不整脈(ふせいみゃく)は、心臓の拍動が通常のリズムから外れた状態を指します。心臓は通常、一定のリズムで拍動していますが、不整脈が発生すると、拍動が速すぎたり遅すぎたり、あるいは不規則になったりします。この現象は、心臓の電気的な活動の異常に起因することが多く、軽度なものから生命に危険を及ぼすものまでさまざまな種類があります。不整脈の原因には、心臓そのものに問題がある場合と、その他の体調不良が影響している場合があります。以下に、不整脈の原因や症状、治療法について詳しく解説します。
1. 不整脈の種類と原因
不整脈は、心臓の電気信号が正常に伝達されないことによって発生します。これにはさまざまなタイプがありますが、最も一般的なものには以下が含まれます。

1.1 洞不整脈
心臓のペースメーカーである洞房結節(どうぼうけつせつ)から出る信号が不規則になることによって発生します。通常、洞不整脈は軽度で無害な場合が多いですが、ストレスや運動時に一時的に発生することもあります。
1.2 心房細動(しんぼうさいどう)
心房が非常に速く不規則に収縮することで起こります。この状態では、心房から心室への電気信号が乱れ、心室も不規則に収縮します。心房細動は、血栓形成や脳梗塞などのリスクを高める可能性があり、治療が必要です。
1.3 心室性不整脈
心室から発生する異常な電気信号が原因で、心室が不規則に収縮します。心室性不整脈は、特に危険なものであり、急性の心停止を引き起こすことがあります。このタイプの不整脈は、しばしば心筋梗塞や心不全の後に発生します。
1.4 徐脈(じょみゃく)
心拍数が異常に遅くなる状態です。通常、成人の安静時の心拍数は60~100回/分ですが、徐脈ではこれが60回未満になります。徐脈は心臓の伝導系に障害がある場合に起こり、重症の場合にはペースメーカーが必要となることもあります。
2. 不整脈の原因
不整脈はさまざまな原因で発生することがありますが、主な原因は以下の通りです。
2.1 心臓疾患
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冠動脈疾患(心臓の血管に詰まりができる病気)や心筋梗塞(心臓の一部が壊死する)など、心臓そのものの問題が不整脈を引き起こすことがあります。
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心不全(心臓の機能が低下して十分な血液を送り出せなくなる状態)も、不整脈の原因の一つです。
2.2 高血圧
長期間にわたる高血圧は、心臓に負担をかけ、心臓の電気的な活動に影響を与えることがあります。この影響が不整脈を引き起こすことがあります。
2.3 電解質異常
体内のナトリウム、カリウム、カルシウムなどの電解質のバランスが崩れると、心臓のリズムに異常が生じることがあります。これは特に腎臓疾患や脱水症状、過度なアルコール摂取などに関連しています。
2.4 ストレスや不安
精神的なストレスや不安も不整脈を引き起こす原因となることがあります。特に交感神経が活発になると、心拍数が速くなり、不整脈が発生しやすくなります。
2.5 薬物やカフェイン、アルコール
一部の薬物やカフェイン、アルコールの摂取が不整脈を引き起こすことがあります。特に過度な摂取が原因となります。
2.6 その他の疾患
糖尿病、甲状腺機能亢進症(甲状腺のホルモンが過剰に分泌される病気)などの病気も不整脈の原因になることがあります。
3. 不整脈の症状
不整脈の症状は、その種類や重症度によって異なりますが、一般的な症状には以下のようなものがあります。
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動悸(どうき):心拍が速くなったり、不規則になったりすることで、胸の中で心臓がドキドキと感じることがあります。
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息切れ:心臓が効率的に血液を送り出せなくなることで、呼吸が苦しくなることがあります。
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めまい:心臓のリズムが乱れることで、血液の循環が不十分となり、めまいや立ちくらみが発生することがあります。
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失神:心臓のリズムが極端に遅くなる、または不規則になることで、脳への血流が不足し、失神することがあります。
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胸痛:心臓に負担がかかることで、胸の痛みを感じることがあります。
4. 不整脈の診断方法
不整脈の診断には、いくつかの方法があります。
4.1 心電図(ECGまたはEKG)
心電図は、心臓の電気的な活動を記録する検査です。これにより、心臓のリズムや異常をリアルタイムで確認することができます。
4.2 24時間ホルター心電図
ホルター心電図は、24時間またはそれ以上の時間、心電図を連続的に記録する装置を体に装着する方法です。これにより、日常生活の中で発生する不整脈を記録することができます。
4.3 心エコー検査
心臓の形態や機能を超音波で調べる検査です。不整脈の原因となる心臓の異常を発見するために使用されます。
4.4 血液検査
電解質の異常やホルモンの異常を確認するために、血液検査が行われることもあります。
5. 不整脈の治療方法
不整脈の治療法は、原因や症状の重症度に応じて異なります。主な治療法には以下が含まれます。
5.1 薬物療法
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抗不整脈薬:心臓のリズムを正常に戻すために使用される薬です。例えば、ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬が用いられることがあります。
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血液凝固薬:心房細動などで血栓のリスクが高い場合、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)が処方されることがあります。
5.2 ペースメーカーの挿入
徐脈や心室性不整脈が原因で心臓が正常に機能しない場合、ペースメーカーが使用されることがあります。ペースメーカーは、心臓のリズムを調整するデバイスで、胸部に埋め込まれます。
5.3 カテーテルアブレーション
心房細動などの特定の不整脈に対して、カテーテルを用いて異常な電気信号を焼灼する治療法です。これにより、正常なリズムを取り戻すことができます。
5.4 手術
重症の場合、心臓の構造的な異常を修正するために手術が行われることがあります。特に心臓弁膜症や冠動脈疾患が原因の場合に適用され