「乾癬」と「湿疹」の違いについて
皮膚の疾患には多くの種類がありますが、乾癬(かんせん)と湿疹(しっしん)はよく混同されがちな病状です。どちらも皮膚に炎症を引き起こし、かゆみや発疹を伴うことがありますが、その原因や症状、治療法には大きな違いがあります。この記事では、乾癬と湿疹の違いについて、詳細かつ包括的に解説します。

1. 乾癬(Psoriasis)とは
乾癬は、免疫系の異常に起因する慢性の皮膚疾患です。正常な皮膚のターンオーバー(新陳代謝)が過剰に早くなり、皮膚細胞が通常のサイクルで更新される前に新しい細胞が表面に現れることで、厚い鱗屑(うろこ)を形成します。乾癬は全身に広がる可能性があり、通常、頭皮、膝、肘、背中などに見られることが多いです。
乾癬の主な特徴
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発疹: 赤くて炎症を伴う発疹が、銀白色の鱗屑を伴って現れます。これらの鱗屑は剥がれやすく、乾燥した皮膚が現れます。
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かゆみと痛み: 乾癬の発疹は通常、かゆみや痛みを伴いますが、その程度は患者によって異なります。
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部位: 乾癬は特に肘や膝、背中、頭皮に現れやすいです。
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慢性性: 乾癬は慢性的な病気であり、症状が繰り返し現れることが特徴です。
乾癬の原因
乾癬の正確な原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因と免疫系の異常が関与していると考えられています。免疫系が過剰に反応し、皮膚の細胞が異常に早く生成されるため、皮膚に鱗屑が生じます。また、ストレス、感染症、薬剤の使用などが発症の引き金となることもあります。
2. 湿疹(Eczema)とは
湿疹は、皮膚の炎症を引き起こす広範な疾患群を指します。最も一般的なタイプはアトピー性湿疹(アトピー性皮膚炎)であり、アレルギー反応や免疫系の過剰反応によって引き起こされます。湿疹は通常、かゆみを伴う赤い発疹が現れることが特徴で、主に顔や手、足、肘の内側などに見られます。
湿疹の主な特徴
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発疹: 赤みを帯びた小さな発疹が現れ、かゆみが非常に強いです。皮膚が乾燥してひび割れたり、膿が出ることもあります。
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かゆみ: 湿疹の最も特徴的な症状は強いかゆみです。掻きむしることで症状が悪化し、二次感染を引き起こすこともあります。
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部位: 湿疹は顔、首、手、足、ひじの内側などに現れることが多いです。
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急性と慢性: 湿疹は急性の発症と慢性的な経過を取ることがあり、症状が繰り返し現れることもあります。
湿疹の原因
湿疹の主な原因はアレルギー反応と免疫系の異常です。アトピー性湿疹は、遺伝的にアレルギー体質を持つ人に多く見られ、環境因子やストレスが発症の引き金になることがあります。食物アレルギーや環境中のアレルゲン(ホコリや花粉など)が湿疹を引き起こす場合もあります。
3. 乾癬と湿疹の主な違い
乾癬と湿疹は、いくつかの重要な点で異なります。以下に、両者の違いをまとめます。
3.1 原因の違い
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乾癬は免疫系の異常により皮膚細胞のターンオーバーが異常に早くなることが原因です。
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湿疹はアレルギー反応や免疫系の過剰反応が原因で、アトピー性湿疹などは遺伝的な要因と環境因子が関係しています。
3.2 発疹の見た目
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乾癬は、赤い発疹に銀白色の鱗屑がつくのが特徴です。これらの鱗屑は剥がれやすく、乾燥して固まった感じになります。
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湿疹は、赤くて炎症を伴う発疹が現れ、乾燥やひび割れ、膿が出ることもあります。湿疹の発疹は通常、より液体を含んだ湿った状態になります。
3.3 部位の違い
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乾癬は膝や肘、背中、頭皮に多く現れることが一般的です。
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湿疹は顔や手、足、肘の内側、首周りに現れることが多いです。
3.4 かゆみの違い
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乾癬もかゆみを伴いますが、湿疹のほうがかゆみが強く、しばしば掻きむしることで症状が悪化します。
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湿疹のかゆみは特に激しく、皮膚を掻くことで二次感染を引き起こすリスクもあります。
4. 治療法の違い
乾癬と湿疹の治療法は異なります。どちらの疾患も完治は難しいことがありますが、症状を軽減するための治療法はあります。
4.1 乾癬の治療
乾癬の治療には、局所的な治療薬(ステロイド外用薬、ビタミンD3誘導体など)や光線療法(紫外線治療)、免疫抑制剤や生物学的製剤(TNFα阻害薬など)を使用することがあります。乾癬の治療は症状の重症度によって異なり、医師の指導のもとで適切な治療が必要です。
4.2 湿疹の治療
湿疹の治療には、保湿剤の使用やステロイド外用薬、抗ヒスタミン薬などが一般的です。アトピー性湿疹の場合、アレルゲンの回避や免疫抑制剤の使用も行われることがあります。湿疹の治療も、症状に応じて医師の指導を受けることが重要です。
5. まとめ
乾癬と湿疹は、いずれも皮膚に炎症を引き起こし、かゆみや発疹を伴う疾患ですが、その原因や症状、治療法には明確な違いがあります。乾癬は免疫系の異常による皮膚細胞の異常増殖が原因であり、銀白色の鱗屑が特徴です。一方、湿疹はアレルギー反応や免疫系の過剰反応によるもので、かゆみが強く湿った発疹が現れます。どちらも慢性的な疾患であり、適切な治療を受けることが大切です。皮膚に異常を感じた場合は、早期に医師の診断を受け、正しい治療を行うことが重要です。