、通常はEOFやENDなどが使われます。
例: ファイルへの書き込み
このコードを実行すると、以下のように出力されます。
3. here scripts の応用
3.1 変数の展開
here script内で変数を使用することもできます。この場合、シェルが変数を展開して処理します。
このコードを実行すると、$nameが展開されて以下のように出力されます。
3.2 here scriptsの引数
ヒアドキュメントの識別子（ここではEOF）は、シェルスクリプト内で他の場所でも使用できます。例えば、EOFを別の文字列に変更することで、同じスクリプト内で複数のヒアドキュメントを使い分けることができます。
このように、複数のhere scriptを使って、異なるセクションのデータを処理することができます。
3.3 ヒアドキュメントをファイルに書き込む
here scriptの内容をファイルに書き込むこともできます。>を使用してリダイレクトし、指定したファイルに出力します。
このコードを実行すると、output.txtというファイルが作成され、その中に指定したテキストが書き込まれます。
3.4 ヒアドキュメントの引数を変数として使用
次に、here script内でコマンドを実行する方法を紹介します。例えば、echoコマンドをヒアドキュメントと一緒に使用することで、複雑な出力を行うことができます。
この場合、$messageという変数の内容がhere script内に埋め込まれ、実行時に展開されます。
4. ヒアドキュメントの特性
4.1 改行の重要性
here script内で改行が含まれている場合、シェルはそのまま改行を保持します。これにより、見やすく整理された出力を得ることができます。逆に、改行を避けたい場合は、echo -nを使って改行なしで出力することもできます。
4.2 終了条件
ヒアドキュメントは、識別子が一致するまで終了しません。例えば、<< EOFのEOFと、終了のEOFが一致する必要があります。誤って異なる識別子を使うと、スクリプトが終了しないため、エラーが発生します。
上記のように、終了部分の識別子を誤ってENDにすると、スクリプトが終了しません。
4.3 ヒアドキュメントのタイプ
here scriptには、基本的なものに加えて、「引用符付き」のヒアドキュメント（クォート付きヒアドキュメント）もあります。この方法では、変数の展開を無効にすることができます。
この場合、$nameはそのまま文字列として出力され、展開されません。
5. まとめ
シェルスクリプトのhere scriptは、複数行の文字列を処理する強力で便利な機能です。基本的な使い方から応用的な使用法までを理解することで、シェルスクリプトの柔軟性を大きく広げることができます。また、変数展開やリダイレクト、複数のヒアドキュメントを使い分けることで、複雑なスクリプトを書くことが可能になります。
シェルスクリプトの世界では、このようなテクニックをうまく活用することで、より効率的なシステム管理や自動化が実現できます。