がん

乳がん治療の全貌

乳がんの治療は、個々の患者さんの病状やがんの進行度、年齢、健康状態などに基づいて異なります。乳がんの治療は多岐にわたり、外科手術、放射線治療、化学療法、ホルモン療法、免疫療法などが組み合わさることが一般的です。以下では、乳がん治療の主要なステップについて詳述します。

1. 乳がんの診断とステージング

乳がんが疑われる場合、まず診断が行われます。診断には以下の方法が使用されます:

  • マンモグラフィー:乳房のX線検査。がんの早期発見に有効です。

  • 超音波検査:乳房のしこりの大きさや性質を確認します。

  • 生検(バイオプシー):しこりががんであるかどうかを確認するため、組織を採取して調べます。

  • MRI(磁気共鳴画像):乳房内部の詳細な画像を得るために使用されます。

診断後は、がんの進行度を評価するために、ステージング(がんの広がりの評価)が行われます。乳がんは、がん細胞がどれだけ広がっているかによってステージが分類されます。ステージは0からIVまであり、IVが最も進行した状態です。

2. 治療計画の立案

乳がんの治療方法は、患者の状態に応じて個別に決定されます。一般的な治療方法は以下の通りです。

a. 手術(外科的治療)

乳がんの治療の中心となるのが手術です。手術には以下の種類があります。

  • 乳房部分切除術(温存手術):がんが発見された部位の乳房の一部だけを切除します。乳房全体を温存できる場合があります。

  • 乳房全摘術(全摘手術):乳房全体を切除します。進行したがんやがんが複数の部位に広がっている場合に選ばれることがあります。

  • リンパ節郭清:がんがリンパ節に広がっている場合、腋窩のリンパ節を取り除く手術が行われることがあります。

手術後、患者の状態やがんの進行度によって追加の治療が必要となる場合があります。

b. 放射線治療

放射線治療は、手術後に残っているかもしれないがん細胞を殺すために行います。特に、乳房部分切除術を受けた患者に対して、がんの再発を防ぐ目的で放射線治療が行われることが一般的です。

放射線治療は、外部から放射線を照射する方法(外部照射)や、体内に放射性物質を挿入する方法(内部照射)がありますが、乳がんの場合は主に外部照射が行われます。

c. 化学療法

化学療法は、がん細胞を殺すための薬物治療です。手術後に再発リスクが高い場合や、進行がんの場合に使用されます。また、がんが転移している場合や、手術前に腫瘍を縮小させる目的で行うこともあります。

化学療法は、通常、点滴や内服薬によって行われます。化学療法は全身的に作用し、がん細胞以外にも影響を与えるため、副作用が伴うことがあります。これには、脱毛、吐き気、疲れやすさ、免疫力の低下などが含まれます。

d. ホルモン療法

ホルモン療法は、ホルモン受容体陽性の乳がんに対して使用されます。乳がん細胞がエストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンを利用して増殖する場合、ホルモン療法が効果を発揮します。

ホルモン療法の代表的な薬には、エストロゲンの作用を抑える薬(タモキシフェン)や、エストロゲンの生成を抑える薬(アロマターゼ阻害剤)があります。これらの薬は、がんの再発を防ぐために、手術後に長期間服用されることがあります。

e. 標的療法(分子標的療法)

標的療法は、がん細胞に特有の分子を狙って治療する方法です。従来の化学療法ががん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えるのに対し、標的療法はがん細胞のみを攻撃します。これにより、副作用を抑えることができる場合があります。

HER2陽性乳がんに対しては、HER2タンパク質の作用を阻害する薬(トラスツズマブなど)が使用されます。

f. 免疫療法

免疫療法は、患者自身の免疫系を活性化させてがん細胞を攻撃させる治療法です。免疫チェックポイント阻害薬(例えば、ペムブロリズマブ)は、がん細胞が免疫系から逃れるのを防ぎ、免疫細胞ががん細胞を攻撃しやすくする働きを持ちます。

免疫療法は、主に転移性乳がんや進行した乳がんに使用されることが多いです。

3. アフターケアと生活習慣

乳がん治療後のアフターケアも重要です。治療が終了した後も、定期的な検診を受けることが必要です。再発を早期に発見するためには、定期的なマンモグラフィーや超音波検査が推奨されます。

また、治療後の生活習慣の改善も重要です。健康的な食生活や適度な運動を心がけることが、再発防止に役立つことがあります。ストレスの管理や十分な睡眠も、免疫力を高め、体の回復を助ける要因となります。

4. 精神的サポート

乳がんの治療は身体的な負担だけでなく、精神的な負担も大きいです。患者は治療中に不安やストレス、抑うつ状態に陥ることが多いため、心理的なサポートが非常に重要です。患者自身やその家族は、精神的なサポートを求めることが大切です。支援グループやカウンセリングを利用することが、心の健康を保つために有益です。

結論

乳がんの治療は、患者の状態に合わせた個別のアプローチが必要です。手術、化学療法、ホルモン療法、放射線治療、免疫療法などの治療方法は、それぞれが患者の生活の質を維持しつつ、がんを制御するために組み合わされます。治療後も継続的なフォローアップとサポートが求められ、患者が心身ともに回復するための支援が不可欠です。

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