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フィジーの主要宗教構成

フィジーにおける最大の宗教について

フィジー共和国は南太平洋に位置する島嶼国家であり、その文化と宗教は、多様な民族的背景を持つ住民たちによって形成されてきた。フィジーの宗教的状況は、イギリスによる植民地支配時代、そしてその後の移民政策を通じて、独自の発展を遂げている。本稿では、フィジーにおける主要な宗教について、歴史的背景、現状、社会への影響などを包括的に論じる。


フィジーの宗教分布の概要

フィジーにおける宗教は、主にキリスト教、ヒンドゥー教、イスラム教によって構成されている。以下の表は、2020年時点のフィジーの主な宗教分布を示している(フィジー政府統計局および国連データより作成)。

宗教 割合(%)
キリスト教 約64.4%
ヒンドゥー教 約27.9%
イスラム教 約6.3%
無宗教・その他 約1.4%

このように、フィジーではキリスト教が最大の宗教であり、次いでヒンドゥー教、イスラム教が続く。この構成は、フィジーの歴史的経緯と密接に関連している。


キリスト教の広がりと影響

フィジーにキリスト教が伝来したのは、19世紀初頭、特にイギリスから派遣された宣教師たちによってである。ウェスリアン・メソジスト教会が中心的役割を果たし、現地の首長たちの改宗が民衆全体への広がりを促進した。

現在、フィジーにおけるキリスト教の主要宗派は以下の通りである。

  • メソジスト教会(最大勢力、人口の約35%)

  • カトリック教会

  • セブンスデー・アドベンティスト教会

  • アングリカン教会

  • 他のプロテスタント系教会

特筆すべきは、フィジー・メソジスト教会が政治や社会生活に大きな影響を持っている点であり、とりわけ国民のアイデンティティ形成にも寄与してきたことである。国の祝祭日や公共行事では、しばしばキリスト教的な儀式が取り入れられている。


インド系フィジー人とヒンドゥー教

19世紀末から20世紀初頭にかけて、イギリス植民地政府は労働力不足を補うため、インドから多数の契約労働者(ギルミティアス)をフィジーに移住させた。この移民たちは、自らの宗教的伝統を持ち込み、現在のフィジーにおけるヒンドゥー教の基盤を築いた。

フィジーのヒンドゥー教徒は、主に以下の特徴を持つ。

  • ヴィシュヌ派やシヴァ派が主流

  • ディーワーリー(光の祭典)などの伝統的な祝祭が盛大に祝われる

  • 多くの寺院が国内各地に存在しており、ナンディ市やラウトカ市などが主要な宗教活動の中心地である

また、ヒンドゥー教はフィジー文化の多様性を象徴する存在でもあり、音楽、ダンス、料理など、日常生活にも大きな影響を及ぼしている。


イスラム教の存在と役割

イスラム教徒もインド系移民に由来するが、その数はヒンドゥー教徒に比べて少ない。フィジーにおけるイスラム教徒の多くはスンナ派に属しており、モスクは全国に約20か所存在する。中でも、首都スバやラウトカに大規模なモスクがあり、イスラム教徒の中心的な宗教活動が行われている。

イスラム教徒はフィジー社会において、次のような活動を通じて存在感を示している。

  • 断食月(ラマダン)中の特別な行事

  • ハラール食品産業の拡大

  • 教育機関(マドラサ)の設立と運営

宗教間の調和を保ちながら、彼らはフィジーにおける宗教的多様性の一翼を担っている。


フィジーの宗教間関係

フィジーは、宗教的多様性にもかかわらず、比較的平和な宗教間関係を維持してきた。しかし、歴史的には、特に民族間(先住民フィジー人とインド系フィジー人)に起因する緊張が、宗教間の対立に発展する場面もあった。

フィジー政府は、宗教の自由を憲法で保障しており、すべての宗教団体に平等な権利が与えられている。多宗教国家としてのフィジーの強みは、異なる宗教的伝統が共存し、それぞれが文化的な豊かさをもたらしている点にある。


教育と宗教

フィジーでは、宗教が教育においても重要な役割を果たしている。多くの学校は宗教団体によって設立・運営されており、カリキュラムには宗教教育が組み込まれている。たとえば、キリスト教系の学校では聖書教育が、ヒンドゥー教系の学校ではヒンドゥー哲学の授業が行われている。


宗教と政治

歴史的に、フィジーの政治には宗教的要素が色濃く反映されてきた。特に1987年と2000年のクーデターでは、宗教的アイデンティティが政治的対立を深める要因となったことが指摘されている。ただし、近年では、政教分離の原則が強調され、政治家たちも宗教的対立を避ける姿勢を見せている。


結論

フィジーにおける宗教は、単なる信仰の問題を超えて、国家の歴史、文化、社会構造に深く根付いている。最大宗教であるキリスト教が国のアイデンティティを強く支えながらも、ヒンドゥー教やイスラム教など他宗教との共存が、フィジー独自の多文化社会を形作っている。今後もこの多様性を尊重しながら、宗教間の調和を保つ努力が求められるだろう。

参考文献:

  • Fiji Bureau of Statistics, “2017 Population and Housing Census”

  • United Nations Statistics Division, “Demographic Yearbook 2020”

  • Lal, Brij V. “Broken Waves: A History of the Fiji Islands in the Twentieth Century” (University of Hawaii Press, 1992)

  • Norton, Robert. “Race and Politics in Fiji” (University of Queensland Press, 1990)

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