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前立腺肥大症と前立腺癌の違い

前立腺肥大症(良性前立腺肥大症)と前立腺癌は、どちらも男性に影響を与える前立腺の病気ですが、その性質、原因、症状、治療法などにおいて大きな違いがあります。この2つの病気の違いについて詳しく説明します。

1. 前立腺肥大症(良性前立腺肥大症)

前立腺肥大症(BPH)は、前立腺が肥大する良性の状態です。前立腺は、男性の生殖器官の一部で、膀胱の下に位置し、尿道を取り囲んでいます。前立腺肥大症は、特に中年以降の男性に多く見られる病気で、前立腺が過剰に増大することにより、尿道が圧迫され、尿の流れに障害が生じることがあります。

主な原因

前立腺肥大症の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、加齢とともにホルモンの変化が関係していると考えられています。テストステロンという男性ホルモンが前立腺細胞を増殖させるため、年齢を重ねるごとに前立腺が大きくなる傾向があります。

主な症状

前立腺肥大症の症状は、尿道が圧迫されることにより現れます。代表的な症状には以下が含まれます。

  • 頻尿(特に夜間の頻尿)

  • 排尿時の遅れや時間がかかる

  • 排尿後の残尿感

  • 尿が途中で途切れる

  • 尿が出にくいまたは弱い

診断方法

前立腺肥大症の診断は、医師による問診や触診、血液検査、尿流測定などを通じて行われます。また、前立腺特異抗原(PSA)という血液マーカーの測定が行われることもありますが、PSAの値が高い場合は癌の可能性も示唆されるため、さらなる検査が必要です。

治療法

前立腺肥大症の治療は、症状の重さや患者の年齢、健康状態に応じて異なります。軽度の場合は、生活習慣の改善や薬物療法が有効です。薬物としては、アルファブロッカーや5α還元酵素阻害薬が使用されることがあります。これらの薬は、前立腺の筋肉を緩めたり、前立腺のサイズを縮小させたりすることで症状を改善します。重度の場合は、手術が検討されることがあります。例えば、経尿道的前立腺切除術(TURP)などの手術が行われることがあります。

2. 前立腺癌

前立腺癌は、前立腺内に悪性腫瘍ができる癌です。前立腺癌は男性において最も一般的に診断される癌の一つであり、年齢が高くなるにつれてリスクが増加します。前立腺癌は、初期段階では症状がほとんど現れないことが多いため、進行するまで気づかれにくいことが特徴です。

主な原因

前立腺癌の正確な原因は不明ですが、遺伝的要因や食事、生活習慣が影響することが示唆されています。家族に前立腺癌の患者がいる場合、リスクが高くなることが知られています。また、高脂肪食や肥満、運動不足もリスク因子として挙げられます。

主な症状

前立腺癌の初期段階ではほとんど症状がありませんが、病気が進行すると、以下のような症状が現れることがあります。

  • 排尿困難(尿の出にくさ、尿の途中で途切れる)

  • 血尿や精液に血が混じる

  • 骨痛(特に腰や背中の痛み)

  • 下腹部の痛みや不快感

前立腺癌が進行して骨やリンパ節に転移すると、痛みや腫れが現れることがあります。

診断方法

前立腺癌の診断は、前立腺特異抗原(PSA)検査を中心に行われます。PSAの値が異常に高い場合は、前立腺癌の可能性が考慮され、追加で生検やMRI、CTスキャンなどが行われます。生検では、前立腺の組織を採取して、癌細胞が存在するかを確認します。

治療法

前立腺癌の治療は、癌の進行度や患者の全体的な健康状態に応じて選択されます。早期発見された場合、治療の選択肢としては手術による前立腺の摘出、放射線療法、ホルモン療法などがあります。進行癌の場合、化学療法や免疫療法が検討されることがあります。また、ホルモン療法は前立腺癌細胞が男性ホルモン(テストステロン)に依存しているため、ホルモンを抑制する治療法です。

3. 前立腺肥大症と前立腺癌の違い

特徴 前立腺肥大症(BPH) 前立腺癌
性質 良性(腫瘍ではない) 悪性(癌)
原因 ホルモンの変化、加齢 遺伝、食生活、環境要因など
主な症状 排尿障害、頻尿、残尿感 初期は無症状、進行すると排尿困難、骨痛など
診断方法 PSA検査、触診、尿流測定 PSA検査、生検、MRI、CTスキャン
治療方法 薬物療法、手術(TURPなど) 手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法

まとめ

前立腺肥大症と前立腺癌は、症状や治療法、原因が大きく異なる病気です。前立腺肥大症は良性の病気であり、加齢に伴って前立腺が大きくなることが主な原因です。一方、前立腺癌は悪性の病気であり、早期発見が重要です。両者は診断方法としてPSA検査を共有していますが、前立腺癌の疑いが強い場合は、さらなる検査が必要です。早期に発見し、適切な治療を受けることが、両者の治療において重要なポイントです。

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