イギリス政府が提供する国際的な奨学金プログラム「チーヴニング奨学金(Chevening Scholarship)」は、将来のリーダーや意欲的な専門家たちに対し、イギリスの大学で修士課程を履修する機会を提供する制度である。この奨学金は、英国内務省の支援を受けて運営されており、世界160以上の国と地域から毎年1,500人以上の学生が選ばれている。日本の応募者も対象に含まれており、過去には多数の日本人留学生がこの奨学金を利用して渡英している。
本記事では、チーヴニング奨学金への応募方法、必要な条件、評価基準、申請プロセス、選考スケジュール、奨学金の対象内容、申請時の注意点などを網羅的に解説する。

チーヴニング奨学金の概要
チーヴニング奨学金は、英国政府による外交的な人的交流プログラムの一環であり、将来のグローバルリーダーを育成することを目的としている。主な特徴は以下の通りである:
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対象:世界中の優秀な若手専門家、リーダー候補
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学位:イギリスの大学の修士課程(1年間)
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支援内容:学費全額、渡航費、生活費、ビザ代、健康保険などを含む
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選考基準:学業成績、リーダーシップ、職歴、将来の展望、英語能力など
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応募期間:毎年8月上旬から11月上旬まで
応募資格と要件
チーヴニング奨学金の応募には、以下の主な要件を満たす必要がある:
要件項目 | 内容 |
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国籍 | チーヴニング奨学金対象国の国籍を有すること(日本を含む) |
学位 | 学士号以上(イギリスの学士号相当) |
職歴 | 少なくとも**2年間(約2,800時間)**のフルタイム職歴(有給) |
イギリス大学への出願 | 最大3つのコースに出願し、少なくとも1つから無条件合格を得ること |
英語能力 | 一定の英語スコアを提出する必要(IELTS、TOEFL iBTなど) |
他の奨学金との重複不可 | チーヴニング奨学金受給期間中に他の奨学金を受け取らないこと |
帰国義務 | 奨学金修了後、最低2年間は母国に帰国して生活する義務がある |
英語能力要件
チーヴニングでは、申請時点で英語能力証明の提出は必須ではないが、締切日までに証明が必要である。認められているテストとその基準点は以下の通りである(参考値):
テスト種類 | 最低スコア(例) |
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IELTS | 6.5(すべてのセクションで5.5以上) |
TOEFL iBT | 79〜100以上(大学によって異なる) |
PTE Academic | 58〜64以上 |
Cambridge English | C1 AdvancedまたはC2 Proficiency |
※なお、大学によってはより高いスコアを要求する場合があるため、事前に確認が必要である。
職歴の要件と証明
応募者には、最低2年間(2,800時間以上)の実務経験が求められる。この「職歴」には以下が含まれる:
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フルタイム雇用
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パートタイム雇用(時間換算)
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有給インターンシップ
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フリーランス契約
無給インターンやボランティア活動は原則として含まれない。職歴を証明するには、雇用主からのレター、契約書、給与明細書などが必要となる。
応募に必要な書類
応募プロセスでは以下の書類が必要となる:
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オンライン申請フォームの記入
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大学の成績証明書と学位証明書
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パスポートのスキャンコピー
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推薦状(2通)
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志望動機に関するエッセイ(4項目)
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英語能力試験のスコア(期限内に提出)
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イギリス大学からの無条件合格通知(締切まで)
志望動機のエッセイ項目
申請者はオンライン申請時に、以下の4つのテーマに関するエッセイ(各300〜500語程度)を提出する必要がある:
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リーダーシップと影響力に関する経験
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ネットワーキングスキルの活用について
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学業計画と将来のキャリアビジョン
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イギリス留学の動機と意義
これらのエッセイは、単なる作文ではなく、評価の中心であり、選考の成否を左右する。
チーヴニング申請のプロセスとスケジュール
以下は、チーヴニング奨学金の一般的なスケジュールである:
月 | 内容 |
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8月〜11月 | オンライン申請受付期間(締切厳守) |
11月〜2月 | 書類審査と第一次選考(短リスト作成) |
3月〜5月 | オンライン面接(大使館または領事館にて) |
6月〜7月 | 奨学金受給者の決定と通知 |
7月〜8月 | 大学の入学手続き、ビザ申請 |
9月〜10月 | 渡英、大学のコース開始 |
面接は英語で実施され、志望理由、キャリアビジョン、過去の実績などが深く問われる。過去の受給者によると、エッセイ内容との一貫性も重視される。
イギリス大学への出願
チーヴニング奨学金の申請と並行して、イギリスの大学への出願も行わなければならない。以下の点に注意する必要がある:
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応募は最大3つの修士課程コースまで可能
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コースは1年間で修了可能である必要がある
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チーヴニングが認めるコースであること(オンライン不可、パートタイム不可)
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志望理由と整合性が取れたコース選択が望ましい
大学出願は、UCAS(イギリス大学出願システム)を通さず、各大学の公式ウェブサイトから個別に申請するのが通例である。
奨学金の内容
チーヴニング奨学金は以下の費用を全額または一部負担する:
支援内容 | 詳細 |
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授業料 | 年間最大£18,000(大学によっては超過分が自己負担になることも) |
渡航費 | 日本−イギリス間の往復航空券(エコノミークラス) |
月額手当 | 生活費をカバーする月額支給(地域によって異なる) |
到着手当 | 初期費用支援 |
ビザ申請費用 | ビザ取得に必要な費用全額 |
健康保険料 | イギリスNHS加入費(IHS)の補助 |
応募にあたっての注意点
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エッセイは自分の言葉で書くこと。他者の文章のコピーは厳禁であり、盗用が発覚すれば即失格となる。
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応募フォームの内容に一貫性を持たせ、面接で矛盾が生じないよう留意する。
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応募開始前に、関心のある大学やコース、英語試験の日程を十分に調査しておくことが望ましい。
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チーヴニング奨学金の公式ウェブサイトや日本にあるイギリス大使館の情報ページは常にチェックして最新情報を得ることが重要。
チーヴニング奨学金の公式情報源
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在日英国大使館公式ページ(日本語情報もあり)
おわりに
チーヴニング奨学金は、単にイギリスで学位を取得するだけではなく、国際的な人脈の構築や、将来のキャリアを飛躍させる貴重な機会となる制度である。特に、日本の若手専門家にとっては、国際的な視野を広げ、次世代のリーダーとしての資質を磨く場として理想的である。準備には時間と労力を要するが、その価値は計り知れない。
日本からの応募者にも門戸は大きく開かれており、十分な準備と明確な志があれば、誰にでもチャンスはある。誠実な動機と将来ビジョンをしっかりと持ち、ぜひこの挑戦に臨んでいただきたい。