1. はじめに
ハム・ラウマティズミア(Rheumatic Fever)、またはリウマチ熱は、主に子供や若年成人に影響を及ぼす病気で、ストレプトコッカス菌(A群β溶血性連鎖球菌)によって引き起こされる急性の全身的な免疫反応です。この疾患は、喉の感染症(特に扁桃腺炎)によって誘発されることが多く、感染後数週間以内に発症することが一般的です。リウマチ熱は、適切に治療されない場合に、心臓、関節、皮膚、神経などに深刻な影響を及ぼし、最終的には慢性的な障害を引き起こす可能性があります。
本記事では、リウマチ熱の発症メカニズム、症状、診断方法、治療法、予防策について、包括的に解説します。また、日本におけるリウマチ熱の現状や対策についても触れます。

2. リウマチ熱の原因
リウマチ熱は、A群β溶血性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)による急性咽頭炎、特に扁桃腺炎や咽頭炎が主な引き金となります。この細菌が引き起こす感染症に続いて、免疫系が異常に反応し、自己免疫的な炎症を引き起こします。リウマチ熱は、細菌自体による直接的な感染症ではなく、免疫系の過剰反応によって発症します。
免疫系は、A群β溶血性連鎖球菌の抗原と似た構造を持つ人体の組織に誤って攻撃を仕掛けることがあります。この異常な免疫反応によって、関節や心臓、皮膚、神経などに炎症が生じます。これがリウマチ熱の症状となり、進行すると慢性的な障害が生じることもあります。
3. リウマチ熱の症状
リウマチ熱の症状は、通常、感染後2~4週間程度で現れます。症状は多岐にわたりますが、以下のようなものが一般的です。
3.1 関節の症状(リウマチ性関節炎)
リウマチ熱の最も特徴的な症状の一つは関節炎です。関節炎は、特に膝、肘、手首、足首など、大きな関節に発生することが多いです。関節は赤く腫れ、強い痛みを伴うことがあります。この関節炎は、移動性であることが特徴で、最初に痛みを感じた関節がしばらくすると別の関節に移動することがあります。
3.2 心臓の症状(リウマチ性心炎)
リウマチ熱のもう一つの重大な合併症は心炎です。心炎は、心臓の内膜や弁に炎症を引き起こし、最終的に心臓に深刻な損傷を与える可能性があります。リウマチ性心炎は、リウマチ熱の発症から数ヶ月から数年後に現れることもあります。症状としては、息切れ、胸痛、心拍数の異常(頻脈や不整脈)が現れます。
3.3 神経の症状(舞踏病)
神経系における症状としては、舞踏病(Sydenham’s chorea)があります。舞踏病は、手足や顔の不随意運動が特徴で、特に顔や四肢の細かい動きが止められないことがあります。これは神経の炎症によって引き起こされ、通常はリウマチ熱発症後数ヶ月以内に現れることが多いです。
3.4 皮膚の症状
リウマチ熱の皮膚症状として、紅斑(erythema marginatum)があります。これは、赤くてかゆみのない斑点が体の特定の部分に現れるもので、特徴的な輪状の形状をしています。発疹は通常、手足の上部や胸部に見られることが多いです。
4. リウマチ熱の診断
リウマチ熱の診断は、臨床症状と検査結果に基づいて行われます。診断基準としては、以下の項目が重要です。
4.1 ジョーンズ基準
ジョーンズ基準は、リウマチ熱を診断するための標準的な基準であり、次のような症状やサインが複数組み合わさった場合に診断が確定します:
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関節炎
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リウマチ性心炎
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舞踏病
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紅斑
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皮下結節
ジョーンズ基準では、A群β溶血性連鎖球菌による咽頭感染が証明されていることが前提です。
4.2 血液検査
血液検査では、A群β溶血性連鎖球菌に対する抗体(抗ストレプトリジンO抗体や抗DNAアーゼB抗体)が検出されることがあります。これらは、最近のストレプトコッカス感染の証拠となり、リウマチ熱の診断に役立ちます。
4.3 心臓の評価
リウマチ性心炎が疑われる場合、心電図(ECG)や心臓超音波検査(エコー)を使用して、心臓の状態を詳しく評価します。
5. リウマチ熱の治療
リウマチ熱の治療には、主に以下のアプローチが取られます:
5.1 抗生物質
リウマチ熱の予防と治療において、最も重要なのは抗生物質の投与です。リウマチ熱を引き起こす原因であるA群β溶血性連鎖球菌を排除するために、ペニシリンやアモキシシリンなどの抗生物質が使用されます。早期の抗生物質治療によって、リウマチ熱の発症を防ぐことができます。
5.2 抗炎症薬
リウマチ熱に伴う関節炎や炎症を抑えるためには、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や、場合によってはコルチコステロイドが使用されることがあります。これにより、関節の腫れや痛みを軽減することができます。
5.3 心炎の治療
リウマチ性心炎が発症した場合には、心臓の炎症を抑えるために、強力な抗炎症治療が必要になることがあります。また、心臓に重大な障害が生じた場合には、外科的手術が検討されることもあります。
6. リウマチ熱の予防
リウマチ熱の予防は、感染症の早期発見と適切な治療によって可能です。特に、A群β溶血性連鎖球菌による喉の感染症が原因となるため、以下の予防策が推奨されます。
6.1 喉の感染症の早期治療
A群β溶血性連鎖球菌による喉の感染が確認された場合には、抗生物質の投与が行われます。これにより、リウマチ熱の発症を防ぐことができます。
6.2 定期的な抗生物質の予防投与
リウマチ熱の既往がある人や、リウマチ熱のリスクが高い地域に住んでいる人には、予防的な抗生物質の投与が推奨されることがあります。これにより、再発を防ぐことができます。
7. 日本におけるリウマチ熱の現状
日本では、リウマチ熱の発症率は