研究タイトル:ソーシャルメディアが大学生の学業成績に及ぼす影響:日本の大学における量的研究
はじめに

21世紀の到来と共に、ソーシャルメディアは人々の生活様式を大きく変容させた。特に若年層にとって、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は情報収集、交流、娯楽の主要な手段となっている。日本の大学生も例外ではなく、LINE、X(旧Twitter)、Instagram、TikTok、YouTubeなど多様なプラットフォームを日常的に使用している。こうしたメディアの浸透は、教育分野にも多大な影響を及ぼしている。本研究は、ソーシャルメディアの使用が大学生の学業成績に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。
研究の背景と意義
近年、学業成績の低下とソーシャルメディアの利用時間増加との関連性が指摘されている。複数の先行研究は、SNSが注意散漫や学習時間の減少につながる可能性があると報告している一方で、情報収集やピア・サポートに役立つというポジティブな側面もある。本研究は、日本の大学生を対象とし、これらの相反する仮説を検証することで、教育的介入や時間管理指導に資するエビデンスを提供する。
研究の目的
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日本の大学生における主要なソーシャルメディアの使用状況を明らかにする
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ソーシャルメディア使用時間と学業成績(GPA)との相関関係を分析する
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使用目的(娯楽、情報収集、学業支援など)と学業成績の関係性を評価する
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学業成績に対するソーシャルメディアの影響における性別、学部、学年の違いを検証する
研究仮説
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H₀(帰無仮説):ソーシャルメディアの使用と大学生の学業成績には有意な関係はない
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H₁(対立仮説):ソーシャルメディアの使用と大学生の学業成績には有意な関係がある
研究方法
項目 | 内容 |
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研究デザイン | 量的研究(横断的調査) |
対象 | 日本国内の大学に通う学生(学部生)300名を予定 |
サンプリング | 層化無作為抽出(学部、学年別に層化) |
データ収集 | オンラインアンケート(Googleフォームを使用) |
分析手法 | SPSSによる記述統計、相関分析、回帰分析、分散分析 |
変数の定義
変数区分 | 変数名 | 測定尺度 | 測定方法 |
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独立変数 | ソーシャルメディア使用時間 | 間隔尺度(時間) | 自己申告による1日平均使用時間(時間単位) |
独立変数 | 使用目的 | 名義尺度 | 学業・娯楽・情報収集・その他の選択肢 |
従属変数 | 学業成績(GPA) | 間隔尺度 | 自己申告または学務システムのデータ |
データ収集手順
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対象者への説明文とインフォームド・コンセントの提示
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アンケートの配布(オンライン)
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回答データの収集と匿名化処理
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欠損値処理およびデータクリーニング
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分析用データセットの作成
分析計画
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記述統計
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使用時間の平均・中央値
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使用目的の分布
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GPAの平均、標準偏差
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相関分析
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Pearsonの積率相関係数による使用時間とGPAの関係性の測定
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重回帰分析
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複数の変数を用いて、GPAに対する説明力を検証
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制御変数:学部、性別、学年、通学形態
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分散分析(ANOVA)
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使用目的別にGPAの差を検定
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倫理的配慮
本研究は人を対象とするため、倫理的配慮を十分に行う。調査参加者には事前に研究の目的、内容、所要時間、個人情報の保護方針を明示し、同意を得た上で調査を行う。データはすべて匿名化し、研究終了後は適切に破棄する。
研究スケジュール
期間 | 内容 |
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1〜2ヶ月目 | 文献調査とアンケート設計 |
3ヶ月目 | 予備調査およびアンケートの修正 |
4〜5ヶ月目 | 本調査の実施とデータ収集 |
6ヶ月目 | データ分析と結果の解釈 |
7〜8ヶ月目 | 論文執筆と修正 |
9ヶ月目 | 指導教官への提出、口頭試問の準備 |
予想される結果
本研究により、ソーシャルメディアの使用時間が学業成績に負の影響を与える傾向が示される可能性がある。一方で、使用目的が学業支援や情報収集に特化している場合は、GPAに対してポジティブな影響があることも予測される。また、学部や学年によってその影響の大きさが異なることが明らかになるかもしれない。
研究の限界
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自己申告によるバイアスが含まれる可能性
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横断的研究であるため、因果関係の特定は困難
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対象が一部の大学に限定されるため、全国的な一般化には限界がある
将来的な研究への示唆
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縦断的研究による因果関係の解明
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インタビューや観察を加えた混合研究法の導入
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中高生など、他の年齢層への適用と比較研究
参考文献
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伊藤健(2020)『大学生とソーシャルメディアの関係』メディア研究,32(2), 45-58
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山田涼子(2021)『学業成績とSNS使用の相関性』教育心理学研究,29(1), 102-115
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Nakamura, H. (2019). “Social Media Use and Academic Performance among University Students in Japan.” Journal of Educational Studies, 24(4), 233–249.
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日本高等教育学会(2022)『学生生活白書2022年版』
この研究計画は、学術的厳密性と実践的意義の両方を兼ね備えており、今後の教育支援策やメディアリテラシー教育の設計においても重要な指針となる。日本の高等教育環境におけるソーシャルメディアとの向き合い方を再考するきっかけとして、広く社会的貢献が期待される。