医療の分野において、検査は患者の健康状態を評価するために不可欠な手段です。血液検査や尿検査をはじめとするさまざまな検査項目は、疾患の早期発見や治療方針の決定に役立ちます。医療現場で使用される検査結果は、しばしば略語やコードとして記載されますが、それらの意味や解釈を理解することは非常に重要です。この記事では、医療における主な検査項目の記号とその意味を包括的に紹介します。
1. 血液検査の代表的な項目
血液検査は、患者の全体的な健康状態を把握するための最も基本的な検査です。ここでは、一般的な血液検査項目とその解釈について説明します。

1.1 白血球数 (WBC: White Blood Cell Count)
白血球数は、免疫系の働きを示す重要な指標で、体内で感染症と戦う役割を担っています。正常値は約4,000~10,000 /μLですが、値が高い場合は感染症、炎症、白血病などの疾患を示唆することがあります。逆に低い場合は免疫不全や骨髄の障害を示すことがあります。
1.2 赤血球数 (RBC: Red Blood Cell Count)
赤血球数は、血液中の酸素運搬能力を示す指標で、通常は男性で4.5~5.9 million/μL、女性で4.1~5.1 million/μL程度が正常範囲です。赤血球数が低いと貧血の可能性があり、高いと多血症や脱水症状が考えられます。
1.3 ヘモグロビン (Hb: Hemoglobin)
ヘモグロビンは赤血球内に含まれる酸素を運ぶタンパク質で、通常は男性で13~18 g/dL、女性で12~16 g/dLが正常範囲です。ヘモグロビンが低い場合、貧血が疑われ、高い場合は酸素供給の異常が考えられることがあります。
1.4 ヘマトクリット (Hct: Hematocrit)
ヘマトクリットは血液の中で赤血球が占める割合を示すもので、正常値は男性で40~50%、女性で36~46%です。この値が低い場合は貧血、高い場合は脱水や多血症が疑われます。
1.5 血小板数 (PLT: Platelet Count)
血小板は血液凝固に関与する細胞で、正常範囲は150,000~400,000/μLです。血小板数が低いと出血傾向が強くなり、高い場合は血栓症のリスクが増加します。
2. 肝機能検査の主要項目
肝臓は体内で様々な重要な役割を果たしており、肝機能を評価するための検査は非常に重要です。ここでは、肝機能を示す代表的な検査項目を紹介します。
2.1 アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT: Alanine Aminotransferase)
ALTは肝臓の細胞に多く含まれる酵素で、肝臓の障害を反映する指標となります。正常範囲は男性で10~40 U/L、女性で7~35 U/Lです。ALT値が高い場合、肝炎や肝臓疾患を示唆します。
2.2 アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST: Aspartate Aminotransferase)
ASTも肝臓に含まれる酵素ですが、筋肉や心臓にも存在します。正常値は男性で15~40 U/L、女性で13~35 U/Lです。ASTが高い場合、肝炎や心臓疾患、筋肉障害などが考えられます。
2.3 アルカリフォスファターゼ (ALP: Alkaline Phosphatase)
ALPは肝臓や骨、腎臓に存在する酵素で、正常範囲は成人で40~130 U/Lです。ALPが高い場合、胆道系の障害や骨疾患が疑われます。
2.4 ビリルビン (BIL: Bilirubin)
ビリルビンは赤血球の分解産物で、肝臓で処理されます。正常範囲は総ビリルビンで0.1~1.2 mg/dLです。高い場合は黄疸や肝機能障害を示すことがあります。
3. 腎機能検査の主要項目
腎臓は体内の老廃物を排出する役割を担っており、その機能を評価するための検査が行われます。
3.1 クレアチニン (Cr: Creatinine)
クレアチニンは筋肉の代謝産物で、腎臓によって排出されます。正常範囲は男性で0.6~1.2 mg/dL、女性で0.5~1.1 mg/dLです。高い場合は腎機能が低下している可能性があります。
3.2 尿素窒素 (BUN: Blood Urea Nitrogen)
尿素窒素は肝臓で生成され、腎臓で排出される老廃物です。正常範囲は7~20 mg/dLで、値が高い場合は腎機能障害や脱水が考えられます。
4. 糖代謝の検査
糖尿病や低血糖を評価するために行われる検査も重要です。
4.1 血糖 (Glucose)
血糖値は体内の糖分の濃度を示す指標で、正常範囲は70~110 mg/dLです。高い場合は糖尿病が疑われ、低い場合は低血糖の可能性があります。
4.2 HbA1c (グリコヘモグロビン)
HbA1cは過去2~3ヶ月の血糖の平均値を反映する指標で、正常範囲は4.0~5.6%です。高い値は糖尿病のコントロールが不良であることを示します。
5. 脂質検査
血液中の脂質の状態を評価する検査も重要です。
5.1 総コレステロール (TC: Total Cholesterol)
総コレステロールは、血液中のすべてのコレステロールを含む指標で、正常範囲は200 mg/dL未満です。高い場合は動脈硬化や心血管疾患のリスクが増加します。
5.2 LDLコレステロール (LDL-C: Low-Density Lipoprotein Cholesterol)
LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」として知られ、正常範囲は100 mg/dL未満です。高い場合は心臓病や脳卒中のリスクが高まります。
5.3 HDLコレステロール (HDL-C: High-Density Lipoprotein Cholesterol)
HDLコレステロールは「善玉コレステロール」として知られ、正常範囲は40~60 mg/dLです。HDL値が高いと、心血管疾患のリスクが低くなります。
5.4 トリグリセリド (TG: Triglycerides)
トリグリセリドは血液中の脂肪の一種で、正常範囲は150 mg/dL未満です。高い場合は糖尿病や動脈硬化のリスクが増加します。
結論
医療検査の結果は、患者の健康状態を把握するための貴重な情報源です。検査項目の意味を理解し、異常値が示す可能性のある疾患について学ぶことは、早期発見や予防につながります。検査結果を医師と共に確認し、適切な対応をすることが重要です。また、定期的な健康診断を受けることで、健康管理がより効果的になります。