低血圧は、血圧が通常の範囲よりも低くなる状態を指します。一般的に、成人の正常な血圧は約120/80mmHg(ミリメートル水銀柱)ですが、低血圧はこれよりも下回る状態を指します。低血圧は時に軽視されがちですが、長期間にわたり血圧が低い状態が続くと、体に様々な影響を及ぼし、生活の質を低下させることがあります。本記事では、低血圧の原因、症状、診断方法、治療法について詳しく解説します。
1. 低血圧の原因
低血圧は、様々な要因によって引き起こされる可能性があります。その原因を大きく分けると、以下のようなカテゴリに分類できます。

1.1 生理的要因
血圧が低くなる原因として、遺伝的要因や年齢、体調などが影響を与えることがあります。例えば、若年層や体重が軽い人は、通常、血圧が低めであることが多いです。また、高齢者では血管の弾力性が失われ、血圧が低下しやすくなることがあります。
1.2 生活習慣
食事や運動習慣など、生活習慣が血圧に大きな影響を与えることがあります。例えば、極端なダイエットや栄養不良、脱水症状、過度のアルコール摂取、喫煙などが低血圧の原因となることがあります。また、長時間の立ち仕事や急激な立ち上がりも一時的な低血圧を引き起こすことがあります。
1.3 内科的疾患
低血圧は、いくつかの内科的疾患によって引き起こされることもあります。例えば、心臓の病気(心筋梗塞、心不全、不整脈など)、内分泌障害(甲状腺機能低下症、副腎不全など)、神経系の疾患(パーキンソン病など)、糖尿病などが低血圧の原因となることがあります。
1.4 薬剤
低血圧の原因となる薬剤は多岐にわたります。降圧薬や利尿剤、抗うつ薬、鎮痛薬などは血圧を下げる作用を持ちます。また、麻酔薬や一部の抗生物質、抗アレルギー薬なども低血圧を引き起こす可能性があります。
2. 低血圧の症状
低血圧の症状は、血圧が低いことによって脳や他の臓器に十分な血液が供給されなくなるために現れます。主な症状には以下のようなものがあります。
2.1 めまいと立ちくらみ
低血圧が続くと、血液の循環が不十分になり、脳に必要な酸素が届かなくなるため、めまいや立ちくらみを感じることがあります。特に急に立ち上がった時や長時間立っている時にこの症状が現れやすくなります。
2.2 疲労感
血圧が低いと、全身への血液供給が不足し、体が疲れやすくなることがあります。特に朝起きたときや体を動かした後に強い疲労感を感じることが多くなります。
2.3 息切れと動悸
低血圧が進行すると、体が酸素不足になり、息切れや動悸を感じることがあります。心臓が十分に血液を送り出せないため、体は無理に働こうとするためです。
2.4 吐き気
血圧が低い状態が続くと、消化器系にも影響を及ぼし、吐き気や食欲不振を引き起こすことがあります。
3. 低血圧の診断方法
低血圧が疑われる場合、医師はまず患者の血圧を測定します。血圧は、静脈圧と動脈圧の両方を測定することによって評価されます。通常、診断のためには次のような手順が取られます。
3.1 血圧測定
最低血圧(拡張期血圧)と最高血圧(収縮期血圧)を測定し、通常の範囲を下回っているかどうかを確認します。
3.2 症状の確認
患者がどのような症状を感じているか、発症時の状況などを確認します。特に、立ち上がったときに症状が悪化するかどうかを確認することが重要です。
3.3 血液検査
貧血や栄養不良、ホルモンの異常などを確認するために、血液検査が行われることがあります。また、糖尿病の有無を調べるために血糖値も測定されることがあります。
3.4 心電図(ECG)
低血圧が心臓に関連している可能性がある場合、心電図を使って心臓のリズムや健康状態をチェックします。
4. 低血圧の治療方法
低血圧の治療は、原因に基づいて行われます。以下に代表的な治療方法を紹介します。
4.1 生活習慣の改善
まず最初に、生活習慣の改善が推奨されます。水分補給をしっかり行う、塩分を適度に摂取する、食事を小分けにして摂取する、急激な立ち上がりを避けるなどが有効です。また、適度な運動や十分な休養を取ることも重要です。
4.2 薬物療法
薬物療法が必要な場合、血圧を上昇させる薬剤(例:ミッドドリンなど)が処方されることがあります。また、利尿剤や降圧薬を服用している場合は、医師に相談し、薬剤の調整が行われることがあります。
4.3 原因疾患の治療
低血圧が心疾患や内分泌障害などの他の疾患に起因する場合、その治療が優先されます。例えば、甲状腺機能低下症の場合は、甲状腺ホルモンの補充が行われることがあります。
4.4 血液製剤や輸液
脱水症状が強い場合や出血が原因で低血圧が発生している場合には、輸液や血液製剤が投与されることがあります。
5. まとめ
低血圧は、その原因が多岐にわたるため、症状が現れた際には早期の診断と治療が重要です。生活習慣を見直すことや、原因疾患がある場合にはその治療が必要となります。軽度の低血圧であっても、日常生活に支障をきたすことがあるため、無視せずに適切な対応を取ることが健康維持には欠かせません。