ネットワーク

データリンク層の役割と機能

OSI参照モデルは、ネットワーク通信の標準的な構造を定義するための7つの層で構成されています。その中で「データリンク層」(Layer 2)は、ネットワーク内でのデータの正確な転送を保証する重要な役割を担っています。この層は、データ通信の信頼性を確保し、物理層(Layer 1)とネットワーク層(Layer 3)の間でデータの整合性を保つ役割を果たします。以下では、OSIモデルにおけるデータリンク層の役割と、データリンク層がどのように機能するのかについて、詳しく説明します。

データリンク層の基本的な役割

データリンク層は、ネットワーク機器間でデータが正確に送受信されることを確実にするために必要な処理を行います。この層の主な役割は、エラーの検出と修正、フレームの形成、データのフロー制御などです。データリンク層は、物理層から受け取ったビット列をフレームという単位に変換し、ネットワークを介して正確に送信します。

データリンク層の機能

  1. フレームの形成
    データリンク層では、ネットワーク上で送受信されるデータをフレームという単位で構造化します。フレームには、送信元と宛先のアドレス、データ、エラー検出情報などが含まれます。このフレームを使用することによって、物理層はデータを適切に伝送することができます。

  2. エラー検出と修正
    データリンク層は、データが送信中に破損した場合、それを検出し、可能であれば修正します。エラー検出には、一般的に「CRC(巡回冗長検査)」などの手法が使用されます。これにより、データが正確に届いているかどうかを確認できます。もしエラーが発生した場合、再送信を要求する仕組みもあります。

  3. フロー制御
    フロー制御は、データリンク層が提供するもう一つの重要な機能です。ネットワークが混雑している場合や受信機が処理しきれない場合、送信側が送信速度を調整することが求められます。この制御により、ネットワークの効率と安定性が保たれます。

  4. メディアアクセス制御(MAC)
    データリンク層の中でも、特に重要な役割を果たすのがメディアアクセス制御(MAC)です。MACは、共有メディアを使用しているネットワーク(例えば、イーサネットやWi-Fiなど)において、どのデバイスが通信を行うかを調整します。これにより、複数のデバイスが同時に同じチャンネルを使おうとした場合の衝突を防ぐことができます。

データリンク層のプロトコル

データリンク層では、いくつかの重要なプロトコルが利用されており、これらがネットワーク通信を実現しています。代表的なものには次のようなプロトコルがあります。

  1. Ethernet(イーサネット)
    イーサネットは、最も広く使用されているデータリンク層のプロトコルです。イーサネットは、MACアドレスを使ってデータリンク層の通信を行います。イーサネットは、物理層で伝送されるビット列をフレームとしてパッケージ化し、ネットワーク上でデータを正確に送信する役割を果たします。

  2. Wi-Fi(無線LAN)
    無線LANもデータリンク層の一部で、MACアドレスを用いて無線通信を行います。Wi-Fiは、物理的なケーブルを使用せず、無線でデータを送受信するため、モバイル機器での利用が非常に便利です。Wi-Fiでは、無線の特性に応じたデータリンク層の調整が行われます。

  3. PPP(Point-to-Point Protocol)
    PPPは、インターネット接続やダイヤルアップ接続に使われるプロトコルです。このプロトコルは、二点間の通信を確立し、データリンク層でのエラー検出やデータの流れの管理を行います。

  4. HDLC(High-Level Data Link Control)
    HDLCは、点対点通信におけるデータリンク層のプロトコルの一つで、エラー検出やフレームの整合性を保つための手法が含まれています。HDLCは、データ転送の効率と信頼性を確保するために広く使用されます。

データリンク層とネットワーク層の関係

データリンク層は、ネットワーク層と密接に連携しています。ネットワーク層(Layer 3)は、データをパケットとして扱い、宛先のIPアドレスを元にデータを適切な経路に転送します。一方、データリンク層は、このパケットをフレームに変換し、実際の物理的な送受信を担当します。ネットワーク層が論理的な経路を提供するのに対し、データリンク層は、フレーム単位で正確にデータをやり取りする役割を担っています。

まとめ

データリンク層は、OSI参照モデルにおいて非常に重要な役割を果たしています。物理層から受け取ったデータをフレームに変換し、エラー検出やフロー制御、メディアアクセス制御を通じて、データの正確な送信と受信を確保します。イーサネットやWi-Fi、PPPなど、データリンク層にはさまざまなプロトコルが存在し、それぞれが異なるタイプのネットワークで効率的に機能しています。データリンク層の適切な動作がなければ、ネットワーク通信は信頼性を欠いたものとなり、データの破損や遅延が発生することになります。そのため、データリンク層の役割は非常に重要であり、現代のネットワーク通信において不可欠な要素となっています。

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