近年、乳がんに関する認識が高まる中で、乳腺の病変に関する誤解も多く存在しています。その中でも、「90%以上の乳腺の腫瘍が癌とは関係ない」という情報に注目が集まっています。多くの人々が乳がんを恐れるあまり、乳腺に異常を感じるとすぐに悪性の腫瘍を疑いがちですが、実際にはその大半が良性の腫瘍であることがわかっています。本記事では、乳腺の腫瘍の実態とその分類、診断方法、予防法について詳しく解説します。
乳腺の腫瘍とは何か？
乳腺は、乳房にある乳汁を分泌するための腺組織で構成されています。この乳腺に発生する腫瘍は、大きく分けて「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」に分類されます。良性腫瘍は癌ではなく、命に関わることはほとんどありませんが、悪性腫瘍、すなわち乳がんは早期発見と治療が重要です。
良性腫瘍と悪性腫瘍の違い
良性腫瘍は通常、ゆっくりと成長し、周囲の組織に侵入することはありません。これに対して、悪性腫瘍は急速に成長し、周囲の組織に侵入したり、他の臓器に転移したりすることがあります。乳がんはその典型例です。しかし、良性腫瘍でも、時に痛みを伴ったり、乳房の形が変化したりすることがあるため、注意が必要です。
90%以上の乳腺腫瘍が良性である理由
乳腺にできる腫瘍の大部分は、実際には良性のものです。例えば、最も一般的な良性腫瘍には「線維腺腫」や「乳腺嚢胞」があります。これらの腫瘍は、通常は癌とは無関係であり、治療を必要としないことが多いです。
-
線維腺腫：
線維腺腫は、乳腺の組織が異常に増殖してできる腫瘍です。多くの場合、15歳から35歳の女性に見られ、しこりとして触れることがあります。良性であるため、がんに進行することはありません。ただし、サイズが大きくなると、外科的に除去することが検討されることもあります。 -
乳腺嚢胞：
乳腺嚢胞は、乳腺内に液体が溜まることによって形成される袋状の構造物です。これも良性で、特に更年期前後の女性に見られます。多くの場合、痛みを伴うことがありますが、癌との関連はありません。 -
脂肪腫：
脂肪腫は、乳房の脂肪組織から発生する良性の腫瘍です。一般的には無害で、癌に進行することはありません。 -
乳腺過形成：
乳腺の過形成（過剰な細胞の増殖）は、乳がんのリスクを高める場合がありますが、過形成自体は癌ではありません。しかし、この状態が持続すると、時折乳がんの前兆となることがあります。
乳腺腫瘍の診断と検査方法
乳腺にしこりを感じた場合、すぐに医療機関を受診することが推奨されます。早期に診断を受けることで、良性腫瘍と悪性腫瘍を区別することができます。乳腺腫瘍の診断方法には以下のようなものがあります。
1. 触診
乳腺のしこりを確認するための最も基本的な方法は、触診です。専門医による触診で、腫瘍の大きさや硬さ、動きなどを確認します。
2. 超音波検査
超音波検査は、腫瘍の内部の様子を詳細に見ることができる非侵襲的な検査方法です。これにより、腫瘍が液体を含んでいるか、固形かを区別できます。
3. マンモグラフィー
マンモグラフィーは、乳腺のX線検査であり、特に40歳以上の女性に推奨されます。微小な腫瘍や早期の乳がんを発見するために有効です。
4. 生検
確定診断を下すためには、生検（組織検査）が必要となる場合があります。これにより、腫瘍が良性か悪性かを確定できます。
乳腺腫瘍の予防法と生活習慣
乳腺の腫瘍を完全に予防する方法はありませんが、生活習慣を見直すことでリスクを減らすことができます。以下のような予防策があります。
1. 適度な運動
定期的な運動は、乳腺の健康を維持するために重要です。特に、肥満が乳がんのリスクを高めることが知られているため、適切な体重を維持することが大切です。
2. バランスの取れた食事
食事が乳腺腫瘍に与える影響は大きいです。高脂肪食や過剰なアルコール摂取は乳がんのリスクを高めるとされています。一方で、野菜や果物を多く摂取し、抗酸化物質を豊富に含む食事を心掛けることが予防につながります。
3. 定期的な検診
早期発見が乳がんの治療において非常に重要です。定期的な乳がん検診を受けることで、早期に異常を発見することができます。
結論
乳腺に異常を感じた場合、必ずしもそれが乳がんであるとは限りません。実際には、乳腺腫瘍の90%以上が良性であり、癌とは関係ないことが多いです。しかし、良性腫瘍でも時には治療が必要な場合がありますので、早期に医師による診断を受けることが重要です。乳腺の健康を維持するためには、定期的な検診や健康的な生活習慣の維持が欠かせません。