乾癬(かんせん、英: Psoriasis)は、免疫系に関連した慢性的な皮膚疾患であり、主に皮膚の表面に発疹、鱗屑、発赤、かゆみを伴う症状が現れます。この疾患は遺伝的な要因、免疫系の異常、環境的な要因が複雑に絡み合った結果として発症します。乾癬は慢性の経過をたどることが多く、再発を繰り返しながら患者の生活に影響を与えるため、適切な治療が重要です。
乾癬の原因と病態
乾癬の原因はまだ完全には解明されていませんが、主に遺伝的要因と免疫系の異常が関与していると考えられています。乾癬を引き起こす可能性のある遺伝的要因には、特定のHLA遺伝子が関係していることが示唆されています。また、免疫系におけるT細胞の異常な活性化が乾癬の発症に関与しており、これが皮膚細胞の異常な増殖を引き起こすとされています。この増殖が急速に行われることにより、皮膚表面に鱗屑が形成されます。

乾癬は自己免疫疾患の一種であり、免疫系が自己の皮膚細胞を誤って攻撃してしまうことが、乾癬の病態の根本的な原因となっています。この異常な免疫反応により、皮膚の炎症が引き起こされ、炎症性物質(サイトカイン)が過剰に分泌され、皮膚の細胞が異常に速く成長することになります。その結果として、皮膚に厚みのある、赤くて鱗屑が浮かぶ発疹が現れるのです。
乾癬のタイプ
乾癬にはいくつかの異なるタイプがあり、各タイプによって症状や治療法が異なります。主な乾癬のタイプとして以下のものがあります:
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尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
最も一般的な乾癬のタイプで、皮膚に赤くて厚みのある鱗屑が現れるのが特徴です。通常、肘や膝、背中、頭皮などの部位に発症します。 -
滴状乾癬(てきじょうかんせん)
細かい点状の発疹が全身に広がるタイプです。主に小児や若年層に多く見られ、しばしば喉の風邪や扁桃炎などの感染症の後に発症することがあります。 -
膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
膿を含んだ小さな膿疱が現れる乾癬の一形態です。発熱や全身の不調を伴うことが多く、重症化することもあります。 -
逆向性乾癬(ぎゃくこうせいかんせん)
皮膚のひだや体の曲がりくねった部分(脇の下や股間など)に発症し、光沢のある赤い斑点が現れます。 -
乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
皮膚症状に加えて、関節に炎症が生じるタイプです。関節痛や腫れが現れることがあります。
乾癬の症状
乾癬の症状は個々の患者によって異なり、発症部位や症状の重さによっても異なりますが、一般的な症状には以下のようなものがあります:
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皮膚の発疹:赤くて厚みのある斑点や発疹が現れ、上に白い鱗屑(うろこ状の皮膚)が浮かぶ。
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かゆみ:多くの患者が強いかゆみを感じます。
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乾燥した皮膚:乾燥やひび割れが生じることがあり、特に寒い季節に悪化することがよくあります。
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爪の変形:爪に小さな穴が開いたり、爪が剥がれたりすることがあります。
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関節痛:乾癬性関節炎の症状として、関節に炎症が生じ、痛みや腫れが現れることがあります。
乾癬の診断
乾癬の診断は、主に皮膚科医による視診と病歴の確認によって行われます。診断の際には、皮膚の状態を観察し、発疹や鱗屑の特徴を確認します。また、場合によっては皮膚の組織を採取して顕微鏡で調べることもあります。乾癬と他の皮膚疾患(例:湿疹、接触皮膚炎など)を区別するために、皮膚の病理学的検査が行われることもあります。
乾癬の治療法
乾癬の治療は症状を軽減し、再発を防ぐことを目的としています。治療法は個々の患者の症状や乾癬のタイプ、重症度に応じて異なります。主な治療法には以下のものがあります:
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外用薬
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コールタール:乾癬の症状を緩和するために使用されることがある。
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ステロイド外用薬:炎症を抑えるために使用されることが多い。
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ビタミンD誘導体:皮膚の細胞の成長を正常化するために使用されます。
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光線療法(紫外線治療)
特に中等度から重度の乾癬に対しては、紫外線B波(UVB)療法が有効です。これにより、皮膚の異常な細胞増殖を抑制します。 -
内服薬
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免疫抑制薬:免疫系の過剰な反応を抑えるために使用されます。メトトレキサートやシクロスポリンなどが有名です。
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生物学的製剤:乾癬の原因となるサイトカインをターゲットにした治療薬が登場しており、これにより効果的な治療が可能となっています。
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生活習慣の改善
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ストレスの管理:ストレスが乾癬の悪化因子となるため、リラックス方法を取り入れることが重要です。
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食事の管理:バランスの取れた食事と、アルコールやタバコを控えることが推奨されます。
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乾癬の予後
乾癬は治癒が難しい疾患であり、現在のところ完全に治す方法はありません。しかし、適切な治療を受けることによって、症状の管理は可能です。乾癬が悪化しないように、定期的な皮膚科での診察や治療を受けることが重要です。
また、乾癬患者は精神的なストレスや社会的な偏見などに悩まされることもあります。乾癬が原因で生活の質が低下することもありますが、周囲の理解と支援を受けることで、より良い生活を送ることができます。
結論
乾癬は慢性的で再発を繰り返す疾患ですが、早期の診断と適切な治療により、症状をコントロールすることが可能です。乾癬の治療には多くの選択肢があり、患者一人一人に合った治療法を選ぶことが重要です。また、乾癬の症状だけでなく、精神的なサポートや生活習慣の改善も治療において重要な役割を果たします。