卵巣の病気とは、女性の生殖器系において重要な役割を果たす卵巣に関連する疾患を指します。卵巣は、月経周期を調整するホルモンを分泌し、卵子を生成する重要な臓器です。そのため、卵巣の健康状態は女性の全体的な健康にも大きな影響を与えます。卵巣の病気は、ホルモンバランスの乱れ、不妊症、またはがんなどの深刻な疾患を引き起こす可能性があり、早期に発見し、適切に治療することが重要です。この記事では、卵巣の代表的な疾患、原因、症状、診断方法、治療法について詳しく解説します。
1. 卵巣嚢腫(卵巣の cyst)
卵巣嚢腫は、卵巣に液体で満たされた袋が形成される疾患です。これは非常に一般的で、ほとんどの女性が一生に一度は経験する可能性があります。多くの卵巣嚢腫は無症状であり、通常は特別な治療を必要としませんが、大きくなると痛みや圧迫感を引き起こすことがあります。

原因と種類
卵巣嚢腫にはいくつかの種類があります:
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機能性卵巣嚢腫: 最も一般的で、卵巣の正常な機能の一部として発生します。通常は月経周期に関連しており、自然に治癒することが多いです。
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チョコレート嚢腫(子宮内膜症): 子宮内膜組織が卵巣に異常に発生し、血液がたまることで嚢腫が形成されます。このタイプはしばしば痛みを伴い、不妊症の原因にもなります。
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漿液性嚢腫: 液体が溜まった嚢腫で、しばしば良性ですが、悪性の可能性もあるため注意が必要です。
症状
多くの卵巣嚢腫は無症状ですが、以下のような症状が現れることがあります:
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腹部の膨満感
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骨盤や下腹部の痛み
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月経異常(不規則な月経や月経過多)
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性交痛
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頻尿や便秘
診断と治療
卵巣嚢腫の診断は、超音波検査やCTスキャンを用いて行われます。治療方法は嚢腫の大きさや症状に応じて異なり、ほとんどの場合、監視療法や薬物治療が行われます。症状が重篤な場合や悪性の疑いがある場合、外科的手術が必要になることもあります。
2. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣内に多数の小さな嚢腫が形成され、ホルモンバランスが乱れる疾患です。PCOSは、女性の生理周期に影響を与え、排卵が不規則になることがあります。また、インスリン抵抗性や過剰な男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌も関連しています。
原因
PCOSの正確な原因は不明ですが、遺伝的要因やインスリンの働きが関与していると考えられています。体重過多や肥満、ストレスなどが症状を悪化させることがあります。
症状
PCOSの症状には以下のようなものがあります:
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不規則な月経
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排卵障害による不妊症
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体毛の増加(男性化症状)
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肌のトラブル(ニキビや脂性肌)
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体重増加
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脱毛症(特に頭髪の薄毛)
診断と治療
PCOSは、月経不順やホルモン検査、超音波検査を通じて診断されます。治療方法には、ホルモン療法(経口避妊薬やホルモン補充療法)や生活習慣の改善(体重管理、運動、食事療法)が推奨されます。また、不妊症の治療には排卵誘発剤が使用されることもあります。
3. 卵巣がん
卵巣がんは、卵巣に発生するがんで、女性のがんの中でも比較的稀ですが、早期に発見されることが少ないため、進行してから診断されることが多いです。卵巣がんはしばしば無症状で進行し、発見された時にはすでに他の臓器に転移していることもあります。
原因
卵巣がんの原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因、年齢、ホルモンの影響、環境因子が関与していると考えられています。BRCA遺伝子の変異があると、卵巣がんのリスクが高まることが知られています。
症状
卵巣がんの初期症状は非常に不明瞭で、進行するまで気づかれないことが多いです。しかし、以下のような症状が現れることがあります:
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腹部膨満感や圧迫感
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食欲不振や体重減少
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頻尿や便秘
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下腹部の痛みや不快感
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月経不順
診断と治療
卵巣がんは、血液検査(CA-125マーカー)、超音波検査、CTスキャン、またはMRIを使用して診断されます。治療には手術が最も一般的で、がんが進行している場合は化学療法や放射線治療が併用されることがあります。
4. 卵巣捻転
卵巣捻転は、卵巣がねじれて血流が遮断される状態です。これは急激な腹痛を引き起こし、早急な治療が必要です。卵巣捻転は、卵巣が嚢腫や腫瘍により重くなり、ねじれることが原因で発生します。
症状
卵巣捻転の主な症状は突然の激しい腹痛で、痛みはしばしば片側に感じられます。痛みが数時間続いた後に徐々に和らぐこともありますが、緊急の手術が必要となる場合があります。
診断と治療
診断は、CTスキャンや超音波検査を使用して行います。治療には手術が必要で、捻転した卵巣を元の位置に戻すか、必要に応じて卵巣を摘出することがあります。
結論
卵巣の病気は、女性の健康に多大な影響を及ぼします。適切な診断と治療を行うことで、多くの疾患は管理できるか、早期に発見することで症状を最小限に抑えることができます。卵巣の病気を予防するためには、定期的な健康診断と生活習慣の見直しが重要です。特に、月経不順や腹痛、不妊症などの症状が見られる場合には、早期に専門医に相談することが推奨されます。