ビリルビンとは、赤血球の破壊によって生成される色素であり、肝臓で処理される重要な物質です。ビリルビンは、血液中でヘモグロビンが分解される際に発生し、その後肝臓で解毒され、最終的に胆汁として排泄されます。ビリルビンの測定は、主に肝機能や胆道の健康状態を評価するために行われ、異常な値はさまざまな病気の兆候となることがあります。
ビリルビンの種類
ビリルビンには主に2種類があります:直接ビリルビン(結合型ビリルビン)と間接ビリルビン(未結合型ビリルビン)です。

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間接ビリルビン(未結合型ビリルビン)は、赤血球が破壊されることで生成され、肝臓で処理される前の状態です。間接ビリルビンは脂溶性であり、肝臓に取り込まれる前にアルブミンと結びついて血液を介して運ばれます。
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直接ビリルビン(結合型ビリルビン)は、肝臓で間接ビリルビンがグルクロン酸と結びついて水溶性に変化したものです。この形のビリルビンは胆汁に排泄され、最終的に腸内で処理されます。
ビリルビン測定の目的
ビリルビンの血中濃度を測定することで、いくつかの健康状態を評価することができます。主に以下のような目的で行われます。
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肝疾患の診断: ビリルビン値が異常に高い場合、肝臓の機能障害が考えられます。肝炎や肝硬変、肝臓癌などの病気が疑われることがあります。
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胆道疾患の評価: ビリルビンの排泄に関与する胆道系に異常があると、ビリルビンが血中に蓄積し、黄疸を引き起こすことがあります。胆石や胆管炎などの病気が関与している可能性があります。
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赤血球の破壊: 赤血球が異常に破壊されると、過剰なビリルビンが生成されます。これが原因で溶血性貧血などの疾患が疑われる場合があります。
ビリルビン値の異常
ビリルビンの異常な値は、いくつかの病気や状態を示唆します。以下に、ビリルビン値が異常になる可能性のある主な疾患を挙げます。
高ビリルビン血症(ビリルビン値が高い)
ビリルビンが異常に高い場合、黄疸が発生することがあります。高ビリルビン血症は、以下のような原因によって引き起こされることがあります。
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肝疾患: 肝炎、肝硬変、肝臓癌などの疾患は肝臓でのビリルビン処理に支障をきたし、ビリルビンの血中濃度が上昇します。
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胆道閉塞: 胆石や胆管が閉塞していると、ビリルビンの排泄が妨げられ、血中濃度が上昇します。これにより、胆汁が血液に逆流し、黄疸が発生します。
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溶血性疾患: 赤血球が異常に破壊されると、過剰な間接ビリルビンが生成され、血中に放出されます。これにより、高ビリルビン血症が発生します。溶血性貧血や新生児黄疸が代表例です。
低ビリルビン血症(ビリルビン値が低い)
ビリルビンが異常に低い場合は、比較的少ないですが、以下のような原因が考えられます。
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肝機能の低下: 肝臓が適切に機能していない場合、ビリルビンの処理が正常に行われず、血中ビリルビン濃度が低下することがあります。
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遺伝的な要因: いくつかの遺伝的疾患は、ビリルビンの代謝に影響を与え、低ビリルビン血症を引き起こす可能性があります。
ビリルビンの測定方法
ビリルビンの測定は、通常、血液検査によって行われます。血液サンプルを採取し、ビリルビンの濃度を測定することにより、肝臓や胆道系、赤血球の健康状態を評価できます。
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総ビリルビン: これは間接ビリルビンと直接ビリルビンの合計値を示します。肝機能や胆道の障害を示唆するため、重要な指標となります。
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間接ビリルビン: 赤血球の破壊が過剰に行われている場合、間接ビリルビンの濃度が高くなることがあります。
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直接ビリルビン: 肝臓が処理したビリルビンの濃度を示します。肝機能や胆道系の異常があると、直接ビリルビンが高くなることがあります。
ビリルビンの正常値と異常値
ビリルビンの正常範囲は、検査施設によって異なる場合がありますが、一般的には以下のような基準が設けられています。
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総ビリルビン: 0.3〜1.2 mg/dL
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間接ビリルビン: 0.2〜0.8 mg/dL
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直接ビリルビン: 0〜0.4 mg/dL
ビリルビン値がこれらの範囲を超える場合は、肝臓や胆道、赤血球の異常が疑われます。
結論
ビリルビンの測定は、肝臓、胆道系、赤血球の健康状態を確認するために非常に重要な検査です。異常なビリルビン値は、さまざまな疾患の兆候となる可能性があり、早期の診断と治療が求められます。ビリルビンの正常値を維持することは、体の健康を保つために重要であり、異常が発見された場合には、医師の指導のもとで適切な検査や治療を受けることが必要です。