プロレスは、現代のエンターテイメント業界において非常に人気のあるスポーツの一つであり、観客に興奮と感動を提供するイベントとして広く認識されています。しかし、プロレスの性質についてはしばしば議論の的となります。特に「本物か、それとも演技か?」という問いに対しては多くの人々が異なる意見を持っています。この質問に対する答えを深く探るために、プロレスの歴史、進化、そしてそのパフォーマンスの特徴について詳しく見ていくことにしましょう。
プロレスの起源と歴史
プロレスの起源は非常に古く、19世紀のヨーロッパやアメリカにまでさかのぼることができます。その初期の形態は、格闘技としての競技性が強く、勝者を決めるために実際の力や技術が試されていました。しかし、時代が進むにつれて、プロレスは単なる肉体的な競技を超えて、ショーマンシップやドラマの要素を取り入れるようになりました。

20世紀初頭、アメリカのカーニバルやサーカスの一部としてプロレスは人気を博し、その後、テレビやラジオが普及するにつれて、さらに多くの人々にその魅力が広まりました。特に、WWF(現WWE)などのプロレス団体が世界的に大きな影響力を持つようになると、プロレスは単なるスポーツ以上のものとなり、エンターテイメントの一形態として確立されました。
プロレスの演技性
プロレスの最大の特徴は、その「演技性」にあります。試合は事前に決められたストーリーラインに基づいて進行します。レスラーたちは、自分のキャラクターを演じ、試合を通じて観客を楽しませるために技を披露します。勝敗も事前に決まっており、対戦相手との間で緊張感を演出するための「シナリオ」が設定されています。これにより、プロレスはリアルな格闘技というよりも、劇的な演技の一部として成立します。
プロレスの試合では、リアルな技術や力が使われるものの、その多くは安全性を考慮して調整されており、実際の戦いとは異なります。たとえば、レスラー同士がリング上で打撃を与え合ったり、投げたりするシーンがありますが、それらは事前に練習され、観客にはあたかも本物の戦いであるかのように見せかけられます。このため、プロレスを「本物のスポーツ」とは言い難い一方で、「本物のエンターテイメント」として見ることができます。
プロレスの「本物」とは何か?
それでは、プロレスが「本物」でないとすれば、何が本物のスポーツと違うのでしょうか?一般的に、スポーツでは試合の結果が完全に予測できないことが特徴です。しかし、プロレスにおいては試合の結果やシナリオが事前に決められているため、勝敗を競う「スポーツ」ではなく、観客を引き込む「エンターテイメント」としての性格が強くなります。したがって、プロレスは結果的には本物の競技スポーツとは言えませんが、観客に対して感情を揺さぶる力を持つ「パフォーマンスアート」とも言えます。
また、プロレスには多くの競技的要素が含まれており、レスラーたちは身体的な技術や力を駆使して試合を行います。これは決して単なる演技ではなく、実際に痛みを伴うことが多く、レスラーたちの身体には長期間にわたる過酷なトレーニングと努力が反映されています。そのため、プロレスは単なる「見せ物」ではなく、身体能力と技術の発表の場でもあります。
プロレスの影響力と文化
プロレスは世界中で大きな影響力を持っています。アメリカのWWE(World Wrestling Entertainment)は、そのショーのスケールや規模、そしてスター選手たちの魅力によって、世界中のファンを魅了し続けています。日本では、新日本プロレスや全日本プロレスなどが高い評価を受け、特に「技術的なレスリング」に重点を置いたスタイルで愛されています。
また、プロレスは単なるスポーツの枠を超えて、映画、音楽、テレビ番組、さらにはファッションに至るまで、広範囲な文化的影響を及ぼしています。プロレスラーたちは、リング内での戦いを超えて、そのキャラクターやパーソナリティが一般のエンターテイメント業界においても影響力を持っています。例えば、ロック様(ドウェイン・ジョンソン)はプロレスラーから映画スターへと転身し、成功を収めた例として非常に有名です。
結論
プロレスは、その本質的な部分において、単なる格闘技ではなく、エンターテイメントであり、演技的要素が大きいことは否定できません。しかし、プロレスの魅力はその演技だけにとどまらず、レスラーたちがそのパフォーマンスにどれだけ真剣に取り組んでいるか、そしてその身体能力がどれだけ高いかにも関わっています。プロレスを観ることは、単なる戦いの結果を見ることではなく、一つの物語を楽しむことに他なりません。
したがって、プロレスは「本物ではない」という見方が一般的ですが、それはあくまで競技スポーツとしての本物ではなく、エンターテイメントとしての本物であると言えるでしょう。観客がそのショーに感動し、楽しみ、そして心を動かされるのであれば、それこそがプロレスが持つ本当の価値と言えるのです。