口腔内の真菌感染症は、口の中で発生する細菌やカビに起因する病気です。これらの感染症は、免疫システムが弱くなると発症することが多く、特に高齢者や糖尿病患者、抗生物質を長期間使用している人々に見られます。口腔内の真菌感染症にはいくつかの種類があり、それぞれに異なる症状や治療法があります。本記事では、口腔内の代表的な真菌感染症の種類について詳しく解説します。
1. カンジダ症(口腔カンジダ症)
カンジダ症は、口腔内で最も一般的な真菌感染症です。カンジダは正常な口腔内にも存在しますが、免疫力が低下したり、抗生物質の使用や糖尿病が影響することで過剰に増殖します。カンジダは真菌の一種で、白い斑点が舌や口の内側に現れるのが特徴です。

症状:
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白い斑点や膜が舌、歯茎、口の内側に現れる
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口内の痛みやかゆみ
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飲み込み時の違和感や痛み
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口臭
治療法:
カンジダ症の治療には抗真菌薬が使用されます。局所的な薬物(例えば、ミコナゾールやナフトフィン)や、全身的に服用する薬物(フルコナゾール)が処方されることがあります。
2. アスペルギルス症
アスペルギルス症は、アスペルギルスという真菌によって引き起こされる感染症です。通常は肺に影響を及ぼしますが、免疫力が低下した患者や口腔内で真菌が増殖しやすい状況では、口腔内にも感染が広がることがあります。
症状:
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口内に黒や緑色の斑点が現れる
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口内の痛みや腫れ
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唾液に血が混じることがある
治療法:
アスペルギルス症には、抗真菌薬が効果的です。薬物療法としては、イトラコナゾールやヴォリコナゾールなどが使用されることが一般的です。
3. ムコール症
ムコール症は、ムコール属の真菌によって引き起こされる深刻な感染症で、特に免疫力が低下している患者に多く見られます。この感染症は、肺や皮膚、口腔内など、さまざまな部位に感染を広げる可能性があります。
症状:
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口内に黒ずんだ斑点や潰瘍ができる
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激しい痛みや腫れ
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歯茎や口内の出血
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呼吸困難(肺に感染が広がる場合)
治療法:
ムコール症は非常に重篤な感染症であり、迅速な対応が求められます。抗真菌薬(アムホテリシンBやポサコナゾールなど)が使用されるほか、手術によって感染部分を切除することもあります。
4. クリプトコッカス症
クリプトコッカス症は、クリプトコッカスという真菌によって引き起こされます。特に免疫抑制剤を使用している患者やHIV感染者に多く見られます。クリプトコッカスは通常、肺や中枢神経系に感染を引き起こしますが、口腔内に感染が広がることもあります。
症状:
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口腔内に痛みを伴う潰瘍や腫れ
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舌や歯茎の腫れ
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頭痛や発熱(感染が広がった場合)
治療法:
クリプトコッカス症には、抗真菌薬(フルコナゾールやアムホテリシンB)を用いた治療が行われます。場合によっては、治療を長期間続ける必要があります。
5. 歯周病に伴う真菌感染症
歯周病が進行すると、歯茎の炎症や出血、口臭などの症状が現れます。このような歯周病の進行に伴い、口腔内で真菌が増殖し、二次的な真菌感染を引き起こすことがあります。
症状:
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歯茎の腫れや痛み
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口内のかゆみや違和感
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歯茎からの出血
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口臭
治療法:
歯周病による真菌感染には、歯周病の治療と並行して抗真菌薬の使用が行われることがあります。歯科医による専門的な治療が必要です。
まとめ
口腔内の真菌感染症は、免疫力が低下している状態で発症することが多く、その種類にはさまざまなものがあります。最も一般的なのはカンジダ症ですが、アスペルギルス症やムコール症、クリプトコッカス症などの重篤な感染症も存在します。口腔内の真菌感染症に気づいた場合は、早期の治療が重要です。症状が現れた場合は、早めに専門の医療機関で診察を受けることが推奨されます。また、口腔内の健康を維持するために、日々の口腔ケアや免疫力を高める生活習慣を心がけることも予防につながります。