各国の経済と政治

世界最古の憲法一覧

世界最古の10の憲法:その歴史的背景と継続する影響

憲法は、国家の基本的な法秩序を定める根本規範である。それは政府の構造、国民の権利、市民と国家の関係を定義し、国の法的枠組みを築くものだ。現代において、多くの国が憲法を持っているが、その中には数百年にわたり生き続けているものも存在する。本稿では、世界で最も古いとされる10の憲法を取り上げ、それぞれの起源、内容、そして現代における意義について詳しく論じていく。


アメリカ合衆国憲法(1787年)

**成立年:**1787年

**施行年:**1789年

**現在も有効:**はい

世界で最も長く存続している成文憲法として広く知られているのが、アメリカ合衆国憲法である。1787年にフィラデルフィアで開催された憲法制定会議において制定され、1789年に正式に施行された。三権分立、連邦制度、権利章典(最初の10の修正条項)など、現代の多くの民主国家の憲法に影響を与えた。以来、27回の修正を経ながらもその基本構造は保たれ続けている。


ノルウェー憲法(1814年)

**成立年:**1814年

**現在も有効:**はい

ノルウェーの憲法は、アメリカに次いで世界で2番目に古い成文憲法である。1814年、デンマーク=ノルウェー連合が崩壊した際、ノルウェーの独立を目指して制定された。エイツヴォルにおいて草案が作成され、リベラルな思想と民主主義の原則が取り入れられた。現在でも改正を重ねつつ活用されている。


オランダ憲法(1815年)

**成立年:**1815年(前身は1798年)

**現在も有効:**はい(改正を経た現行憲法は1983年版)

オランダの憲法は、1798年にバタヴィア共和国時代に初めて採択されたが、1815年の王国成立に伴って大きく改定された。その後、多数の改正を経て1983年に現行憲法に至っているが、憲法の起源は19世紀初頭にまで遡る。王政と議会制民主主義を融合させた体制が特徴である。


ベルギー憲法(1831年)

**成立年:**1831年

**現在も有効:**はい

ベルギー憲法は、1830年の独立後すぐに制定された。自由主義と立憲君主制を基盤に構築されたこの憲法は、当時としては非常に革新的で、他国の憲法制定にも影響を与えた。人権の保障、言論・宗教の自由などが明記されており、以降も多数の改正を経て現在も活用されている。


ルクセンブルク憲法(1868年)

**成立年:**1868年

**現在も有効:**はい

ルクセンブルクの憲法は、フランスやベルギーの影響を受けて制定された。立憲君主制と議会制民主主義を融合し、国王(大公)と議会の権限を明確に規定している。人権規定も比較的早期から取り入れられており、現代においても大幅な改正を重ねながら継続して機能している。


スイス連邦憲法(1848年)

**成立年:**1848年(現行は1999年)

**現在も有効:**はい

スイスは1848年に最初の連邦憲法を制定し、カントン(州)の連合から成る連邦国家として生まれ変わった。1999年に現行憲法が制定されたが、基本的な構造や連邦主義の原則は1848年の憲法に基づいている。直接民主制、国民投票制度などが特徴的である。


アルゼンチン憲法(1853年)

**成立年:**1853年

**現在も有効:**はい(多数の改正あり)

南アメリカで最も古い憲法の一つであるアルゼンチン憲法は、アメリカ合衆国憲法を強く参考にして制定された。連邦主義、三権分立、市民の基本的人権の保障などが盛り込まれており、その影響力はラテンアメリカの他国にも及んでいる。現在も改正を経ながら施行されている。


カナダ憲法(1867年)

**成立年:**1867年(カナダ憲法法)

**現在も有効:**はい

1867年の「イギリス領北アメリカ法」により制定され、1982年の憲法法によりカナダ国内で完全に独立した憲法体系となった。英国議会からの憲法改正の承認が不要になり、独自の憲法として機能するようになった。英米法の影響を色濃く受けつつ、独自の権利章典(カナダ権利と自由の憲章)を有している。


デンマーク憲法(1849年)

**成立年:**1849年

**現在も有効:**はい(修正を経て1953年版)

デンマーク憲法は、絶対君主制から立憲君主制への転換を象徴するものであり、民主的原則が取り入れられた。1953年の大改正によって現在の憲法となっているが、その基礎は1849年の憲法にある。王政と議会制民主主義が共存する体制を維持し続けている。


リヒテンシュタイン憲法(1921年)

**成立年:**1921年

**現在も有効:**はい

規模は小さいが、リヒテンシュタインの憲法もまた現存する長寿憲法の一つである。立憲君主制を採用し、国王(侯爵)と議会の権限を定義。特に2003年の国民投票によって、君主の権限を一部強化する憲法改正が行われたことでも注目された。小国ながらも民主的統治と伝統のバランスを取っている。


憲法の比較表(要約)

国名 憲法制定年 現行バージョン 特徴
アメリカ合衆国 1787年 1789年以降 成文憲法の先駆け、権利章典、三権分立
ノルウェー 1814年 継続使用 民主主義の原則、独立運動の産物
オランダ 1815年 1983年改正 王政と議会の融合、自由主義
ベルギー 1831年 継続使用 自由主義、立憲君主制、他国へ影響
ルクセンブルク 1868年 継続使用 王政と民主制の融合、人権保護
スイス 1848年 1999年改正 直接民主制、カントン連邦
アルゼンチン 1853年 継続使用 アメリカ憲法の影響、連邦制
カナダ 1867年 1982年独立 英米法の影響、自由の憲章
デンマーク 1849年 1953年改正 王政から民主制へ、女性継承権など
リヒテンシュタイン 1921年 継続使用 君主制と民主主義のバランス

結語

世界で最も古い憲法の多くは、革命、独立、改革といった歴史的な節目において誕生した。それらは単なる法律文書にとどまらず、国家の価値観、政治体制、国民の権利を象徴する存在である。これらの憲法は、幾度もの社会的変革や技術の進展を経てもなお、時代に応じた改正を通じて生命力を保ち続けている。近代国家がその憲法をいかに柔軟かつ尊重を持って扱うかは、その国の政治的成熟度を示す重要な指標であると言える。


参考文献

  1. Constitution of the United States, National Archives

  2. Norwegian Constitution, Stortinget official website

  3. Dutch Constitution, Government of the Netherlands

  4. Belgian Constitution, Constitutional Court of Belgium

  5. Constitution of Luxembourg, Service central de législation

  6. Swiss Federal Constitution, Federal Chancellery

  7. Argentine Constitution, Senado de la Nación Argentina

  8. Constitution Acts of Canada, Department of Justice Canada

  9. Danish Constitution, Folketinget official website

  10. Liechtenstein Constitution, Government of Liechtenstein

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