卵巣にできる嚢胞(おおきさ)は、女性にとって非常に一般的な症状であり、多くの場合は無症状で軽度のものがほとんどですが、時には痛みや不妊の原因となることもあります。卵巣嚢胞は、卵巣内で液体が充満した袋状の構造物です。以下に、卵巣嚢胞の原因、種類、影響について詳しく説明します。
卵巣嚢胞の種類
卵巣嚢胞にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる原因と特徴があります。代表的なものとして、機能性嚢胞と病理学的嚢胞の2つに分けられます。

-
機能性嚢胞
機能性嚢胞は、卵巣の正常な機能に関連するものであり、最も一般的なタイプです。これらの嚢胞は、月経周期の一部として自然に発生し、通常は痛みを伴うことなく消失します。機能性嚢胞には次の2つの主要なタイプがあります。-
卵胞嚢胞:卵巣内で卵子が成熟する過程で、卵胞が正常に破裂せずに液体をため込んだ状態です。この嚢胞は通常、月経周期の終了時に自然に解消されます。
-
黄体嚢胞:排卵後、卵胞が破裂して卵子が放出されると、その卵胞は黄体という組織に変わります。黄体はホルモンを分泌しますが、黄体嚢胞は、この黄体が正常に解消されず、液体がたまることで発生します。これも通常は無症状で、数週間以内に解消されることが多いです。
-
-
病理学的嚢胞
病理学的嚢胞は、卵巣の異常によって発生するもので、機能性嚢胞よりも深刻で、場合によっては手術が必要になることもあります。病理学的嚢胞の種類には以下のものがあります。-
巧妙嚢胞:これは卵巣内で異常に成長した腫瘍が原因で発生する嚢胞です。良性と悪性のものがあり、悪性の場合は治療が必要です。
-
チョコレート嚢胞(エンドメトリオーム):子宮内膜症によって引き起こされる嚢胞で、月経中の子宮内膜組織が卵巣に移動して嚢胞を形成します。この嚢胞には、血液や古い月経血が含まれており、見た目がチョコレートのような色をしています。
-
皮様嚢胞:卵巣内で異常に発生する良性の腫瘍で、皮膚、髪の毛、脂肪組織などが含まれています。
-
卵巣嚢胞の原因
卵巣嚢胞の原因は様々で、個々の症例によって異なりますが、主な原因として以下の要因が考えられます。
-
ホルモンの不均衡
月経周期や排卵に関わるホルモンの不均衡が、卵巣嚢胞の発生に関与することがあります。例えば、排卵の際に卵胞が正常に破裂しなかったり、黄体が解消されなかったりすると、嚢胞が形成されます。 -
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
PCOSは、ホルモンの不均衡が原因で卵巣内に小さな嚢胞が多数発生する疾患です。これにより排卵障害が起こり、不妊の原因となることがあります。また、月経不順や体重増加、ニキビ、過剰な体毛などの症状も見られることがあります。 -
子宮内膜症
子宮内膜症では、子宮内膜の組織が卵巣や他の部位に移動し、そこで増殖することがあります。これにより、チョコレート嚢胞が形成されることがあります。この疾患はしばしば痛みや不妊の原因となります。 -
年齢
40歳以上の女性は卵巣嚢胞の発生リスクが高くなることがあります。特に閉経前後は卵巣の機能が変化し、嚢胞ができやすくなります。 -
遺伝的要因
家族に卵巣嚢胞を持つ女性がいる場合、遺伝的な影響で嚢胞ができやすくなる可能性があります。 -
妊娠
妊娠中に卵巣嚢胞が発生することがありますが、これは通常、ホルモンの変化によるもので、出産後には解消されることが多いです。
卵巣嚢胞の症状
多くの場合、卵巣嚢胞は無症状であり、定期的な婦人科検診で偶然発見されることが一般的です。しかし、嚢胞が大きくなると、以下のような症状を引き起こすことがあります。
-
骨盤痛や腹部膨満感
-
生理不順や月経の変化
-
性交時の痛み
-
排尿や排便時の不快感
-
不妊症
また、嚢胞が破裂した場合やねじれた場合は、急激な腹痛を伴うことがあります。この場合は緊急の医療処置が必要です。
卵巣嚢胞の診断と治療
卵巣嚢胞が疑われる場合、まずは超音波検査を行い、嚢胞の大きさや形状を確認します。場合によっては、血液検査やCTスキャン、MRIなどの追加検査が行われることもあります。嚢胞の診断が確定した後、治療方法は嚢胞の種類や症状によって異なります。
-
経過観察
多くの機能性嚢胞は無症状であり、自然に解消されるため、特別な治療が必要ないことが多いです。定期的なチェックが行われ、症状が現れない限り、経過観察となります。 -
薬物療法
ホルモン治療(経口避妊薬やプロゲステロンなど)を用いることで、嚢胞の成長を抑えたり、再発を防いだりすることができます。 -
手術
大きな嚢胞や破裂、ねじれなどの合併症がある場合は、手術が必要になることがあります。手術は通常、腹腔鏡手術で行われ、最小限の侵襲で嚢胞を取り除くことができます。
結論
卵巣嚢胞は女性にとって一般的な症状であり、多くの場合は特別な治療を必要としませんが、症状が現れた場合や合併症がある場合は、早期に医師の診断と治療を受けることが重要です。嚢胞が発見された場合は、必ず婦人科医と相談し、適切な対応を取るようにしましょう。