低血圧(低血圧症)は、血圧が正常範囲よりも低くなる状態を指します。一般的に、正常な血圧は約120/80mmHgとされており、これを下回る血圧を低血圧と考えます。低血圧は多くの場合、症状が軽微であるか無症状で過ごせますが、重度の低血圧は深刻な健康問題を引き起こすことがあります。この記事では、低血圧の症状や原因、診断方法、治療法について詳しく解説します。
低血圧の症状
低血圧の症状は個人によって異なりますが、一般的には以下のような症状が現れることがあります。

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めまいまたは立ちくらみ
低血圧の最も一般的な症状の一つは、立ち上がった際や長時間立っている際に感じるめまいや立ちくらみです。これは血流が急激に低下し、脳に十分な酸素が供給されなくなるためです。 -
失神(気を失うこと)
血圧が非常に低くなると、脳への血流が不十分になり、意識を失うことがあります。特に、急に立ち上がったり、長時間の立位を続けたりしたときにこの症状が現れることがあります。 -
疲労感
低血圧の人は、全身に十分な血液が行き渡らないため、常に疲れていると感じることがよくあります。疲労感は慢性的で、日常生活に支障をきたすこともあります。 -
集中力の低下
低血圧によって脳への血液供給が減少すると、思考力や集中力が低下することがあります。これにより、仕事や勉強などの活動に支障をきたす場合があります。 -
吐き気
血圧が低いために、消化器官への血流も減少することがあります。これにより、吐き気を感じることがあるため、食欲不振や消化不良を引き起こすこともあります。 -
皮膚の冷たさや青白さ
血液循環が不十分になると、手足や皮膚が冷たく感じたり、青白くなることがあります。これは、身体が血液を重要な器官に優先的に供給しようとするためです。 -
視界のぼやけ
血圧が低いと、眼への血流も減少します。このため、視界がぼやけたり、視力が一時的に低下することがあります。
低血圧の原因
低血圧の原因は多岐にわたります。主な原因には以下のようなものがあります。
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脱水症状
脱水症状は、体内の水分が不足することで血液量が減少し、血圧が低下する原因となります。水分不足は、下痢や嘔吐、大量の発汗などによって引き起こされます。 -
心疾患
心臓の問題、例えば心不全や不整脈などは、血液を効率的に循環させる能力を低下させるため、低血圧を引き起こすことがあります。 -
内分泌障害
甲状腺機能低下症や副腎不全などの内分泌系の異常も低血圧を引き起こす原因となります。ホルモンの不均衡が血圧に影響を与えることがあります。 -
血管の拡張
薬剤の影響やアレルギー反応、感染症などによって血管が拡張すると、血圧が急激に低下することがあります。これがショック状態を引き起こすこともあります。 -
食事の影響
大きな食事を取った後に血圧が低下することがあります。特に、炭水化物が多い食事を摂ると、消化のために血流が消化器官に集中し、血圧が低下することがあります。 -
薬物の副作用
利尿剤や抗うつ薬、降圧薬など、いくつかの薬剤が低血圧を引き起こすことがあります。これらの薬剤は血管を拡張したり、血圧を下げたりする作用があるため、低血圧が発生することがあります。 -
妊娠
妊娠初期には、ホルモンの影響で血管が広がり、血圧が低くなることがあります。通常、妊娠中の低血圧は自然に回復しますが、注意が必要です。
低血圧の診断方法
低血圧が疑われる場合、まずは医師による診断が重要です。診断には以下の方法が使われます。
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血圧測定
最も基本的な方法は、血圧計を使用して血圧を測定することです。通常、二回以上測定を行い、血圧が一定の基準以下であることが確認されれば、低血圧と診断されます。 -
起立試験
立ち上がった際に血圧が急激に下がるかどうかを調べるために、起立試験が行われることがあります。急激な血圧低下が見られると、起立性低血圧が疑われます。 -
血液検査
血液検査を行い、貧血や内分泌系の異常がないかを調べることがあります。これにより、低血圧の原因が特定されることがあります。 -
心電図や超音波検査
心臓の健康状態を調べるために、心電図や超音波検査が行われることもあります。これにより、心疾患が原因で低血圧が起きているかどうかを確認できます。
低血圧の治療方法
低血圧の治療は、原因によって異なります。治療方法には以下のようなものがあります。
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水分補給
脱水が原因である場合、十分な水分を摂取することが基本的な治療法です。特に、スポーツドリンクなどの電解質を含む飲み物を摂取すると効果的です。 -
食事の改善
小分けにして食事を摂ることで、大きな食事後の血圧低下を防ぐことができます。また、塩分を適度に増やすことも血圧を上げる助けになりますが、過剰な塩分摂取は避けるべきです。 -
薬物療法
血圧を上げる薬が処方されることがあります。特に、血管収縮剤やフルドロコルチゾン(副腎皮質ホルモン)などが使用されることがあります。 -
ライフスタイルの改善
定期的な運動や体位を変える際の注意(急に立ち上がらないなど)も重要です。運動は血圧を安定させるのに役立つことがあります。
結論
低血圧は一見軽視されがちな症状ですが、放置しておくと日常生活に支障をきたすことがあります。症状がひどくなる前に、原因を特定し、適切な治療を受けることが重要です。低血圧の予防や改善には、健康的な食事やライフスタイルの見直しが効果的です。