プロラクチンは、主に脳の下垂体前葉から分泌されるホルモンで、乳腺の発達と母乳の分泌に関与しています。女性の生理的過程において特に重要な役割を果たしますが、男性にも一定の役割があり、体内でのバランスが健康維持において重要です。このホルモンの分泌量を測定することによって、様々な疾患や体調不良の診断に役立つ場合があります。本記事では、プロラクチンの役割、正常値、異常なプロラクチンの分泌が引き起こす可能性のある病状、およびプロラクチン検査の方法について詳しく解説します。
プロラクチンの役割
プロラクチンは、主に乳腺に作用し、乳汁を分泌させる働きをします。特に妊娠後期から授乳期にかけてその分泌量が増加し、母乳の生成を促進します。また、プロラクチンは女性の月経周期にも影響を与えるホルモンであり、排卵を抑制することによって授乳期における妊娠を防ぐ役割も担っています。

一方、男性においてはプロラクチンの主な役割はまだ完全には解明されていませんが、精子の生成や性ホルモンの調節に関連していると考えられています。また、男性でも異常なプロラクチン分泌が生じると、性機能や精子の質に影響を及ぼすことがあります。
プロラクチン検査の意義
プロラクチンの血中濃度を測定することは、以下のような症状や状態の診断に役立ちます:
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不妊症の診断
プロラクチンの分泌異常は、女性の不妊症の一因となることがあります。過剰なプロラクチンは排卵を抑制し、月経不順を引き起こすことがあり、その結果、妊娠が難しくなる場合があります。 -
月経異常の評価
高プロラクチン血症は月経周期に影響を及ぼし、無月経や過多月経を引き起こす可能性があります。月経不順が続く場合、プロラクチン値を測定することで原因を特定することができます。 -
授乳中以外の乳汁分泌
授乳中でないにもかかわらず乳汁が分泌される「漏乳」の症状が見られる場合、プロラクチン値が高いことが関与している可能性があります。この場合、プロラクチンの検査が有効です。 -
下垂体腫瘍の診断
プロラクチン値が異常に高い場合、下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)の可能性があります。プロラクチノーマは良性の腫瘍であり、治療が可能です。検査によって腫瘍の有無を確認することができます。 -
性機能障害の評価
高プロラクチン血症は男性の性機能に影響を及ぼし、勃起不全や性欲減退の原因となることがあります。男性の場合もプロラクチンの検査が症状の原因を特定する手段となります。
プロラクチンの異常値とその原因
プロラクチンの血中濃度が異常に高い場合や低い場合、さまざまな疾患や状態が関与している可能性があります。
1. 高プロラクチン血症
高プロラクチン血症は、プロラクチンの分泌量が異常に多くなる状態を指します。この状態が引き起こす主な原因には以下があります:
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プロラクチノーマ
プロラクチンを過剰に分泌する下垂体腫瘍です。これが原因で高プロラクチン血症が生じることが多いです。良性腫瘍ですが、適切な治療が必要です。 -
妊娠や授乳期
妊娠中や授乳期には、正常な生理的状態としてプロラクチンの分泌が増加します。これ自体は健康に問題はありませんが、異常なタイミングで高値を示す場合は注意が必要です。 -
薬剤
一部の薬剤(例:抗精神病薬、降圧薬、抗うつ薬など)はプロラクチンの分泌を促進することがあります。 -
ストレス
精神的、肉体的なストレスが引き金となり、プロラクチン分泌が増加することがあります。 -
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンが不足すると、プロラクチンの分泌が増加することがあります。
2. 低プロラクチン血症
低プロラクチン血症は、プロラクチンの分泌量が正常よりも少ない状態です。これが引き起こす主な原因には以下があります:
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下垂体機能不全
下垂体の機能が低下することにより、プロラクチンの分泌が不足することがあります。 -
急性ストレス
強い急性ストレスがプロラクチンの分泌を抑制することがあります。 -
過剰な運動
過度な運動や極端なダイエットもプロラクチンの分泌を低下させることが知られています。
プロラクチン検査の方法と注意点
プロラクチンの血液検査は、特別な準備を必要としませんが、いくつかの注意点があります:
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検査時間のタイミング
プロラクチンの値は一日の時間帯によって変動します。通常、朝の早い時間帯に最も高い値を示しますので、検査は朝に行うことが推奨されます。 -
食事と薬剤の影響
食事や特定の薬剤が結果に影響を与えることがあります。特に薬剤による影響を避けるために、事前に医師に相談することが重要です。
結論
プロラクチンは女性にとって重要なホルモンであり、母乳の分泌を促進し、月経周期にも影響を与えます。男性にも重要な役割があり、プロラクチンの異常な分泌は性機能や健康に影響を及ぼす可能性があります。プロラクチンの検査は、さまざまな症状や疾患の診断に役立つ重要な手段であり、その結果をもとに適切な治療が行われることが期待されます。高プロラクチン血症や低プロラクチン血症を早期に発見し、必要な治療を受けることで、健康を維持することができます。