子どもの甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症(低下症)は、甲状腺が十分な量のホルモンを分泌しない状態を指します。これは、成人と同様に子どもにも発生する可能性があり、発症の年齢や原因によって症状や治療方法が異なることがあります。甲状腺ホルモンは、体の成長や発達、エネルギーの生産において重要な役割を果たしているため、子どもの甲状腺機能低下症は慎重に管理する必要があります。この記事では、甲状腺機能低下症が子どもに与える影響、原因、診断、治療法について詳しく解説します。

甲状腺機能低下症の概要

甲状腺機能低下症は、甲状腺が十分な量の甲状腺ホルモン(T3およびT4)を生成できない場合に起こります。これらのホルモンは、体内の多くの生理的プロセスに関与しており、特に成長、発育、体温調節、エネルギー消費に重要な役割を担っています。ホルモン不足が続くと、体の各機能にさまざまな影響を及ぼすことがあります。特に子どもの場合、成長遅延や発達の遅れが見られることがあります。

子どもの甲状腺機能低下症の原因

甲状腺機能低下症の原因はさまざまです。主な原因としては以下のものがあります。

  1. 先天性の甲状腺機能低下症
    先天性の甲状腺機能低下症は、出生時に甲状腺が正常に機能しないことによって発症します。このタイプは、甲状腺が完全に形成されていない、または機能しない場合や、ホルモン合成に関与する酵素に異常がある場合に見られます。

  2. 自己免疫疾患
    自己免疫性甲状腺炎(ハシモト病など)は、免疫系が甲状腺を誤って攻撃し、その機能を低下させることによって発症します。このタイプは、通常、成人に多く見られますが、子どもにも発症することがあります。

  3. 甲状腺の手術や放射線治療
    甲状腺に関連する手術や放射線治療を受けた場合、甲状腺機能が低下することがあります。特にがん治療において、甲状腺が摘出されることが原因となる場合があります。

  4. ヨウ素欠乏症
    ヨウ素は甲状腺ホルモンを生成するために必要な元素ですが、食事から十分に摂取できない場合、甲状腺機能が低下する可能性があります。日本ではヨウ素の欠乏は稀ですが、発展途上国では一般的な原因の一つです。

子どもの甲状腺機能低下症の症状

甲状腺機能低下症の症状は年齢や発症時期、ホルモン不足の程度によって異なります。特に早期に診断されていない場合、子どもの成長や発達に深刻な影響を及ぼすことがあります。一般的な症状には次のようなものがあります。

  • 成長遅延:身長や体重が同年齢の子どもと比べて遅れることがあります。
  • 発達の遅れ:言語や運動能力の発達が遅れることがあります。
  • 黄疸:新生児の場合、皮膚や眼球が黄色くなることがあります。
  • 低体温:冷えやすく、体温が低くなることがあります。
  • 便秘:消化不良や便秘が発生することがあります。
  • 眠気や疲れ:エネルギー不足により、常に眠そうにしている、または疲れやすくなることがあります。
  • 肌の乾燥や髪の質の低下:皮膚が乾燥したり、髪が薄くなったりすることがあります。

診断方法

甲状腺機能低下症は血液検査を通じて診断されます。主に以下の血液検査が行われます。

  • TSH(甲状腺刺激ホルモン)検査:甲状腺刺激ホルモンは、甲状腺が十分にホルモンを分泌していないときに高くなるため、甲状腺機能低下症の診断に用いられます。
  • T3およびT4検査:これらのホルモンのレベルが低ければ、甲状腺機能低下症が示唆されます。
  • 抗甲状腺抗体検査:自己免疫性甲状腺炎の場合、抗甲状腺抗体が高くなることがあります。

新生児スクリーニング(生後数日以内に行われる血液検査)によって先天的な甲状腺機能低下症を早期に発見することができます。日本では、全ての新生児が甲状腺機能低下症のスクリーニングを受けることが義務付けられています。

治療法

甲状腺機能低下症の治療は、ホルモン補充療法が中心です。甲状腺ホルモンの欠乏を補うために、レボチロキシン(合成甲状腺ホルモン)を服用することが一般的です。この治療は生涯にわたって続くことが多く、ホルモンの量は定期的に血液検査を行いながら調整されます。

治療を開始すると、ほとんどの子どもは症状が改善し、正常な成長と発達を続けることができます。しかし、治療を怠ったり遅れたりすると、発育不良や認知障害などの深刻な結果を招く可能性があるため、早期の発見と治療が重要です。

生活面でのサポート

甲状腺機能低下症を持つ子どもには、治療とともに生活面でのサポートが重要です。親や保護者は、以下の点に注意することが求められます。

  • 定期的な通院と検査:治療が効果的であるかを確認するために定期的に通院し、ホルモンのレベルをチェックする必要があります。
  • 栄養バランスの取れた食事:甲状腺ホルモンの合成に必要な栄養素(ヨウ素、セレン、亜鉛など)を含む食事を心掛けることが大切です。
  • 体調のモニタリング:子どもが十分に成長し、健康に過ごしているかを見守ることが重要です。

結論

甲状腺機能低下症は早期に診断され、適切に治療されることで、子どもの成長と発達に大きな影響を与えることなく、正常な生活を送ることが可能です。親や医療従事者が協力して、定期的なフォローアップを行いながら、子どもの健康を守ることが大切です。

Back to top button