世界中でエネルギー政策の転換が進む中、再生可能エネルギーは今や各国の経済・環境戦略の中核を成す存在となっている。気候変動への対策、エネルギー安全保障、持続可能な経済発展を目指すため、風力、太陽光、水力、地熱、バイオマスなどのクリーンエネルギーの導入が急速に拡大している。特に大規模な国家レベルでの政策と技術投資により、再生可能エネルギーの生産量が飛躍的に伸びている国々が存在する。本稿では、最新の統計と国際エネルギー機関(IEA)などの信頼性あるデータに基づき、世界で最も多く再生可能エネルギーを生産している10か国について、技術別の内訳、導入政策、成功要因、今後の課題などを含めて包括的に解説する。
1. 中国(中華人民共和国)
中国は世界最大の再生可能エネルギー生産国であり、特に風力・太陽光発電の分野で他国を大きくリードしている。2023年時点で、中国の総再生可能エネルギー発電容量は13億キロワットを超えており、これは世界全体の30%以上を占める。

技術別構成:
エネルギー源 | 生産量(GW) | 特徴 |
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水力発電 | 約415 | 長江や黄河などの豊富な河川利用 |
風力発電 | 約430 | 北部や内陸部に大規模な風力基地 |
太陽光発電 | 約520 | ゴビ砂漠やチベットでの超大規模発電 |
バイオマス・地熱 | 約50 | 地域ごとの分散型利用が中心 |
中国は2030年までにカーボンピークを迎え、2060年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げており、それに沿って膨大な投資が行われている。
2. アメリカ合衆国
アメリカは風力と太陽光の分野で急速な成長を遂げており、再生可能エネルギーはすでに国内電力供給の約22%を占めている。特に州政府レベルでの政策が導入拡大に大きく寄与している。
主な発電源:
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風力:テキサス州を中心に全米に分布。発電容量は約140GW。
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太陽光:カリフォルニア、アリゾナ、ネバダなど日照の強い地域に集中。
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水力:アメリカ北西部(ワシントン州、オレゴン州など)における既存のダムが主要源。
導入を後押しする要素:
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IRA(インフレ抑制法)による再エネ補助金
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民間投資の活性化
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企業による再エネ電力の直接購入(PPA)
3. ブラジル
ブラジルは水力発電が主力で、再生可能エネルギーの割合が電力供給の約80%以上に達している。アマゾン川やパラナ川流域の大規模ダムがエネルギーの柱である。
特徴:
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水力:イタイプダムやベロモンテなど、世界最大級の発電所が稼働。
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バイオエタノール:サトウキビ由来の燃料として自動車分野にも貢献。
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風力・太陽光:2020年代に入り急拡大中。
ブラジルは再エネを経済成長の中核と位置づけ、農業・工業と連携したエネルギー戦略を展開している。
4. インド
人口14億人を超える巨大市場であるインドは、エネルギー需要が急増する中、再生可能エネルギーの導入を国策として推進している。
導入状況:
エネルギー源 | 発電容量(GW) | 特記事項 |
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太陽光 | 約70 | 国家ソーラーミッションの成果 |
風力 | 約45 | タミル・ナードゥ州やグジャラート州などに集中 |
小水力 | 約5 | 地域分散型の水力発電 |
インド政府は2030年までに500GWの非化石燃料発電を導入する目標を掲げている。
5. ドイツ
ドイツは「エネルギーヴェンデ(エネルギー転換)」という国家プロジェクトを通じて、再生可能エネルギーへの大転換を進めている。
技術的内訳:
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風力:内陸部および北海・バルト海の洋上風力
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太陽光:家庭用パネルの普及率が高い
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バイオマス:農業廃棄物を活用した発電
2023年には国内電力供給の50%以上を再生可能エネルギーが占め、原子力からの完全撤退も実現している。
6. カナダ
カナダは広大な土地と豊富な水資源を活かし、水力発電が総発電の約60%を占めている。
主な特長:
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水力発電所の多くはブリティッシュ・コロンビア州やケベック州に位置
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風力と太陽光も政府の補助により近年増加中
カナダは2050年までのカーボンニュートラル達成を掲げ、グリーン・インフラへの投資を拡大している。
7. 日本
日本は福島第一原発事故以降、再生可能エネルギーの導入を加速させたが、地理的制約や送電網の制限もあり、今なお課題が多い。
現状と課題:
エネルギー源 | 発電容量(GW) | 備考 |
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太陽光 | 約80 | 世界3位の導入量 |
風力 | 約5 | 陸上風力中心、洋上風力の拡大が課題 |
地熱 | 約0.5 | 温泉地との競合があり普及に制約あり |
日本政府は「GX(グリーントランスフォーメーション)」戦略を掲げており、再生可能エネルギーを主力電源に位置づける方針である。
8. スペイン
スペインはヨーロッパでも再生可能エネルギーの先進国であり、特に風力と太陽光の導入において注目されている。
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風力発電:全国に2,000以上の風力発電所があり、発電容量は約30GW。
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太陽光:アンダルシア州など南部地域を中心に拡大中。
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集光型太陽熱発電(CSP):独自の技術で国際的な評価を受けている。
スペインでは再エネ比率がすでに50%を超えており、欧州連合(EU)の気候目標達成にも貢献している。
9. イタリア
イタリアは地中海気候を活かし、太陽光や地熱発電に力を入れている。再エネ比率は約40%に達している。
主な構成:
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太陽光発電:全国で分散型の導入が進んでおり、家庭向けの普及率も高い。
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地熱発電:トスカーナ地方に世界最古の地熱発電所群を有する。
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水力発電:アルプス山脈を利用した小水力が多い。
イタリア政府は「Piano Nazionale Energia e Clima(国家エネルギー・気候計画)」に基づき、2030年までに再エネ比率を60%以上に高めることを目標としている。
10. イギリス(英国)
イギリスは洋上風力発電において世界のトップランナーであり、特に北海沿岸に巨大な風力発電基地を展開している。
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洋上風力発電容量は約14GW(世界第2位)
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太陽光は限定的だが、風力・バイオマスの利用が進む
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原子力も併用して脱炭素化を推進
イギリスは「Net Zero by 2050」を掲げ、再エネを中心にゼロエミッション社会への移行を進めている。
結論と今後の展望
世界各国は地理的条件、政策、技術レベルの違いに応じて独自の再