博士論文の提案書(プロポーザル)を書くことは、学術的な研究の方向性を定め、指導教官や審査員に対してその研究の重要性と方法論を説明するための重要なステップです。このプロポーザルは、研究の目的や意義を明確にし、どのようにその研究を進めるかを示すことで、採用の可能性を高めます。以下に、博士論文の提案書を書く際の完全かつ包括的なガイドラインを提供します。
1. はじめに(Introduction)
提案書の最初の部分では、研究の背景と目的を簡潔に説明します。このセクションは、研究の重要性を強調し、なぜそのテーマを選んだのかを説明するものです。

1.1 研究の背景
ここでは、選んだテーマに関連する先行研究や社会的・学問的な背景を紹介します。具体的には、以下の点を明記します:
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研究分野の現状
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研究テーマに関連する重要な問題
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先行研究のレビュー
1.2 研究の目的
研究の目的を明確に定義します。この部分では、具体的に何を解明したいのか、研究の成果がどのように学問分野に貢献するかを示します。
2. 研究問題と仮説(Research Question and Hypothesis)
このセクションでは、研究の主題となる具体的な研究問題を提示します。研究問題は、解決したい問題や課題を明確にし、研究の焦点を定めます。また、仮説を立てる場合は、それもここに記載します。
2.1 研究問題
研究問題は、学問的な議論や社会的な課題に基づいて設定します。研究を通じて解答を得ようとする問いを明確に定義することが重要です。
2.2 仮説(もしあれば)
仮説は、研究が進行する中で検証されるべき予想される結果です。仮説がある場合、それに基づく実証的な検証が必要になります。
3. 研究の目的と意義(Significance of the Study)
このセクションでは、研究が学問や社会にどのように貢献するかを説明します。具体的には、研究が解決しようとする問題がどれほど重要であり、その解決がどのように新しい知識や実践に繋がるのかを示すことが求められます。
4. 先行研究のレビュー(Literature Review)
先行研究をレビューすることで、研究テーマに関する過去の成果や理論的背景を深く理解し、提案する研究の独自性を示すことができます。この部分では、以下の内容をカバーします:
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研究テーマに関連する主要な理論や研究
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先行研究の成果とその限界
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研究テーマに対する異なるアプローチや視点
5. 研究方法(Research Methodology)
研究方法は、どのように研究を進め、どのようにデータを収集・分析するかを詳述する部分です。方法論を選ぶ理由やその正当性を説明することが重要です。
5.1 研究デザイン
研究デザインには、実験的デザイン、調査デザイン、質的研究デザイン、定量的研究デザインなど、研究に適した方法を選びます。
5.2 データ収集方法
データをどのように収集するか(例:インタビュー、アンケート、文献調査など)を詳細に記載します。
5.3 データ分析方法
収集したデータをどのように分析するか(例:統計解析、質的分析、内容分析など)を説明します。
6. 研究の計画(Research Plan)
このセクションでは、研究の実施計画やタイムラインを示します。研究は通常、一定の期間内に段階的に進める必要があります。計画の中には、次の要素を含めます:
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研究の各段階(例:準備、データ収集、データ分析、論文執筆など)
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各段階の期間
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予期される成果物や結果
7. 予算と資源(Budget and Resources)
研究に必要な資源(例えば、機器やソフトウェア、調査対象者への報酬など)とそれにかかる予算についても触れます。資金提供者に対して、研究の実施が実現可能であることを示すために、費用を明確にすることが重要です。
8. 倫理的配慮(Ethical Considerations)
研究が倫理的に適切であることを保証するため、倫理委員会への申請やインフォームド・コンセント(研究対象者への同意書)について言及します。特に人間や動物を対象とした研究では、倫理的な配慮が求められます。
9. 期待される成果と結論(Expected Outcomes and Conclusion)
研究の結果としてどのような知見が得られることを期待しているのかを説明します。また、その知見が学問的、社会的、または実務的にどのように貢献するかを述べます。
10. 参考文献(References)
研究提案書の最後には、提案する研究に関連する先行研究や文献を引用します。学術的に信頼できる文献を使うことが求められ、引用のスタイルは学問分野によって異なるため、自分の分野に適した方法(APAスタイル、MLAスタイルなど)を遵守します。
まとめ
博士論文の提案書は、研究の方向性や実施方法を示す非常に重要な文書です。明確で論理的な構成とともに、研究の目的、方法、意義をしっかりと伝えることが求められます。計画的に準備し、各セクションを丁寧に執筆することで、提案書が高く評価される可能性が高まります。