各国の経済と政治

世界の砂糖生産トップ10

世界の食料供給と産業経済において、砂糖は極めて重要な商品であり続けている。砂糖は主にサトウキビとテンサイ(ビート)から生産され、飲料、菓子、調味料、医薬品、エタノール燃料など、さまざまな分野で利用されている。このような広範な用途により、砂糖の生産量は国の農業力と輸出競争力を示す指標ともなっている。以下では、最新の国際機関(FAOおよびUSDAなど)の統計に基づき、世界でもっとも砂糖を生産している上位10か国について詳しく解説する。


1. ブラジル

年間生産量(砂糖換算):約3,800万トン

主な原料:サトウキビ

ブラジルは世界最大の砂糖生産国であり、全世界の生産量の約20〜25%を占めている。ブラジル南東部(サンパウロ州など)を中心に大規模なサトウキビ農園が広がり、効率的な機械化と気候条件に恵まれている。ブラジルでは砂糖生産に加えてエタノール燃料の生産も盛んであり、同じサトウキビからバイオエタノールと砂糖を併産する高度な産業構造が確立されている。


2. インド

年間生産量(砂糖換算):約3,300万トン

主な原料:サトウキビ

インドは農業大国として、国内消費が非常に多いことでも知られる。生産地はウッタル・プラデーシュ州やマハーラーシュトラ州が中心で、労働集約型の農業が主流となっている。気候の変動や水資源の管理が生産量に大きく影響を与えるため、年によって変動があるが、それでも一貫して世界2位の生産国である。


3. タイ

年間生産量(砂糖換算):約1,000万トン

主な原料:サトウキビ

タイは世界有数の砂糖輸出国でもあり、特にアジアや中東諸国への輸出が盛んである。砂糖産業は政府の支援を受け、農業従事者の所得源としても非常に重要な位置を占めている。国内の精製技術やインフラの整備も進んでおり、安定的な品質の製品を国際市場に供給している。


4. 中国

年間生産量(砂糖換算):約950万トン

主な原料:サトウキビおよびビート

中国では広西チワン族自治区や雲南省でサトウキビの栽培が行われ、北部の一部ではテンサイも生産されている。膨大な国内需要に対応するため、自国生産に加え海外からの輸入も行われているが、近年では自給率の向上が国家的課題として位置づけられている。


5. パキスタン

年間生産量(砂糖換算):約700万トン

主な原料:サトウキビ

パキスタンではパンジャーブ州とシンド州でのサトウキビ栽培が盛んで、農業従事者の雇用の多くをこの分野が占めている。気候変動や水資源の不足が懸念されるものの、政府主導の灌漑プロジェクトやサトウキビ価格の安定化政策により、生産が維持されている。


6. メキシコ

年間生産量(砂糖換算):約600万トン

主な原料:サトウキビ

メキシコでは砂糖生産が農業GDPにおいて重要な割合を占めており、南部および中央部の高温多湿な地域でサトウキビが栽培されている。また、国内消費の多さとアメリカ合衆国への輸出がこの国の砂糖産業を支えている。砂糖価格の調整や労働条件の改善が近年の重要課題となっている。


7. ロシア

年間生産量(砂糖換算):約550万トン

主な原料:テンサイ(ビート)

ロシアは寒冷な気候に適したテンサイ栽培を行っており、クラスノダール地方や中央ロシアでの栽培が主である。旧ソ連時代からの農業インフラを活用し、機械化・効率化が進められてきた。自国の消費需要をほぼ自給できる体制を整えている。


8. アメリカ合衆国

年間生産量(砂糖換算):約500万トン

主な原料:サトウキビおよびテンサイ

アメリカではフロリダ州、ルイジアナ州でサトウキビ、ミネソタ州やノースダコタ州など北部でテンサイが生産されている。高度に機械化された農業システムと科学的な栽培技術により、安定的な生産と高品質な砂糖の供給が可能である。国内での甘味料としてはコーンシロップも多く使われているが、砂糖の存在感は依然として大きい。


9. フランス

年間生産量(砂糖換算):約450万トン

主な原料:テンサイ(ビート)

フランスはヨーロッパ最大の砂糖生産国であり、そのほとんどをテンサイから生産している。北部の農業地域では、持続可能な農業技術と高収量の品種導入により、欧州連合内での競争力を維持している。EUの農業政策の影響を受けながらも、砂糖産業は安定して発展している。


10. ドイツ

年間生産量(砂糖換算):約400万トン

主な原料:テンサイ(ビート)

ドイツもまた、ビート糖の主要生産国である。バイエルン州やニーダーザクセン州などでテンサイの栽培が行われており、収穫後の加工は高度な自動化技術を活用して行われる。EU内での消費と輸出の両方に対応できる体制が整っている。


世界の砂糖生産ランキング(参考表)

順位 国名 年間生産量(トン) 主な原料
1 ブラジル 約38,000,000 サトウキビ
2 インド 約33,000,000 サトウキビ
3 タイ 約10,000,000 サトウキビ
4 中国 約9,500,000 サトウキビ・ビート
5 パキスタン 約7,000,000 サトウキビ
6 メキシコ 約6,000,000 サトウキビ
7 ロシア 約5,500,000 ビート
8 アメリカ合衆国 約5,000,000 サトウキビ・ビート
9 フランス 約4,500,000 ビート
10 ドイツ 約4,000,000 ビート

おわりに

砂糖の生産は単なる農業活動にとどまらず、各国の経済、雇用、貿易政策、さらには食料安全保障とも密接に関連している。特に気候変動、労働力の確保、水資源の管理といった課題は今後の砂糖産業にとって決定的な影響を与えると考えられている。持続可能性と技術革新を両立させながら、今後どの国が生産と供給におけるリーダーシップを維持できるかが注目される。


参考文献

  1. Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO)

  2. United States Department of Agriculture (USDA)

  3. International Sugar Organization (ISO)

  4. Statista: Global Sugar Production Data

  5. World Bank Agricultural Reports

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