腎臓と尿路

ネフローゼ症候群の合併症

病気「ネフローゼ症候群」の合併症について

ネフローゼ症候群(または「腎性浮腫」)は、腎臓の機能に異常をきたし、尿中に過剰なタンパク質が排泄されることが特徴の疾患です。主に腎臓の糸球体という部分に障害が生じることによって引き起こされます。この疾患は単なる腎臓の問題にとどまらず、全身にさまざまな合併症を引き起こすことが多いため、早期の診断と適切な治療が必要です。本記事では、ネフローゼ症候群の合併症について詳細に説明します。

1. 高血圧(高血圧症)

ネフローゼ症候群の患者は、高血圧にかかりやすい傾向があります。尿中の過剰なタンパク質排泄が腎臓の血管に負担をかけ、血圧が上昇することがあるためです。高血圧は、腎機能の悪化をさらに進行させる可能性があり、治療には慎重な管理が必要です。

2. 低アルブミン血症

ネフローゼ症候群のもう一つの特徴的な合併症は、血液中のアルブミン(たんぱく質の一種)が減少することです。アルブミンは血液の浸透圧を維持し、血液と組織との間で水分を適切に調整する役割を担っています。アルブミンが低下すると、体内での水分のバランスが崩れ、浮腫(むくみ)を引き起こす原因となります。浮腫は顔や足などに現れることが多く、見た目にも影響を与えることがあります。

3. 血栓症(血栓の形成)

ネフローゼ症候群では、血液中のタンパク質が異常に減少するため、血液の凝固作用が強くなりやすいとされています。その結果、血栓(血の塊)が形成されるリスクが高まります。特に、静脈血栓症や肺血栓塞栓症(肺に血栓が詰まる病気)は命に関わる合併症となることがあり、注意が必要です。

4. 骨密度の低下(骨粗鬆症)

ネフローゼ症候群の患者は、しばしば骨密度が低下し、骨粗鬆症(骨の強度が低下し、骨折しやすくなる状態)のリスクが高まります。これは、尿中にカルシウムが排泄されることや、ステロイド薬の長期使用が原因となる場合があります。骨の健康を保つためには、適切なカルシウムとビタミンDの摂取が重要です。

5. 感染症

ネフローゼ症候群の患者は、免疫力が低下していることが多く、感染症にかかりやすくなります。特に、浮腫によって皮膚が膨張しやすくなるため、細菌が侵入しやすい状態になります。肺炎や尿路感染症などの感染症にかかるリスクも増加します。

6. 高脂血症

ネフローゼ症候群の患者の多くは、高脂血症(血中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が過剰に増加する状態)を示すことがあります。これも腎臓の異常から生じる副次的な影響であり、動脈硬化の進行を加速させる可能性があります。高脂血症の管理には、食事療法や薬物療法が必要となることがあります。

7. 腎不全

ネフローゼ症候群が進行すると、最終的に腎不全を引き起こすことがあります。腎不全は、腎臓が血液を十分にろ過できなくなる状態で、人工透析が必要になる場合もあります。早期の治療と適切な管理が腎機能の低下を防ぐために重要です。

8. 精神的な影響

ネフローゼ症候群の長期的な症状や治療過程は、患者の精神的健康にも影響を及ぼすことがあります。浮腫や体形の変化、継続的な治療への不安などが原因となり、ストレスやうつ病などの精神的な問題を引き起こすことがあります。患者の心身の健康を保つために、精神的サポートやカウンセリングが重要です。

結論

ネフローゼ症候群は腎臓に関連する疾患でありながら、全身にわたるさまざまな合併症を引き起こす可能性がある疾患です。これらの合併症は患者の生活の質を著しく低下させることがありますが、早期発見と適切な治療によってその進行を防ぐことが可能です。特に、血圧の管理、タンパク質の補充、感染症の予防、そして心身のケアが重要です。患者自身の意識と医師との協力を通じて、症状を適切に管理していくことが求められます。

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