妊娠中のカンジダ症(カンジダ菌感染症)は、妊婦において比較的よく見られる疾患であり、女性の生理的変化がカンジダ菌の繁殖を助けるため、特に注意が必要です。カンジダ症は、カンジダ属の酵母菌によって引き起こされ、通常は陰部や口腔、消化管などに自然に存在しますが、免疫力の低下やホルモンバランスの変化により、感染が引き起こされることがあります。
妊娠中のカンジダ症の原因
妊娠中の体内には、ホルモンバランスの変化が大きく影響を与えます。特に、エストロゲンの増加は膣内のpHを低下させ、カンジダ菌が繁殖しやすい環境を作り出します。また、妊婦の免疫系は胎児を守るために調整されるため、免疫力が一時的に低下し、カンジダ菌が通常よりも活発に増殖することがあります。さらに、妊娠中の体重増加や血糖値の上昇が、カンジダ症を悪化させることもあります。

妊娠中のカンジダ症の症状
妊娠中のカンジダ症には、以下のような典型的な症状があります:
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かゆみや灼熱感: 特に外陰部や膣内にかゆみや焼けるような感覚が生じます。
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白いおりもの: 一般的にカッテージチーズのような外観を持ち、膣分泌物が増加します。臭いは少なく、無臭であることが多いです。
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膣内の腫れや赤み: 膣や外陰部が赤く腫れ、炎症が見られることがあります。
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性交時の痛み: 性交時に不快感や痛みを感じることがあります。
妊娠中にカンジダ症を発症すると、これらの症状は一般的に軽度ですが、放置すると悪化する可能性があります。
妊娠中のカンジダ症の診断
カンジダ症の診断は、通常、医師による問診と身体検査を基に行われます。膣内の分泌物を採取し、顕微鏡でカンジダ菌を確認することもあります。これにより、他の感染症との区別がつけられます。妊娠中は、カンジダ症と似た症状を示す他の感染症(例えば、細菌性膣炎など)があるため、正確な診断が重要です。
妊娠中のカンジダ症の治療方法
妊娠中にカンジダ症を治療するには、安全で妊婦にも胎児にも影響が少ない治療法が選ばれます。通常、以下の方法が推奨されます:
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局所治療薬: 抗真菌薬を含むクリームや膣錠が使用されることが多いです。これらは直接感染部位に作用し、全身に影響を与えるリスクを最小限に抑えることができます。
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食事の改善: 糖分の摂取を控え、バランスの取れた食事を心掛けることで、カンジダ菌の増殖を抑えることができます。また、プロバイオティクスを摂取することも有効な場合があります。
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継続的な監視: 妊婦の免疫系が変化するため、再発のリスクが高くなることがあります。治療後も医師の監視を受けることが推奨されます。
妊娠中に抗真菌薬を使用する場合、胎児への影響を最小限に抑えるため、医師が処方する薬を使用することが重要です。自己判断で市販薬を使用することは避けるべきです。
妊娠中のカンジダ症の予防
妊娠中にカンジダ症を予防するためには、いくつかの生活習慣を取り入れることが効果的です:
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衛生管理: 外陰部を清潔に保ち、過度な洗浄や刺激を避けることが大切です。温水で軽く洗う程度にとどめ、強い化学成分を含むソープや洗剤は避けましょう。
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通気性の良い下着: 綿製の下着を選び、通気性を良くして湿気がこもらないようにします。また、締め付けの強い服を避け、できるだけ快適に過ごすことが予防につながります。
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糖分の制限: 糖分はカンジダ菌の成長を助けるため、過剰な糖分の摂取は避け、バランスの取れた食事を心掛けることが重要です。
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適切な水分補給: 十分な水分を摂取し、尿路感染症や体内の不調を防ぐことも、カンジダ症の予防に役立ちます。
妊娠中のカンジダ症と母子への影響
カンジダ症は、通常、適切な治療を受けることで母体に深刻な影響を与えることはありませんが、治療を怠ると慢性化したり、再発を繰り返すことがあります。さらに、出産時に感染が広がるリスクもあるため、治療は重要です。もしカンジダ症が分娩時に活発であれば、赤ちゃんが産道を通る際に感染することがあります。これを新生児カンジダ症と呼び、口内や皮膚に感染が広がることがありますが、適切な治療を行うことで治癒することができます。
結論
妊娠中のカンジダ症は、ホルモンバランスの変化や免疫系の調整によって引き起こされることが多いですが、適切な治療を行うことで、母体と胎児に対する影響を最小限に抑えることができます。症状が軽度でも、早期に治療を受けることが大切であり、予防策を講じることで再発を防ぐことが可能です。妊娠中に感染症が疑われる場合は、自己判断で治療せず、必ず医師に相談することが最善の方法です。