妊娠中の尿路感染症(UTI)について
尿路感染症(UTI)は、妊婦においても一般的に見られる健康問題です。妊娠中は免疫力が低下することや、ホルモンの変化により尿路感染症が発症しやすくなります。ここでは、妊娠中の尿路感染症に関する原因、症状、診断、治療法について詳しく説明します。
1. 妊娠中の尿路感染症の原因
尿路感染症は、尿道、膀胱、尿管、腎臓など、尿路のどの部分でも発生する可能性があります。妊婦における尿路感染症の発症の主な原因は以下の通りです。

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ホルモンの影響:妊娠中、特にプロゲステロンというホルモンが増加します。このホルモンは、尿道や膀胱の平滑筋を弛緩させるため、尿の流れが遅くなり、感染が起こりやすくなります。
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子宮の圧迫:妊娠が進行するにつれて、子宮が大きくなり、膀胱や尿管に圧力をかけます。これにより尿の排出が不完全になることがあり、感染が進行するリスクが高まります。
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免疫力の低下:妊娠中は免疫システムが抑制されるため、細菌やウイルスに対する抵抗力が弱くなります。これにより、感染症にかかりやすくなります。
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細菌の感染:最も一般的な原因は、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌です。これらは尿道に入り込み、感染を引き起こします。
2. 妊娠中の尿路感染症の症状
尿路感染症の症状は通常、軽度から中等度のものまでありますが、妊婦の場合、症状が目立たないこともあるため注意が必要です。主な症状には以下があります。
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頻尿:通常よりも頻繁にトイレに行きたくなる。
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排尿時の痛みや不快感:排尿時に痛みを感じる、または焼けるような感覚。
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尿のにおいの変化:尿が強い臭いを持つことがある。
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血尿:尿に血が混じることがある。
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腰や下腹部の痛み:感染が腎臓にまで広がると、腰痛や下腹部痛が現れることがあります。
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発熱や寒気:感染が進行すると、高熱を伴うこともあります。
3. 妊娠中の尿路感染症の診断
妊婦が尿路感染症の症状を示す場合、迅速に診断を受けることが重要です。診断には以下の方法が用いられます。
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尿検査:尿を採取して、細菌の有無を確認します。尿に白血球や赤血球が含まれているかどうかも調べ、感染の有無を判断します。
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尿培養:尿を培養して、感染を引き起こしている細菌を特定します。これにより、最適な抗生物質を選択することができます。
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超音波検査:感染が腎臓にまで広がっている場合、超音波で腎臓や尿管の異常を確認することがあります。
4. 妊娠中の尿路感染症の治療方法
妊婦における尿路感染症は、早期に治療を開始することが重要です。放置すると腎臓感染(腎盂腎炎)を引き起こし、母体や胎児に危険を及ぼす可能性があります。治療方法は以下のようになります。
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抗生物質の使用:妊娠中でも安全とされる抗生物質がいくつかあります。例えば、ペニシリン系抗生物質やセフェム系抗生物質が一般的に処方されます。医師の指示に従い、定められた期間しっかりと服用することが大切です。
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水分補給:水分を十分に摂取することで、尿路を洗い流し、細菌を排出しやすくします。
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痛みの緩和:痛みや不快感を軽減するために、温かいお湯でお腹を温めることや、医師から処方された鎮痛剤を使用することがあります。
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定期的な尿検査:治療後も再発を防ぐために定期的に尿検査を行うことが推奨されます。
5. 妊娠中の尿路感染症の予防方法
妊娠中に尿路感染症を予防するためには、以下のような生活習慣を取り入れることが重要です。
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十分な水分摂取:1日に2リットル以上の水を飲むことが推奨されます。水分を多く摂取することで、尿路を洗浄し、細菌が尿道に定着するのを防ぎます。
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排尿後の清潔保持:排尿後は、前から後ろに向かって拭くようにし、細菌の逆流を防ぎます。また、トイレットペーパーや下着を清潔に保つことも大切です。
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適切な体位で排尿:膀胱が完全に空になるように、無理なく排尿を行い、尿が膀胱に残らないようにします。
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尿意を我慢しない:尿意を感じたらすぐに排尿することが大切です。長時間尿をためておくことは、感染のリスクを高めます。
6. 妊娠中の尿路感染症の合併症
尿路感染症を放置すると、以下のような深刻な合併症が発生する可能性があります。
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腎盂腎炎:腎臓に感染が広がると、腎盂腎炎を引き起こすことがあります。これにより、強い腹痛や高熱が現れ、治療が遅れると腎機能の低下を招くことがあります。
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早産や低体重児:重度の尿路感染症は、早産や低体重児のリスクを増加させることがあります。感染症が胎盤に広がることで、母体と胎児に対して重大な影響を与えることがあるため、早期の治療が必要です。
まとめ
妊娠中の尿路感染症は比較的一般的ですが、適切に治療を行うことで母体や胎児へのリスクを最小限に抑えることができます。症状が現れた場合は、自己判断せずに速やかに医師に相談し、必要な治療を受けることが重要です。また、予防策を講じることで感染症のリスクを減らし、健康な妊娠生活を送ることができます。