マムルーク朝の二時代の違い

中世イスラム世界におけるエジプトのマムルーク朝は、重要な政治的および軍事的な役割を果たしました。マムルークは、奴隷兵士として出発し、最終的に支配者となった軍事集団で、エジプトを支配した時期は二つの大きな時代に分かれます。これらは「海軍マムルーク時代（マムルーク朝海軍）」と「塔のマムルーク時代（マムルーク朝塔）」として知られています。この二つの時代にはいくつかの顕著な違いがあります。

海軍マムルーク（マムルーク朝海軍）

海軍マムルークは1250年から1382年までの期間にわたって支配していました。この時期、エジプトのマムルーク朝は非常に強力で、主要な軍事的および政治的な支配者となり、特に大河ナイル周辺のエジプト地域でその権力を確立しました。海軍マムルークの支配は、バイバルス（Baybars）やカラウーン（Qalawun）などの著名な支配者によって強化されました。

海軍マムルーク朝の特徴的な要素の一つは、その軍事制度における奴隷兵士（マムルーク）の使用です。これらのマムルーク兵士は、さまざまな地方から奴隷として購入され、育てられ、最終的には軍事的な指導者にまで昇進することができました。また、海軍マムルークは、アラビア半島や北アフリカ、さらにはユーラシアの一部と積極的に貿易を行い、経済的な発展を遂げました。

海軍マムルーク朝の最盛期は、特にバイバルスの下で安定し、彼は十字軍との戦争を制し、モンゴル軍を退け、エジプトの安定と繁栄をもたらしました。この時期、エジプトは文化的にも発展し、建築や学問、文学が栄えました。

塔のマムルーク（マムルーク朝塔）

1382年にバルス・アル＝ジャシュシュ（Badr al-Jamali）がマムルーク朝の支配を強化し、塔のマムルーク時代が始まりました。この時期、エジプトの支配者層は、海軍マムルークから塔のマムルークに変わりました。塔のマムルークは、より統治における政治的な力を持つこととなり、またエジプト内外の政治状況も大きく変化しました。

塔のマムルークの特徴的な点は、その組織的な構造と中央集権的な体制です。彼らは、大規模な官僚制と軍事組織を整備し、支配を安定させるために強力な統制を敷きました。タワー型マムルークは、特にその軍事的、政治的指導力において特徴的であり、政治的な闘争と支配体制の強化が続きました。

また、塔のマムルーク時代には、国内外の摩擦や対立が増え、マムルーク自身も経済的な挑戦に直面することになりました。従って、この時期のマムルーク朝は、海軍マムルーク時代のような繁栄を維持するのは困難でしたが、それでも多くの地域で強力な支配を続けました。

両者の違い

1. 支配の起源と構造:

   • 海軍マムルーク: 海軍マムルークは、元々は奴隷として入ってきた兵士たちが成長し、権力を持つようになったグループです。彼らは軍事的に優れた才能を持っており、軍事指導者として支配力を持ちました。

   • 塔のマムルーク: 塔のマムルークは、より政治的な組織化と強化された中央集権体制に基づく支配者層です。この時期には、より管理された官僚制度と行政機構が存在し、支配の構造がより明確に定義されていました。

2. 軍事的なアプローチ:

   • 海軍マムルーク: 海軍マムルークは、特に十字軍との戦闘やモンゴル軍との対決において、その軍事的な能力を証明しました。彼らは戦術的に非常に有能であり、戦争での成功を収めました。

   • 塔のマムルーク: 塔のマムルークは、軍事的な力を保持しつつも、国内の政治的な安定を維持するために多くの努力を払いました。彼らは外交的な手段や内政に注力し、軍事力だけではなく、政治的な手腕を発揮しました。

3. 経済と文化:

   • 海軍マムルーク: 海軍マムルーク時代は、貿易と商業の発展が特徴であり、エジプトは地域的に重要な商業拠点となりました。文化面でも繁栄し、多くのモスクや学問の機関が建設されました。

   • 塔のマムルーク: 塔のマムルーク時代は、経済的には海軍マムルーク時代ほどの活力はありませんでしたが、それでもエジプトは商業的な拠点として重要でした。文化的には依然として影響力を持ち、特に建築において新たな時代を築きました。

結論

海軍マムルーク時代と塔のマムルーク時代は、異なる政治的、軍事的、経済的背景に基づく二つの時代であり、エジプトの歴史においてそれぞれ独自の役割を果たしました。海軍マムルークはその軍事的な強さと戦争での成功で知られ、塔のマムルークは政治的な組織化と安定に重点を置いた支配者層でした。それぞれの時代は、エジプトを支配したマムルーク朝の多様な特性を示しており、その影響は後のイスラム世界の歴史に大きな影響を与えました。