世界の大気汚染は、急速に進行する気候変動と公衆衛生への深刻な影響を引き起こしています。特に、発展途上国では急速な都市化、産業化、交通の増加などが相まって、PM2.5(微小粒子状物質)濃度がWHO(世界保健機関)の安全基準を大幅に上回る状況が続いています。以下に、2024年のデータを基に、世界で最も大気汚染が深刻な10か国を紹介します。
1. チャド(Chad)
チャドは2024年において、PM2.5の年間平均濃度が91.8 µg/m³に達し、WHOの基準値(5 µg/m³)を約18倍上回っています。主な汚染源は、木炭の燃焼、農業廃棄物の焼却、交通機関からの排出ガスなどです。これらの要因が重なり、首都ンジャメナをはじめとする都市部では、空気の質が非常に悪化しています。

2. バングラデシュ(Bangladesh)
バングラデシュは、PM2.5の年間平均濃度が78.0 µg/m³で、WHO基準の約16倍に相当します。特に首都ダッカでは、交通渋滞や工場排煙、バイオマスの燃焼などが原因で、空気の質が非常に悪化しています。これにより、呼吸器系疾患や心血管疾患の発症率が高まっています。
3. パキスタン(Pakistan)
パキスタンのPM2.5年間平均濃度は73.7 µg/m³で、WHO基準の約15倍です。農作物の焼却、工業排出、交通渋滞などが主な汚染源であり、特に冬季にはスモッグが発生し、都市部での視界不良や健康被害が報告されています。
4. コンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo)
コンゴ民主共和国のPM2.5年間平均濃度は58.2 µg/m³で、WHO基準の約12倍に相当します。森林伐採やバイオマスの燃焼が主な汚染源であり、特に農村部では空気の質が悪化しています。
5. インド(India)
インドのPM2.5年間平均濃度は54.4 µg/m³で、WHO基準の約11倍です。都市部では交通渋滞や工業排出、農作物の焼却などが原因で、空気の質が非常に悪化しています。特にデリーなどの大都市では、スモッグが常態化しており、健康への影響が懸念されています。
6. タジキスタン(Tajikistan)
タジキスタンのPM2.5年間平均濃度は46.3 µg/m³で、WHO基準の約9倍に相当します。バイオマスの燃焼や工業排出が主な汚染源であり、特に冬季には暖房のための燃料使用が増加し、空気の質が悪化します。
7. ブルキナファソ(Burkina Faso)
ブルキナファソのPM2.5年間平均濃度は46.6 µg/m³で、WHO基準の約9倍です。農業廃棄物の焼却やバイオマスの燃焼が主な汚染源であり、特に乾季には砂嵐が発生し、空気の質が悪化します。
8. イラク(Iraq)
イラクのPM2.5年間平均濃度は43.8 µg/m³で、WHO基準の約9倍に相当します。戦争による環境破壊や石油の燃焼が主な汚染源であり、特に都市部では空気の質が非常に悪化しています。
9. アラブ首長国連邦(United Arab Emirates)
アラブ首長国連邦のPM2.5年間平均濃度は43.0 µg/m³で、WHO基準の約9倍です。建設活動や交通渋滞、工業排出が主な汚染源であり、特にドバイなどの都市部では空気の質が悪化しています。
10. ネパール(Nepal)
ネパールのPM2.5年間平均濃度は42.4 µg/m³で、WHO基準の約8倍に相当します。農作物の焼却やバイオマスの燃焼、交通渋滞が主な汚染源であり、特にカトマンズなどの都市部では空気の質が非常に悪化しています。
結論
これらの国々では、急速な都市化や産業化、交通の増加などが相まって、大気汚染が深刻な問題となっています。PM2.5濃度が高い地域では、呼吸器系疾患や心血管疾患の発症率が高まっており、住民の健康への影響が懸念されています。各国は、クリーンエネルギーの導入や公共交通機関の整備、バイオマスの効率的な利用など、さまざまな対策を講じる必要があります。国際社会としても、技術支援や資金援助を通じて、これらの国々の大気汚染対策を支援していくことが求められます。