ループス(全身性エリテマトーデス)における検査と診断
全身性エリテマトーデス(SLE、通称ループス)は、自己免疫疾患であり、免疫系が自分の細胞や組織を攻撃してしまう病気です。これにより、皮膚、関節、腎臓、心臓、肺など、さまざまな臓器に炎症を引き起こすことがあります。ループスは非常に多様な症状を示すため、診断は困難であり、いくつかの検査が必要とされます。以下では、ループスの診断において重要な検査について詳述します。

1. 抗核抗体(ANA)検査
抗核抗体(ANA)は、SLEの診断で最も基本的で重要な検査です。ANAは、自己免疫反応によって体内の細胞核を攻撃する抗体の一種です。ループスの患者の約95%がANA陽性を示しますが、ANA陽性であるからといって必ずしもループスであるわけではありません。ANAは他の疾患、例えば慢性疲労症候群や他の自己免疫疾患でも陽性になることがあるため、ANA検査単独での診断は不十分です。
2. 抗二本鎖DNA抗体(dsDNA抗体)検査
抗二本鎖DNA抗体は、ループスの特異的な抗体であり、SLE患者に特有のものです。この抗体は、DNAに対する免疫反応により生成され、特に腎臓に影響を与えるループス腎炎と関連しています。dsDNA抗体が高値を示す場合、疾患活動性が高いことを示唆し、治療方針に影響を与えることがあります。
3. 抗Sm抗体検査
抗Sm抗体は、SLEに特異的な抗体であり、ループスの診断において重要な役割を果たします。この抗体は、核内のSm抗原に対する免疫反応によって生成され、SLE患者の約30%に見られます。抗Sm抗体が陽性の場合、SLEの確定診断において非常に有用です。
4. 抗リン脂質抗体(APA)検査
抗リン脂質抗体は、血液凝固の異常を引き起こすことがあり、ループス患者においてしばしば高値を示します。これらの抗体は、血栓形成を助長するため、抗リン脂質症候群(APS)のリスクを高めます。APSは、妊娠中の流産や血栓症と関連しており、ループス患者の治療において重要な役割を果たします。
5. 補体検査
補体は、免疫系の一部であり、感染に対する防御反応や炎症反応に関与します。SLEでは、補体のレベルが低下することがよくあります。特に、C3およびC4補体の低下は、疾患活動性の指標として使用されることがあります。補体低下は、免疫複合体が細胞に沈着して炎症を引き起こしていることを示唆しており、疾患の活動を反映する重要な指標となります。
6. 尿検査
SLEは腎臓に多大な影響を及ぼすことがあり、ループス腎炎は最も重要な合併症の一つです。尿検査では、尿中のタンパク質や血液、白血球、尿沈渣などを調べ、腎機能の状態を把握します。特に、尿中に異常なタンパク質(尿蛋白)が現れることがあり、これは腎機能の低下を示唆します。
7. 血液検査
ループス患者の血液検査では、貧血、白血球減少、血小板減少などが見られることがあります。これらは、疾患活動性が高いことや免疫系の異常を示す場合があります。特に、赤血球、白血球、血小板の数が低下することで、免疫系の過剰反応や細胞破壊が示唆されます。
8. 画像検査
ループス患者は、関節や内臓に炎症を引き起こすことが多いため、画像検査も重要です。関節炎の評価にはX線検査が行われ、腎臓や心臓、肺の影響を調べるために超音波やCTスキャン、MRIなどが使用されます。これらの検査により、臓器の損傷の程度や病変の広がりを把握することができます。
9. 皮膚生検
ループスは皮膚にも影響を及ぼすことがあり、特に蝶形紅斑などの皮膚症状が典型的です。皮膚生検は、皮膚の病変部位を採取して顕微鏡で観察することで、診断を確定するために役立ちます。この検査により、皮膚の炎症や免疫複合体の沈着を確認することができます。
結論
ループスの診断は、単一の検査結果だけではなく、臨床症状や複数の検査結果を総合的に判断することが必要です。抗体検査や補体検査、尿検査、血液検査などを組み合わせて行うことで、疾患の活動性や臓器の影響を評価し、適切な治療を選択するための重要な情報を提供します。患者の状態に応じて、検査を定期的に行うことが、病状の管理にとって欠かせません。