各国の経済と政治

ヨーロッパ超高層ビルTOP10

ヨーロッパは長らく古典的な建築美で知られてきた大陸であり、ローマ遺跡、ゴシック様式の教会、バロック建築などがその象徴である。しかし21世紀に入り、都市開発と経済成長に伴い、超高層ビルの建設が急増しつつある。かつては超高層建築がアジアや北米に集中していたが、近年のヨーロッパでは都市の再開発、持続可能なエネルギー設計、スマートシティ構想と結びついて新たな高層建築が次々と姿を現している。以下に、現時点(2025年)でのヨーロッパにおける最も高いビルを、技術的な特徴、建築様式、用途、環境対策などを含めて包括的に解説する。


1. ラフタ・センター(Lakhta Center)

高さ:462.5メートル

場所:ロシア・サンクトペテルブルク

竣工年:2019年

ラフタ・センターはヨーロッパで最も高い建物であり、ロシアのガス企業ガスプロムの本社が入っている。この建物はねじれた形状を持ち、エネルギー効率と風荷重耐性を両立する設計がなされている。LEEDプラチナ認証を取得しており、二重外装構造や高効率空調システムが導入されている。周囲には湖や緑地が整備され、都市と自然の共生も図られている。


2. ネボ・タワー(Vostok Tower, Moskow-City)

高さ:449.8メートル

場所:ロシア・モスクワ

竣工年:2022年

ネボ・タワーは「ワン・コンプレックス(One Tower)」としても知られ、住宅、商業、オフィス、展望施設が融合する複合超高層ビルである。ロシアの首都モスクワの中心業務地区「モスクワ・シティ」に位置し、地震対策と極寒気候への対策が万全に施されている。地下には大型駐車場とメトロ直結施設も整備されている。


3. フェデレーション・タワー(Federation Tower – East Tower)

高さ:373.7メートル

場所:ロシア・モスクワ

竣工年:2017年

このタワーは「イースト・タワー」とも呼ばれ、フェデレーション・コンプレックスの一部である。二つのタワーから成り、「ウエスト・タワー」との構造的な調和が取られている。外壁には高反射性のガラスが使用され、光熱費の削減に寄与している。さらに、屋上には高層用の風力タービンが設置されている点も特筆すべきである。


4. オーケー・オフタ・センター(OKO Tower – South Tower)

高さ:354.1メートル

場所:ロシア・モスクワ

竣工年:2015年

OKOタワーはモスクワ・シティ内で最も洗練されたデザインを誇り、国際的な建築事務所が設計を担当している。主にオフィスとレジデンシャル用途で使用されており、天井の高いラグジュアリー住居と商業施設が融合している。太陽光発電パネルや自然換気システムなど、環境負荷低減に配慮した要素も多く盛り込まれている。


5. ユーロパーク・タワー(Neva Towers – Tower 1)

高さ:345メートル

場所:ロシア・モスクワ

竣工年:2020年

ネバ・タワーズは2棟構成の建築であり、タワー1は居住用高層マンションとして機能している。共有スペースにはプール、ジム、コワーキングスペースが完備され、デジタルスマートホーム機能も標準装備されている。特に若い富裕層の間で高い人気を誇る。


6. ナベレジナヤ・タワーC(Naberezhnaya Tower C)

高さ:268.4メートル

場所:ロシア・モスクワ

竣工年:2007年

ロシア初の国際スタンダードを満たした超高層ビルの一つであり、モスクワのビジネス街における先駆的存在。鋼鉄とガラスを多用したファサードが特徴的で、視覚的インパクトが強い。竣工当初はロシア最高峰だったことから、象徴的存在とされている。


7. トライアンフ・パレス(Triumph Palace)

高さ:264.1メートル

場所:ロシア・モスクワ

竣工年:2006年

このビルは「モダンなスターリン建築」とも称され、古典的デザインと近代高層技術を融合させた独特の建築である。居住用として利用され、上層階は高級ペントハウスとして販売されている。建物全体が歴史的な雰囲気を持ちつつ、最新の建築工学を駆使している。


8. シェル・センター(The Shard)

高さ:310メートル

場所:イギリス・ロンドン

竣工年:2012年

ヨーロッパ西部で最も高い建物であり、ロンドンのランドマークである。イタリア人建築家レンゾ・ピアノによって設計され、「ガラスの破片(Shard)」の名にふさわしく鋭角的なデザインが特徴的。ホテル、レストラン、オフィス、住宅、展望台が統合され、観光名所としても知られている。


9. ヴァーニス・タワー(Varso Tower)

高さ:310メートル(尖塔含む)

場所:ポーランド・ワルシャワ

竣工年:2022年

中東欧地域で最も高いビルであり、ポーランドの経済発展の象徴とされる。建物の構造設計は持続可能性を意識し、BREEAM認証を取得済み。ワルシャワ中央駅と直結しており、交通利便性の面でも優れている。


10. ウニコ・トレード・センター(UniCredit Tower)

高さ:231メートル(尖塔含む)

場所:イタリア・ミラノ

竣工年:2012年

イタリアの経済都市ミラノに位置するこの建物は、モダン建築とサステナビリティの融合を象徴するプロジェクトである。尖塔を含めて231メートルの高さを誇り、LEED認証取得済み。太陽光発電、再生水利用、地下鉄へのアクセスなど、都市と建築の調和を意識した設計となっている。


総括

ヨーロッパの高層建築は単に「高さ」を競うだけでなく、環境配慮、都市再生、歴史との共存、文化的象徴性といった多面的な要素を内包している点が注目に値する。以下の表に、これまで紹介した10の建物を比較する:

ランキング 建物名 高さ(メートル) 国・都市 竣工年 用途
1 ラフタ・センター 462.5 ロシア・サンクトペテルブルク 2019 オフィス、展望
2 ネボ・タワー 449.8 ロシア・モスクワ 2022 複合用途
3 フェデレーション・タワー 373.7 ロシア・モスクワ 2017 オフィス
4 OKOタワー(南塔) 354.1 ロシア・モスクワ 2015 住宅、商業
5 ネバ・タワーズ(タワー1) 345 ロシア・モスクワ 2020 居住用
6 ナベレジナヤ・タワーC 268.4 ロシア・モスクワ 2007 オフィス
7 トライアンフ・パレス 264.1 ロシア・モスクワ 2006 居住用
8 シャード(ロンドン) 310 イギリス・ロンドン 2012 複合用途
9 ヴァーニス・タワー 310 ポーランド・ワルシャワ 2022 複合用途
10 ウニクレジット・タワー 231 イタリア・ミラノ 2012 オフィス

参考文献

  • Council on Tall Buildings and Urban Habitat (CTBUH) データベース

  • “Skyscraper Center”(https://www.skyscrapercenter.com/)

  • 各国建築協会発表資料

  • 各建物の公式サイトおよび竣工報道

ヨーロッパの高層建築はこれからも増加し続けることが予測されており、今後も環境技術、都市再生、建築美学を融合させた持続可能な超高層ビルが注目されるであろう。建物の高さは単なる数値以上の意味を持ち、都市の文化的、経済的、技術的な象徴として君臨するのである。

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