マルタの公式言語は、マルタ語(Maltese)と英語です。この二つの言語は、マルタ共和国の行政、教育、司法、商業活動などにおいて公式に使用されています。マルタ語は、マルタ島の独自の言語であり、英語はその歴史的背景から使用されています。以下では、マルタ語と英語がどのように使われているのか、そしてその歴史的背景について詳しく説明します。
マルタ語(Maltese)
マルタ語は、セム語系の言語であり、アラビア語に起源を持ちます。特に、9世紀から12世紀にかけてアラブ人による支配が続いた時期に、マルタ語はアラビア語の影響を強く受けました。しかし、アラビア語だけでなく、イタリア語(特にシチリア方言)や、後の時代には英語やフランス語の影響も受け、今日のマルタ語が形成されています。

マルタ語は、主にラテンアルファベットを使用して書かれ、右から左ではなく、左から右に書かれます。この点はアラビア語とは異なります。現代のマルタ語は、語彙や文法においてアラビア語の影響を残しつつも、ラテン語やイタリア語の影響も見られます。例えば、日常的に使われる多くの単語は、イタリア語や英語に由来しています。
また、マルタ語は「セム語系の言語」としては非常に珍しい特徴を持っています。これは、アラビア語のように動詞が文の中心になる構造を保ちながら、ラテン語やイタリア語のように、名詞が動詞の後に来るという構造も取り入れているからです。この混合的な特徴がマルタ語をユニークな言語にしています。
英語
英語は、マルタの第二の公式言語として、特に政府の活動や国際的な取引、ビジネスの場で広く使用されています。マルタは長い間イギリスの植民地だったため、英語はその教育体系や行政制度の中で重要な役割を果たしてきました。1964年にマルタが独立した後も、英語は依然として重要な役割を担っており、特にビジネスや教育、科学技術、法的文書などで広く使用されています。
英語の使用は、都市部や観光地などで特に顕著で、観光客とのコミュニケーションにおいても、英語が頻繁に用いられています。現代のマルタでは、ほとんどの市民がマルタ語と英語の両方を流暢に使い分けることができ、日常会話ではこの二つの言語が頻繁に切り替えられることがあります。
言語教育
マルタでは、マルタ語と英語の両方が学校で教えられています。小学校ではマルタ語が主に教科書として使用され、英語は第二言語として学びます。中学校や高等学校では、英語がさらに強調され、大学レベルでも英語が広く使われています。このため、マルタの若い世代は、二カ国語を使いこなすことが一般的です。
言語の保護と促進
マルタ語は、1991年に「マルタ語法」によって正式に保護され、推進されています。この法律により、マルタ語は行政、教育、司法などで使用することが義務づけられ、マルタ語を話すことが重要であるという文化的価値が強調されています。政府は、マルタ語の発展を促進するためのさまざまな政策を実施しており、マルタ語の文献やメディアが増加しています。
また、マルタ語は2004年に欧州連合(EU)の公用語としても認定されました。これにより、マルタ語はEUの公式文書や議会で使用される言語の一つとなり、国際的にもその地位が高まりました。
結論
マルタの公式言語であるマルタ語と英語は、国の文化、歴史、社会に深く根ざしています。マルタ語はそのユニークな言語的背景を持ちながら、英語は国際的なコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしています。現代のマルタでは、両方の言語が共存し、二カ国語の能力が日常生活において非常に価値のあるスキルとされています。このような言語環境は、マルタが持つ多文化的な特性を象徴しており、訪れる人々にも独特な魅力を与えています。